第三話
サブタイトル、つけるなら
『誕生会前編』でしょうかね……。
「……」
きらびやかな空間にクロスは場違いだ、と思う。
後悔とは字の通り後から悔む。今まさにそれだ。
「クロっ! 来てくれたんだね!」
シェーラがパタパタと走ってきてクロスに飛びつく。
そう、今日はシェーラの7才の誕生日。
シェーラはいつもよりさらに高価そうな服を着てご機嫌だ。
クロスは溜息をつく。自分の服装があまりにもみすぼらしい、からではない。
シェーラの後ろにリリーの姿があったからだ。
「おークロス、あんた来たんか?」
表情はにこやかだったがリリーからは殺気が出ている。
一回会っただけでお互いに合わない事が分かっている。好きではない、ではなく嫌い。
実はクロスはこの前リリーにも会い、『絶対に来るな』と言われていた。
なのでクロスはなるべくリリーとは目を合わせないようにする。
「クロー、こっちだよー早く来て!」
シェーラは少し離れたところでクロスを呼ぶ。
「はよ行き、うちよりも厳しい人が向こうに居るから」
リリーはクロスが中に入ることを仕方なく認めたらしい。
こう言われてしまうとクロスも帰るわけにはいかない。クロスとしては、ここで追い返されてしまっても良かったのだが。
クロスは仕方なくシェーラがいる方へ歩いて行った。
「クロはここに座って!」
シェーラは自分の右隣のイスを叩く。クロスはシェーラの言うがままにする。
シェーラの左隣にはスーツを着た若い男性が座っている。
クロスの推測では兄ではないかと。まさか、父親なわけは……ないな。
で、多分こいつがリリーの言っていた『厳しい人』なのだろう。
「初めまして、クロス。私はお嬢様の家庭教師のヴェガと申します」
ヴェガはそう言いクロスに頭を下げる。
クロスは何も言わずに軽く頭を下げた。
「では、本日のお嬢様誕生記念会を始めましょうか」
ヴェガはベルをチリリと鳴らす。
「え、ちょっと待てよ! お前、親は? さっきのメイドは? 仲、良いんだろ?」
クロスの問いかけにシェーラは首を振る。
そして、ヴェガがシェーラの代わりに答えた。
「お嬢様のご両親は忙しい身ですので、私がお嬢様の全ての面倒を見ております。メイド、リリーのことですね。確かにリリーはお嬢様と仲がよろしいですが、メイドですので参加はできません」
ヴェガはにっこりと微笑んで言った。シェーラは少しだけ悲しげな表情をする。
「シェ――」
クロスが話しかけようとすると、目の前の料理が置かれる。
シェーラはその途端笑顔になった。
「では、一度食事にしましょうか」
ヴェガがそう言ったので、クロスはシェーラに何も言えなかった。




