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魔導技師商人-魔道具を作って売って世界を旅します  作者: ふみぃ


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赤い石

 

 一先ず結晶の調査をする事を優先し、目的地へ向けて走り出す。


 時折見かける『この先名所』と書かれた看板に案内されながら、草に浸食(しんしょく)された道を進んで行くと『この先赤結晶』と書かれた看板を見つけた。


「ふぅ……、この先か」


 僅かに(にじ)んだ汗を(ぬぐ)ってから道を塞ぐ草を()き分けて進むと、そこに赤い結晶はなく大きな(くぼ)みだけが残されていた。


 周囲にあるのは草木ばかりであり、どこかへ(つな)がる道も見当たらない。


「誰かが持ち去った、何かがぶつかって砕け散った、魔素(まそ)を放出しきって消えた……」


 一つ目はまず無理だろう、ここが最大の観光名所であるならば人の目も多い筈であり、例え夜であろうとも盗み出すのは難しい。


 二つ目も気付かないというのは難しい、あれほどの魔結晶(まけっしょう)に何かが衝突(しょうとつ)したとすればもっと被害(ひがい)が広がっていた(はず)だろう。


 三つ目、一日で魔素を放出しきったのであれば周囲の色が抜けるだけではなく、他にも影響(えいきょう)が出ている筈だ。


 例えばゆっくりと放出されて魔素が尽きたのだとすれば、そのもっと前から何かしらの異変(いへん)に気付く可能性の方が高い。


「せめて欠片でも残ってたら良かったんだけど……、九年も経ってたら持ってかれてるよな」


 一先ずは調べようも無い石の調査は後に回し、他の調査を優先する方が利口だろう。


「まずは本当に魔素で本当に森の色が変わるのかだな」


 森の色が変わることを信じていない訳では無いが、その現象を自分の目でも見てみたい。


「あの赤い石が魔結晶だと仮定して……」


 地面に魔力を流し込むが、色が変わる事はなくただ浪費するだけで終わる。


「人の魔力じゃなくて純粋な魔素じゃないと駄目って事か?」


 荷袋から革製の包みを取り出し、(ひも)を緩めて口を開く。


「だとしたら空気中の魔素に反応して色が変わってるよな」


 革袋に手を入れ鮮やかに輝く小さな石を幾つか取り出し、地面に転がす。


「ふーん……?」


 石が触れた地面が段々とそれぞれの色に染まっていく。


「赤い石に何かあるだと思ってたけど、変だったのはこの土地の方か」


 だとするならば、あの赤い石は本当にただの魔結晶だということになる。


 転がした魔結晶を全て拾い観察してみると、中の光が弱まっているのがよく分かる。


「ちょっと小さくなってるな……、てことはやっぱり魔素を出しつくて消えたってことか?」


 だとしたら大勢居たであろう住民や観光客が気付いているだろう、あの大きさであれば消えるまでに早くても三日は掛かる筈だ。


「てか誰も調査とかしなかったのかな、こんな面白い場所なのに」


 調査したが分からなかったのか、原因が分かっても治す手立てが見つからなかったのか、そもそも調査すらしていないのか。


 当時の人々考えは分からないが、恐らく何かしらの理由があったのだろう。


「余計なお世話かもしれないけど、ちょっと試してみるか」


 荷物から人の頭ほどの大きさをした革袋を取りだし開き、現れた透明な結晶を赤い石があった(くぼ)みに上半分だけを露出(ろしゅつ)させて埋める。


 結晶は小さくなり始めるが、途中で縮小(しゅくしょう)が止まった。


「よし拮抗(きっこう)してる、土台は大丈夫そうだな」


 荷物からさらに本を取り出し、固定具から黒と金の二色の配色をした杖を引き抜き構える。


「『起動せよ』」


 文言を唱えると本の表紙に刻まれた魔法陣が青い輝きを放ち、手の上から空中に浮かび上がり一人でに開かれる。


「魔素は勝手に集めてくれるから、方向と属性の指定と最大値の設定と保護付けて、後は形だけ後で整えればいいか」


 杖で本を叩けば、自らが指定した所へと(めく)られていき、異なる形の魔法陣が四つ飛び出す。


 杖を振るって魔法陣の軌道(きどう)(あやつ)り、重ならないように結晶の中へ閉じ込める。


「『目覚めよ』」


 閉じ込められたそれぞれが輝きを放ち、結晶が赤く染まり段々と大きくなり始める。


「後はひたすら待ちの時間、いい感じの大きさになるのは明日の早朝って所か?」


 荷物から金鎚と先が平たい鉄の杭、そして黒く長い棒と布を二つ取り出し置いておく。


「先に焚火(たきび)と魔物除けの準備しちゃうか」


 大きさの揃った石を円に並べ枝を拾い集め、細い物から重ねてから(まき)三本を交差させるように乗せる。


 さらに荷物から瓶入りの蝋燭(ろうそく)を取り出し焚火の横に置いておく。


「よいしょっと」


 黒い棒を拾い地面に突き刺す。


「『起動せよ』」


 文言を唱えると黒い棒に幾つもの線が走り、そこから枝のように八方向に避け広がり地面に突き刺さる、そして支柱だった部分が勝手に地面から抜けると裏返ったように空の方を向く。


 膨らんだ円錐(えんすい)のような形になった黒の棒だった物に、布を勢いよく掛けると支柱に張り付き硬質化していく。


 入り口を開き床用の布を()くと、旅用の臨時(りんじ)住居が完成した。


「さて、色々と調べさせてもらいますか」


 魔晶石の詰まった革袋を持ち歩き周りを歩き回る。


「木も一瞬で色が変わったって言ってたけど……」


 樹皮(じゅひ)に革袋から取り出した青い魔晶石を押し付けると、木の表面が触れた部分を起点に染まっていく。


 そしてやや小さくなった魔晶石を離すと、青色が木から地面へと移動し消えていく。


「うーん……」


 背の低い木に近づき枝へ押し付けると、そこを起点に青い木が出来上がる。


「ちょっと拝借(はいしゃく)


 青い枝を(つか)()し折ると、色が変わったまま手に入ってしまった。


「なるほど……?」


 折った青の枝を地面に着けると、色が地面に吸い込まれ僅かに広がってからすぐに消えてしまった。


「土地というより、このずっと下に吸い取ってる本体があるのか?」


 なぜ魔素の色がそのまま反映されるているのかは分からないが、考えるとすればここ自体が巨大な魔石のような性質をしているなどだろうか。


「この森全域がそもそも魔素を()め込む性質をしてるっぽいな……」


 元からそうだったのか、変異(へんい)したのかは分からないがこの性質を使えば面白い事が色々と出来そうだ。


「そろそろ日が沈みそうだし、魔除け試しとくか」


 目の模様(もよう)を刻まれた首飾りに触れて機能を落として置き、(つか)(つば)だけ剣型の魔道具を取り出す。


「魔素は尽きて無いかな……」


 柄の尾に着けた突起を押し起動すれば、青白い炎の剣身が伸びる。


 それを細枝に当て焚火を起こしてから、蝋燭(ろうそく)の紐に火を点けると独特の臭いが放たれた。


「うーん、臭くはないけど危機感を覚える感じ……」


 魔法で風を起こし、臭いを周囲に拡散させておく。


 蝋燭の名は『怒竜(どりゅう)汗蝋(かんろう)』。


 その名の通り竜が怒る際に発する汗の臭いを再現した物であり、これがあれば大抵(たいてい)の魔物を遠ざける事が出来るそうだ。


「後は明日の朝を待つだけだな」


 焚火を少し崩し鉄の小鍋を置き、水筒(すいとう)の中身を全て入れる。


「そろそろ保存用のでかい水筒作るかな……」


 綺麗な布で包んでいた干し肉を焚火に近づけて軽く(あぶ)り、鍋の中に投入する。


 そうする事で肉の味が引き出せるのだと、旅の師匠は教えてくれた。


「もっと気軽に中を洗えるようにして、温度を調節出来る機能とかもほしいよな」


 (さじ)で汁を救って口に含むと、丁度いい塩気と香辛料の辛み、そしてうっすらと溶け出した肉の旨味が味わえた。


「うん、うまい」


 大人に近づくと味の奥の味が感じ取れるようになるとよく言われているが、恐らくこれがその奥の味という物なのだろう。


「……物足りない」


 本音を言えばこの中に野菜などを加えたいのだが、旅の最中では生の食材は痛む危険性が高く持ち運びづらい。


「小型の冷蔵庫を作るにしても容量が少ないんじゃ意味無いし、袋の口に入る程度に抑えないとだから大きくも作れないしなぁ」


 かき混ぜていた(さじ)を鍋に掛けておき、金鎚(かなづち)(くい)を持って結晶の前に立つ。


「順調に育ってるけどやっぱ整えてやらないとだめか」


 歪に伸びた部分に杭を当てその背を金鎚で叩けば、簡単に砕け地面に転がる。


 一周しながら結晶の(いびつ)に伸びた部分や、下へ向いた物を叩き落としていく。


「形は作りやすいけど、(もろ)いから魔道具には使いづらいんだよなぁ」


 その名も『魔蝕晶石(ましょくしょうせき)』。


 魔素を常に喰らいながら()えず成長を続け、伸びきった(すえ)に人の生活圏までも(むしば)む事から名付けられた。


 とはいえ活用法がないというわけではなく、見た目が美しく加工もしやすい事から芸術家からの人気は高い。


 もっとも半永久的に成長し続ける為、対策をしなければならないが。


 その後は干し肉スープをゆっくり飲み干し、眠りにつくのだった。

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