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雪時計  作者: るーぷ
雪の降る前
3/20

第二話

 その頃シェーラは、荷馬車に揺られていた。

「おじさん、いつもありがと」

 子供の足で歩いていては着く前に捕まってしまうので、シェーラが街に行くときは近くを通った荷馬車に乗せてもらうのだ。

「いや、いいんだよシェーラちゃん」

 街の近くに住む者はシェーラをお嬢様、と呼ばない。

 と、言うよりシェーラがそう呼ばれるのを嫌うため、ほかの子供と同じように接している。


 シェーラは仰向けに寝転がる。空には白い雲が浮いていた。

「ねー、おじさん」

「ん、なんだい?」

 男は振り返らずに答える。シェーラも相変わらず、上を向いたままだった。

「もうすぐ、私ねー7才になるんだよー」

 自慢げにシェーラは言う。

「おお、そうか……あの、小さくてよく脱走ばかり――は今もだな」

「脱走じゃないもん! お出かけだもん!」

 シェーラは起き上がって反論する。男は楽しそうに笑っている。

 むー、とシェーラは膨れる。しかし、すぐ笑顔へと変わった。

「街だ……!」

 シェーラは荷馬車を飛び降りる。

「ありがと! おじさん!」

 そして、細い道を走っていった。



 細い道はだんだん暗く汚くなっていく。

 シェーラの庶民では手を出せない様な金額の服は黒く、臭くなる。

 しかし、シェーラは気にせずに進む。すると、道が終わり、少し広い空間に出た。

 もちろん、屋外で天井が無いのでさっきまでの道より明るい。

「クロー、クロクロクロー」

 シェーラは何度も呼ぶ。

 すると、上から少年が降ってきた。

 年はシェーラと同じぐらいだが、身にまとっている服はボロボロ、髪はぼさぼさだった。

 シェーラはその少年を見つけると、嬉しそうな顔をする。

「クロっ!」

 少年はシェーラに早足で近付き、ポコン、と一発殴った。

 お嬢様である彼女に手を出せる子供は彼ぐらいだろう。

 と言うより、彼以外誰も殴らない。

「いたぁ……」

「俺は、クロスだ! ク・ロ・スっ! 猫みたいに呼ぶんじゃねぇ!」

 クロスはふん、と鼻を鳴らす。

 クロスはこのあたりのガキ大将みたいなものらしい。

 シェーラはクロスの目の前に両手を出す。

 そこには小さな紙鼓がたくさん乗っていた。

「……何だ、これ?」

「キャンディ! おいしいよ」

 シェーラは包み紙を開けて、クロスの口の前に持っていく。

 シェーラの笑顔があまりに無邪気なので、仕方なくクロスは口を開ける。

「甘い……な」

「ね、おいしいでしょ!」

 シェーラはクロスに喜んでもらい満面の笑み。

 クロスの顔は見る見るうちに赤くなる。シェーラは不思議そうにクロスの顔を眺めている。

 クロスは沈黙が気まずくなり叫ぶ。

「こんなもんで、腹いっぱいになるかぁ!」

「じゃ、明日来て。私とクロスの誕生日だから」

「はぁっ!?」

「じゃ、絶対だからねっ!」

「おいちょっ――」

 行くとはだれも言っていないのだが、シェーラは手を振り、元来た道を走っていった

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