ジル・フォン・エルバス
僕はスヤスヤと眠るアイリーンの髪を撫でる。
本当に間に合って良かった。
そして同時に思う、彼女は行動力が本当にあり過ぎると。
どこの御令嬢が男を倒し、自ら逃げる?
僕は、アイリーンの寝顔を見ながら、あの時の事を思い出す。
アイリーンがレオンの屋敷に遊びに行く事は、レオンから聞いていた。
僕も一緒に行きたかったが、公務が多くて、無理だった。
だから、僕の代わりに影の護衛をこっそりアイリーンに付けたんだ。
日々、彼女が楽しく過ごしている事の報告を影から受け取り、僕は笑顔で公務をこなす。
ようやく、前倒しした公務も終わり1週間程、陛下から休んでも良いと許可が降りた。
僕はすぐさま、数人の護衛を連れ王都を出てレオンの領地へ向かった。
まさか、領地に着いた瞬間、影の護衛から緊急連絡が入るとは思わなかったが…。
僕はあの時の感情を一生忘れる事は無いだろう。
内面に出してはいけないと訓練していたお陰か、顔だけは笑顔を絶やさずに済んだが、僕の心は焦りに支配されていた。
「今から言う事は、口外しないように、分かったものから頷いてくれ」
皆が僕の顔を見て頷く。
そして、僕の婚約者が何者かに襲われた事を伝えた。
皆が息を呑むのが分かる。
アランが剣に手を当て、目を鋭くさせる。
「場所は分かっている、だが、走るな、顔にも出すな!この事がバレた瞬間にアイリーンは貴族として生きていけなくなる。分かったな」
僕達がその場所へ向かって行ってると、見知った顔に出くわした。
男を担いでいる彼は、アイリーンの護衛。
僕も何度か会った事がある。
彼は、護衛服を脱いでおり、服の一部が破れている。
よく見ると血が微かに見えた。
彼は僕に気がつくと、顔を青褪め、そして頭を下げた。
「アイリーンはどこだ」
「分からないです」
「その男は?」
「お嬢様を拐った一味です」
「アラン」
「はっ」
「役所に連れて行かれるとこの事が公になる。レオンの離れに連れて行け!誰にも気付かれるな!そして、コイツから依頼者を聞き出せ、必ずだ!その為には何をしてもいい」
「ああ、了解だ、でもその間、ジルの護衛はどうするんだ?」
「彼にお願いするよ、まだ、やれるね?」
彼は頷き僕に続いた、その時、彼女の発明品を手渡された。役に立てればと。
これは、初めて彼女とあった時にアイリーンが使っていたやつだ。
僕はそれを握りしめ、先を急ぐ。
アイリーンが拐われた場所に辿り着けば、辺り一面に血痕が…。
僕は彼女の護衛をバッと見る。
バツが悪そうに彼は、状況を説明した。
説明を聞き終えた瞬間、影からアイリーンの居場所が分かったと連絡があった。
僕達はその場所に急ぐ。
待っててくれアイリーン、必ず助ける。




