冒険者達
(思い出した、移動に時間かけたくなくて空飛んでたら、魔鳥の群にに襲われて落下したんだった)
「怪我は無いかはこちらの台詞なのだが……」
初対面の相手に呆れられてしまったようだ。
奥を見ると倒れたままの一人と、警戒したような目でこちらを見る一人がいた。
「あの、状況を説明して貰っても?」
「……、情報交換といこう」
彼等三人がどうしてこの状況にあったのかという説明を聞き、大体は理解することが出来た。
「なるほど、魔物に追われていたところに俺が降ってきたって事ですか」
「そういう事になる、でらそちらが空から降ってきた理由を教えてもらえるか?」
これまでの経緯を掻い摘んで伝えると、今度は眼鏡を外して眉間を揉み始めた。
「陸路が遠いから人間大砲をつくり、空を飛び、襲われて落下したと」
追い払いはしたものの、速度も落ち魔石の結界も消えてしまった。
そして魔術を使って結界を張り直し、どうにか着地する事が出来たと言う訳だ。
「命知らずだな君は……」
「よく言われます、でも結果人助け出来たのでいい選択だったと思いますよ」
知り合いにも命を大事に行動しろと怒られることがある為、これでも最大限の気を使っているつもりだ。
「ところで、洞窟には何か目当ての物があったんですか?」
「目当てというよりは探索が目的でな、洞窟に入って実戦を行うという課題だったのだ」
「もしかして王都の学園の人ですか?」
「いや、そことはまた別の所だ」
なんとなくで連盟員だと考えていたが、そうではないのならば助けを呼んだほうが良いかもしれない。
「良かったら人手を呼びましょうか?かなり疲れてるみたいですし」
荷袋から口の広い銃を取り出し、それに着いている金属の飾りを見せる。
「君は連盟員か……、二人と相談してからでも良いだろうか」
「もちろん」
(依頼としてお金を取られると考えたかな)
彼等を待つ間に亡骸となった魔物の観察を始める。
体色は紫で表面を硬く細かい鱗で覆われている、見た目の通り肉食なのか牙は鋭く伸びている。
脚は太く大きいため走るのは速そうではあるが、腕は小さく短いため食事の補助程度にしかならないだろう。
最も注目するべきはやはり首から尾にかけての結晶か、尾の先には特に長い結晶が伸びていて、武器としても有用そうだ。
短剣を取り出し、尾の結晶を切り離す。
手に取れば少し温かく、かなりの魔力が秘められています事が分かる。
背中側に回って散らかった背中の結晶を拾っては、布袋にしまっていく。
「話はまとまった、救援を頼めるか」
残りは救援で来てくれた連盟員に、報酬として譲れば喜んでもらえるだろう。
「分かりました、じゃあ待つ間にこれどうぞ」
荷袋から透き通った緑色の液体が入った丸い瓶を三つ取り出し手渡す。
「これは?」
「魔力回復薬」てす、信頼の出来る人から買ったやつですから安全ですよ」
他にも自作の回復薬もあるが、まだ受け取ってもらえるような間からでもないし今は自重しておくとしよう。
彼が回復薬を渡しに行っている合間に大口銃の先から、これまた大きな弾を入れて棒を使って押し込み、天に向かって構える。
「大きな音が出るんです注意してくださーい!」
警告をしておき、三人が耳を塞いでから空いた左手と構えた二の腕で耳を塞ぎ、発射する。
大砲を小さくした程度の音と共に、銃口から赤い弾が飛び出して空高く駆け上がり赤い閃光を放った。
「荷台持ってる人とか来てくれないかな」
不可抗力とはいえ殺してしまった魔物を、素材だけ剥いで放置するのは気が進まない。
それから程なくして青い光が空に打ち上がった。
「結構近くにいるのかな」
荷袋から杖と紙、そして本を取り出して起動する。
「どれだけかかるか分からないけど一応冷やしとこう」
今回使う魔法陣は『冷却』と『維持』、まず魔物の熱をひんやりするくらいまで下げ、そしてその状態を維持する。
二種類の魔法陣を紙に刻んでいく。
「それ何やってんだ?」
倒れていた人も立てるまでに回復したようだ、とはいえまだ休む必要はあるが。
「このままにしておくと腐っちゃうんでその対策を」
「へー、助けてくれたお礼に手伝うぞ」
「本当ですか?じゃこの紙を魔物の頭と胸の辺りに貼ってください」
魔法陣を刻んだ紙を二枚手渡す。
「くれぐれも陣に触れないでくださいね、一瞬で眠りにつきますから」
「こ、怖いこと言うなよ……」
慎重に紙を貼り付ける姿を見届けてから、二枚の紙を背と尾に貼り付ける。
「冷たっ!」
効果はちゃっと発揮できているようだ。
「その本凄いな、ただの紙がこんな効果持つなんてさ」
ただの紙と言うわけでも無いのだが、今は良いだろう。
「自信作の一つですね」
「え?それお前が作ったのか?」
「助言を貰ったりもしてますけど、一応一人で完成させました」
実家を飛び出してから始めの方に作ったのを覚えている、あの時は旅しながら魔法陣を憶えるのが大変で、それで考えついたのがこれだった。
「てことはお前って魔技師なのか」
「そういう事になります」
魔物の亡骸に触れると手にひんやりとした感覚が伝わってくる。
「さて、救援がくるまで時間もありますし、自己紹介でもしませんか?」
「いい考えだな、そうするか」
魔物から離れて、何か会話をしている二人の元へ向かう。
「まずは俺からな、名前はテオ、魔術は苦手だけど剣なら大得意だぜ」
活発さを思わせる茶の短髪、背中には剣を背負っている。
「僕の名前はアスト、主に使用する武器は槍、補助の魔術を得意としている」
白縁の眼鏡、穂先の青い槍、見た目は知的そうな印象があ る。
「自己紹介ってそういうものなの?私はクラウディア、得意なのは攻撃的な魔術で、趣味はお菓子作りと庭で花を育てることかしら」
赤い石が先端に付いた長杖に白を基調に赤い刺繍が入ったローブ、そして金色の髪を後ろでひとつ結びにしている。
「いや見合いかよ」
「これが普通でしょ!」
一時的に組んで依頼をこなすだけなら名前と武器、得意な魔術の紹介だけでも十分ではあるが、今回は両方に合わせておこう。
「レイです、魔術は苦手ではないけど普段はあまり使わないようにしてます、主に使う武器は剣と銃で趣味は魔導具作りと錬金術ですね」
連盟員であるという事は伝えたし、話すのはこんなところだろうか。
「銃持ってんの!?」
「え?錬金術?魔導技師じゃないの?」
「色々と聞きたいことが一度に増えたな……」
驚愕困惑、一度に情報を話しすぎたかな。
「聞いてもらえれば一つづつ答えますよ」
「じゃあ俺から!銃持ってるってマジ?」
「マジです」
「見せて!」
「良いですよ」
留め具を外し銃を引き抜いて見せると、テオの目が見開き輝きはじめた。
「すげー!これが本物か……!」
「そんなに珍しいですかね」
「うちの学園じゃ銃は禁止なのよ、危険だからって」
「なるほど」
威力が中級には及ばないとはいえ、簡単に魔術が撃てるのは確かに危険か。
「なあなあちょっと持たせてもらっても良いか?」
「もちろん」
テオに銃を渡すとより一層目を輝かせて、あちこちへと構えと始めた。
「ちょっ、人に向けるんじゃないわよ!」
「すげー!かっけー!」
安全装置が着いているとはいえ向けられていい気はしないだろう。
そして不意に空へ向けると、テオは引き金を引いた。
「あれ?弾が出ない」
「安全装置を解除しないと撃てないように作ってますから」
銃の向けられた空を見ると、翼の生えた魔物が何体も飛び回っていた。
「なんだ……」
「なんだじゃないわよ!馬鹿!」
クラウディアが叱りつけているが、残念がるテオはただ受け流している。
返してもらった銃を収めて、しっかりと固定しておく。
「なぜ禁止されているのか、なんとなく分かるだろう?」
「そうですね」
わざと人を撃ちはしないだろうが事故という物もある、未然に防げるならそれに越したことはないだろう。
「ーーーー」
「ーーーー」
不意に茂みの方から話し声が聞こえ視線を向けると、数人の冒険者達が草木を掻き分けて現れた。
「連盟の者だ、救援信号を確認して来たがもう解決したのか?」
代表らしき剣士が銀の板を取り出して掲示する。
「救援をありがとうございます、状況は俺が説明します」
連盟証を見せてから、今に至る経緯を簡潔に伝える。




