星の騎士
学園生三人と連盟員の人達と少し離れ、街を目指して森の中を歩く。
「レイくんってさ、変わってるよね」
さっきまで楽しく会話をしていたニオからそんな事を言われる。
「会う人みんなにそれ言われるけど、そんなに?」
誰かと知り合って少し話していると、お前は変わり者だと毎回のように言われてしまう。
自分ではそうは思えないんだが、そもそもの感性が人とは違うんだろうか。
「とっても変わってるよ、私と同じ」
「なら気にしなくてもいいか」
「……一緒でいいの?」
個人的に彼女が変わっているとはあまり感じない、寧ろとても面白い人だと思っている。
「ニオちゃんはいい人だし、悪い気はしないよ」
そんなニオが自分を同じだと思ってくれているのならば、別に変わる必要もないだろう。
「……」
前方を見ると草原との境が見え始め、そこで先行者達が待っていた。
「やっときたか」
「話し込んじゃって、街はここから近いんですか?」
「休憩を挟んでも日暮れ前には着く程度だな、じゃあ出発するぞ」
「はい」
合流した一行と共に、街を目指して再び歩き出す。
そういえばこれだけの人数で行動するのは随分と久し振りな気がする、それこそ連盟に入りたての頃は年齢のもあって大人数の依頼しか受けさせて貰えなかったが、今では一人でも討伐の依頼を受けさせて貰えるようにもなった。
昔からの知り合いにはまだ子供だと思われているのか、今でも心配をされたりはするが。
「レイ、君に聞きたい事があるのだが良いだろうか」
アストが眼鏡をクイッと光らせながら近くに来た。
「もちろん良いですよ」
「ありがとう、それで聞きたい事というのは君の髪についてなんだが」
「髪ですか?」
「ああ、見間違いでなければ君の髪が光っていたように見えたのだが」
「これですか、確かに光りますよ」
身を守るために魔力を消費して結界を張っていた、それで髪が光っていたのだろう。
「やっぱりそうか……!まさか実在していたとは……」
何故かは知らないが、とても感激されている。
何にせよ体質を治す切っ掛けにもなるかもしれないし、ここは詳しく聞いておくべきだろう。
「どこかで見たことがあるんですか?」
「もちろんだとも!」
急に声が大きくなった。
「『星の騎士』という小説を知っているか?」
「知らないです」
「なんだって?あの有名作を知らないのか……、ネタバレしない程度に説明すると」
ある平和な世界があった。
そこは豊かな自然と穏やかな人間達が魔法を通じて共存する、所謂理想郷と呼ばれる世界であった。
ある日の事だ、空を引き裂き現れた、外なる邪神がこう告げたのだ。
『七日でこの星を消す』
同時にこうも告げた。
『騎士の力を与えよう、それを以て我らに立ち向かうがいい』
そうして選ばれた七人の星の騎士と、邪神の勢力による残酷な遊戯が始まる。
「という話なのだが、その星の騎士達は魔法を使うと髪が光り出すんだ」
「なるほの、面白そうですね」
「……!そうだろう?皆は子供向けだと馬鹿にするが、実によく練られた作品なのだよ」
眼鏡を光らせながら作品を熱く語る様子は、第一印象で感じだ冷静さとは真逆で面白い。
「それで、君の髪が光る条件は何か聞いても良いだろうか」
「良いですよ」
ここは実際に見せた方が理解もしやすいだろうが、いきなり魔術を使うと同行者に無駄な気を使わせてしまいそうだ。
「条件は魔力を使用した時ですね、休息地点に到着したら見せてあげますよ」
「良いのか!?」
「さっきからうるさいわよアスト!」
「す、すまん……」
アストがクラウディアに怒られてしまった。
「悪いな、あいつ賢い風馬鹿だからさ、急に気分が乗ったりすんだよ」
「いえ、面白くて良いと思いますよ」
「ははっ、そうだな」
学友二人にとっては見慣れた光景なのだろう。
「なあ、もっと砕けた話し方でもいいぜ?」
テオが歯を見せてニッと笑う。
「そうね、恩人にそこまで畏まられるとこっちが疲れるわ」
クラウディアは言葉を発した後にそっぽを向いてしまう。
「僕はどちらでも構わないが、話しやすい方でいい」
初対面の相手や仕事相手とは基本的にこうした話し方をするため、特別丁寧に接している訳では無いが、望まれているのならもっと距離感を縮めるべきだろう。
「分かった、これでいいか?」
「おう、そっちの方が俺も話しやすいぜ」
「なるほど、参考になる」
「おう、良かったな?」
歳の近い相手と取引をする際は、これくらいの方が相手に緊張させずに済むのかもしれない、もっとも人に寄るとは思うが相手に合わせて選択肢を選ぶようにしておこう。
それから歩くこと暫く、五本の木々が一定の感覚で生えた不思議な場所に到着した。
「ここで一度休憩にする」
「よっしゃー」
それを合図に各々が軽食を摂ったりと、それぞれの休息を取り始める。
それにしても。
「まるで取り残されたみたいだな」
「なんだ?急に詩人みたいなこと言い出して」
「感情に浸ってた訳じゃないんなけど、林の一つも見えないのにここだけ生えてるのって不思議じゃない?」
点々と木があるのならば魔物が種を運んだのだろうと想像できるが、木の一本が中心に生え、それを四角で囲うように生えていると不思議に感じてしまう。
「んなこと考えたことねえや」
「ここが取り残されたって考えはあながち間違いじゃない」
剣士さんにも会話が聞こえていたようだ。
「といいますと?」
「ここは旅人が誰かの為に植えた止まり木だそうだ、この辺りの平原は日影も無いから夏場は地獄だしな」
「へー、優男っすね、性別分からんけど」
「なるほど、他の人を思って植えられたんですか、いいですね」
そう考えれば木々が一定の感覚で配置され、枝葉が横に伸びる種が選ばれているのにも納得できる。
「なんか嬉しそうだな」
「知らない事が知れるって嬉しくない?」
「わかんね」
知ることは好きだ、未知と触れ合う事が大好きだ。
そもそも家を出た切っ掛けだって世界の果てを知ることだった、それは今でも変わっていない。
木に背中を預けると、柔らかい風が頬を撫でていった。
――――
「はあ……、ようやく街か……」
「早く宿で休みたいわね……」
「…………」
学生達三人は魔物に襲われたのもあって| 大分お疲れの様子だ、アストに至っては小説や光る髪に興奮してあれだけ喋っていたというのに、歩くほどに口数が減って今では一言も発しなくなってしまっていた。
「お疲れさん、お前は救援の証人として一緒に来てくれ」
「分かりました」
ここを暫く拠点にしておくなら、ついでに挨拶を済ませてしまおう。
「レイ、今日はありがとな」
「……助かったわ、今度お礼するから」
「感謝する、また会おう」
「ああ、また」




