第二話
その頃シェーラは、荷馬車に揺られていた。
「おじさん、いつもありがと」
子供の足で歩いていては着く前に捕まってしまうので、シェーラが街に行くときは近くを通った荷馬車に乗せてもらうのだ。
「いや、いいんだよシェーラちゃん」
街の近くに住む者はシェーラをお嬢様、と呼ばない。
と、言うよりシェーラがそう呼ばれるのを嫌うため、ほかの子供と同じように接している。
シェーラは仰向けに寝転がる。空には白い雲が浮いていた。
「ねー、おじさん」
「ん、なんだい?」
男は振り返らずに答える。シェーラも相変わらず、上を向いたままだった。
「もうすぐ、私ねー7才になるんだよー」
自慢げにシェーラは言う。
「おお、そうか……あの、小さくてよく脱走ばかり――は今もだな」
「脱走じゃないもん! お出かけだもん!」
シェーラは起き上がって反論する。男は楽しそうに笑っている。
むー、とシェーラは膨れる。しかし、すぐ笑顔へと変わった。
「街だ……!」
シェーラは荷馬車を飛び降りる。
「ありがと! おじさん!」
そして、細い道を走っていった。
細い道はだんだん暗く汚くなっていく。
シェーラの庶民では手を出せない様な金額の服は黒く、臭くなる。
しかし、シェーラは気にせずに進む。すると、道が終わり、少し広い空間に出た。
もちろん、屋外で天井が無いのでさっきまでの道より明るい。
「クロー、クロクロクロー」
シェーラは何度も呼ぶ。
すると、上から少年が降ってきた。
年はシェーラと同じぐらいだが、身にまとっている服はボロボロ、髪はぼさぼさだった。
シェーラはその少年を見つけると、嬉しそうな顔をする。
「クロっ!」
少年はシェーラに早足で近付き、ポコン、と一発殴った。
お嬢様である彼女に手を出せる子供は彼ぐらいだろう。
と言うより、彼以外誰も殴らない。
「いたぁ……」
「俺は、クロスだ! ク・ロ・スっ! 猫みたいに呼ぶんじゃねぇ!」
クロスはふん、と鼻を鳴らす。
クロスはこのあたりのガキ大将みたいなものらしい。
シェーラはクロスの目の前に両手を出す。
そこには小さな紙鼓がたくさん乗っていた。
「……何だ、これ?」
「キャンディ! おいしいよ」
シェーラは包み紙を開けて、クロスの口の前に持っていく。
シェーラの笑顔があまりに無邪気なので、仕方なくクロスは口を開ける。
「甘い……な」
「ね、おいしいでしょ!」
シェーラはクロスに喜んでもらい満面の笑み。
クロスの顔は見る見るうちに赤くなる。シェーラは不思議そうにクロスの顔を眺めている。
クロスは沈黙が気まずくなり叫ぶ。
「こんなもんで、腹いっぱいになるかぁ!」
「じゃ、明日来て。私とクロスの誕生日だから」
「はぁっ!?」
「じゃ、絶対だからねっ!」
「おいちょっ――」
行くとはだれも言っていないのだが、シェーラは手を振り、元来た道を走っていった




