第十九話
「ベトとパーシィはここの部屋を使っていいって」
夕食の後に連れられたのは『メイン』の部屋の一つだった。
「じゃ、遅いからもう寝た方がいいね、そうだよね」
トールはにこにこしながら無邪気に言う。
「あ、ああ。そうする……」
「じゃ、おやすみ」
トールはそう言って扉を閉めた。
「もうそろそろ次の街に行こうと思うんだ。いいよね」
次の日の朝。
この街を離れることを突然ジョーカーは告げた。
「ね、その方がいいでしょ?」
クロスの方を向いてジョーカーは微笑む。
「ああ。なるべく早く南の方に行きたいからな」
「じゃ、今日は……バランス、トール」
呼ばれた二人は立ち上がり、頷く。
「じゃ、代わりにベトレイヤル。君が綱渡りしてね」
「お、俺が……!?」
「嫌なら追い出すよ」
ジョーカーは微笑んではいるが、本気だ。
「大丈夫、君ならできるよ」
まあ、それから色々あって、なんとか俺は無事に終えた。
そして、その夜。
「はい、みんな準備できたね~。行くよ」
サーカステントをたたみ、2台の馬車にメインのメンバーが乗り込み、残りは道具を入れた荷台を引きながら歩く。
何日も進み続けようやく次の街に着いた。
ただ、着いてから様子がおかしい。
メインに限らず、サブやノーネームの奴らまでも。
テントは建て終わっているのに、一向に公演しようとしないのだ。
「んー、まあ、忙しいんだよ。ほら、練習しておいてね」
ジョーカーは微笑みながらそう言うだけだった。
そして、その夜。
クロスは物音で目を覚ます。
何やら、外が騒がしい。
「クロー? どうしたの?」
シェーラが目を擦りながら問いかける。
「分からない……」
クロスは少しだけドアを開けてみる。
すると、パタパタとメインのメンバーが忙しそうに走っていくのが見えた。
「もしかして、準備してるのかなぁ?」
シェーラがクロスの下で同じように外をのぞいていた。
「シェーラはここにいろ。俺が見てくる」
クロスはそう言って部屋を出た。
サーカス団員は全員出ていくようだったので、後をつける。
そして、街外れの一軒家にだどりついた。
「ねえ、気付いているんだよ」
ジョーカーの突然の呟きにクロスは息をのむ。
しかし、次の瞬間だった。
周りが赤く燃えるように明るくなった。否、燃えていた。
「やっぱりね。君、相当の実力者でしょ?」
ジョーカーはいつもの口調で言っていた。
その手には白く輝く光をともして。
そして、彼は叫ぶ。
「行けっ!」
その声で、しっている仲間達が殺人鬼に代わるのを俺は見た様な気がした。
そして、その中には――。
「嘘……だろ」
いるはずの無い、ヴェガ達の姿があった。




