楽しい魔導具制作
村の騎士団詰所の敷地に戻り、建物の裏側へ行くと施錠された扉があった。
「お邪魔します」
鍵を焼き切って扉を開くと、中には幾つかの大鎧と、盾が壁に掛けられていた。
それぞれに触れて確かめてみるが、これといった魔術が施された様子もない、ただ頑丈なだけの装備であることが分かる。
「これだけあればいけるかな」
村から少し離れた場所にそれらを運び出し、荷袋から本と杖を取り出して宙に浮かべる。
「よっと……」
大鎧を開いて三つを地面に並べ円形を作り、その上にまた三つを乗せる。
「盾を使って身長より少し大きいぐらいかな、『起動せよ』」
本から接合の魔法陣を発生させ、鎧同士が合わさった部分に貼り付けていく。
そこに杖で触れて魔力を流し込むと、鎧同士が触れた部分が溶け合い一つになった。
「あ、俺の魔力流しちゃった……、まあいっか」
盾も同様に先の方に付ける。
「角度は……、ここが一番飛距離が出るはず……!」
余った装備などを支えにして角度を調整し、最後に底の方へ大盾をくっつける。
「後は魔法陣を刻んで燃料を入れる穴を開ければ良いかな」
一度村へ戻り商人から頑丈な布を買っていると、上の方に視線が向けられている事に気づいた。
「なあ、あんた髪光ってるぞ……?」
「魔力を使うと光る体質なんですよ」
「聞いたことねえ話だな……」
「奇遇ですね、俺も聞いたことないんですよ」
それこそ最初にこの状態になった時には結構戸惑いはしたが、困る事も特に無いため今ではすっかり慣れてしまった。
「おいおい自分の身体だろ?」
「こうなったのも最近なんですよね、自分的には良い素材にもなるからまあ良いかなって」
「技術系の奴ってやっぱり変わってんだな……」
すっかり呆れられてしまった。
作業場に戻りくっついた鎧と盾達に様々な魔法陣を刻み込んでいく。
「えーと『反発』『加速』『防護』『硬化』、あと音も抑えなきゃか、じゃあ周囲に結界を張る感じにしてと…」
次に鎧の部分に窪みを作り、燃料用の程よい大きさの魔石を取り出してそこに嵌め込む。
「『充填』と『停止』と、試射したいけど|硬い物飛ばすのは危ないよな…」
布を切って丸めて筒の中に入れ、充填の魔法陣を起動すると、鎧と盾に刻まれた魔法陣達が一斉に輝き出す。
少し距離を取ると、大砲を包むように結界が現れる。
「準備完了、『発射』!」
眩い光を鎧盾の砲塔から、轟音と共に結界に包まれた布が射出された。
高速で飛び出した『砲弾』、ではなく『砲布』は瞬く間に雲を突き抜け見えなくなってしまった。
「うん、生身じゃ死ぬね」
砲塔を確認してみると、少しの歪みと幾つもの罅が見つかった。
「撃てて後一発かな、よし次は翼だ」
赤い枝を何本か切り出して真っ直ぐに削ってから強度を上げる魔法陣を刻み、布を貼り付けて一対の翼を作り、様々な陣を刻んでいく。
「まあ無いよりマシって程度かな」
もっと細部に拘りたい所ではあるのだが、素材も揃っていない今の環境ではここが限界だ。
背中に背負ってから起動すると、地面に対して垂直の向きだった翼が開かれ平行に伸びる。
「鳥翼人種っていうか、虫人?」
荷袋から商人にあげた首飾りの残りを出し、それを全て首に掛ける。
「どれも不具合は無し、よし行くか」
張られる結界にバラツキはあるが、どれも中級魔術を数発耐える事は出来る、これで発射時と着地の際の衝撃を防いでくれる事を期待している。
「あっそうだ」
村に戻り村長から赤い植木鉢を貰う。
「お礼がこの様な物で本当にいいのですか?」
「はい、見たい景色も見れましたから」
「おおなんとお優しい……、子供たちにも手本とさせたいぐらいです」
「はは、言い過ぎですよ」
発射場所に戻り、荷袋から布袋を取り出して植木鉢の底だけをまず入れる。
そしてまず中に半分だけ土を入れ、そして近くにあった苗木を掘り出して鉢のなかに入れ隙間を土で埋めていく。
「高さも丁度いいな」
捲っていた袋を上まで被せ、折れないように紐を縛る。
そしてそれを、荷袋のなかに入れる。
「よし、行くか」
いよいよ砲塔の中へ入ろうとした所で、嫌な予感がして足を止める。
「一応もしもの為にでかいの作っとくか……」
袋の中から大きめの魔石を取り出して、守りに関連した魔法陣をあらかた刻んでおき、余った布で包み身体へ縛り付ける。
「よし…!『閉じよ』」
本と杖を回収して起き、砲塔を起動して急いで中に入る。
膝を抱える体制で底に座り、風鎧の首飾りを起動して風を纏う。
身体の周りに砲塔由来の結界が張られたことを確認し耳を塞ぐ。
砲塔が軋みを上げる音が聞こえ、多少不安になってきたがここまで来たらもう逃げられない。
心を落ち着ける為に目を閉じて深呼吸をする。
「『発射』!」
首の辺りで幾つも砕ける音が聞こえる。
「おお、大成功……」
目を開くと、そこは空だった。
「被害状況はと、これはこれは……」
結界を張るための首飾りは全て砕け魔石が消失している、さらに布で巻き付けた大きな魔石にも深く傷が入っており、機能が生きているのが奇跡な状態だった。
「でかいの作ってなきゃ死んでたなこれ」
一つ目の山場である発射はどうにか生き残れたが、次は着地の事を考えなければならない。
翼である程度の減速が出来る事を期待しているが、それでもこの魔石で衝撃を相殺出来るかは怪しいだろう。
「いざとなったら魔術で結界張るしかないか、最近サボってるからぶっつけになるけど」
覚悟を固めていると、高度が下がり始めていることに気づいた。
「最大点は過ぎたかな、『展開』」
背負った翼が横に展開され、一対の翼となる。
これは一応ドラゴンを参考に作った物で、木が支える骨となり、布が飛膜となって風を掴んでくれないかなと考えている。
現状は大砲の結界のお陰もあって翼に問題は起きていないが、問題は風を受け止めるために解いた後だ。
「……いや、どっちみちこれがダメなら死ぬしやるしかないか」
周りを包む大砲の結界に触れ解除する、すると風を受けた両翼が軋み始めた。
「頑張ってくれ……!」
翼に魔力を流し込むと、軋む音が止み、ゆっくりと羽ばたき始めた。
「高度を維持するならもっと大きくして補 助も増やさなきゃダメか、ただ確実に減速はしてるからそこは良い感じだな」
後はもうやる事がない為、空を飛ぶ事に対しての考察を始める。
「次は翼の数を増やして三対六枚にでもしてみるか?いや重量が増えるのはあれか……、でも耐久力と軽さが両立出来る素材が手に入れば試してみる価値はあるか?」
空の旅は暫く続く。




