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暫く抱き合っていると
「イザベラ嬢、アイリーンを離してくれるかな?」
ジル殿下がわたくしとイザベラ様を引き離します。
「何度も言うけど、この件に関して誰にも罰を与える事はしない。アイリーンが誘拐された事を公にする訳にはいかないからね。
もし、君たちが責任を感じるのであれば、この先僕の花を決して裏切らないでやってほしい」
「わたくしがアイリーンを裏切る事は神に誓ってありませんわ」
「俺も神に誓おう」
「それを信じているよ。さて、この話はこれで終わりだ、首謀者に関してはこちらで内密に調べるよ。アイリーンは関わっては駄目だよ」
「殿下、俺も手伝いたく思います」
「ああ…レオン宜しく頼むよ。何か分かれば報告はするように」
「畏まりました」
ジル殿下は、首謀者に関して、わたくしにはお話になりませんでした。わたくしのモヤモヤは晴れません。
「ジル殿下、今回、わたくしを助けて下さりありがとうございました。わたくし、今回の事で考えましたの」
「アイリーン、君が無事で本当によかった。何を考えたんだい?」
「わたくしは、殿下に相応しくありませんわ。ハッキリそう感じました。是非とも、わたくしとの婚約を考え直すべきだと」
わたくしがそう言葉を発すると、辺りがピシッと固まります。
「な、な、何を、言っているんだい?」
「事実を公にはしておりませんが、実際わたくしは拐われました。それは王家にとって今後汚点となるでしょう。それこそ、首謀者は弱みを握ったのです、わたくし王家の汚点、殿下にとっての弱みになりたくありませんわ」
わたくしは胸を張って言い切りました。
「アイリーン…本音は?」
そうジル殿下が低い声を発します。
わたくしはジト目で見られ、段々と目を泳がせます。
僅かにジル殿下から発せられる黒いオーラに冷や汗が滴り落ちおり、助けを求めようと当たりを見回すと
レオン様は顔を青くし
イザベラ様は、驚いた顔でわたくしを凝視し
アヤはキラキラとこの場を楽しみ
ケントはオドオドどうすれば良いのか視線を動かし
わたくしの護衛なんて、お嬢様自業自得です、ガッツですと目が言っており。
わたくしは、この場に味方が居ないことを悟ります。