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余暇

隣にエレナ艦長が座っている教室。サンとリアも新たに出来た後ろの横のラインに席を置いて座っていて、リアがエレナ艦長の後ろ、サンはフゲン少年の後ろに席がある。二人とも、というよりエレナ艦長も含めて常用知識を身に付ける為と、分かりそうで、それでいいのか分からない理由でこの学校に在籍することになった。因みにこのクラスは区外から来た生徒が多いいクラスで、ハク少年は機構軍に席を置いているからこのクラスであるらしかった。

だから新しい席が窓辺にあることは差し迫って疑問視すべきことではなかった。なかったのだけれど。

「はーい、おはよーさん。またまた転入生なぁ」

その姿を見て、血流が冷却されたかと思った。サンの所為でもない。がったーんと、フゲン少年の後ろで椅子が倒れる。

「ロア、なんでっ、お前死んだはずだろっ」

サンが斜め後ろで声を上げる。美しい術式でもないのに転入生のロアから、どうしようもなく目が離せなかった。

「うん、言ったじゃん?幽体離脱出来るって」

ちゃきりとポーズを取って満面の笑顔。

「あれ死んだみたいになるでしょ、お陰で出血も止まるんだよねぇ」

冷凍人間と似た発想であろうか。

「傷治るまで元に戻らなかったら色々あってさぁ。長くなるからまた今度。そんなわけで特技は幽体離脱ロサケアでーす。死んでるみたいに見えても生きてることあるから燃やすの急がないでね。よろしく」

「はい、宜しくな。席は」

そこでエレナ艦長が手を挙げて立ち上がる。

「ロサケア兵曹に事情聴取の必要性を感じますので、ルリチシャ少尉共々職務上の理由により休みをいただきます」

「はいはい、三人欠席と」

「え?」

「ルリ君、連行して下さい」

「はい」

立ち上がり手袋をしながら教壇に立つロアの所に向かい、腕を掴む。

「え?なに?というか融通効かない人増えてない?」

動いていなかったものが動いていて、気持ち悪い。気持ち悪いのに、怖気が走るのに。

「……生きている……」

ほっと息をはく。

「ルっ、って、いっ痛い、痛いっ」

その腕を捻り挙げて教室の外に向かう。

「ちょっ、外れる。って、サン助けて」

「自業自得だ」

サンは倒した椅子を直して座る。

「リアっ笑ってないで」

リアは座ったまま腹を抱えて笑っているようだった。

教室を出て廊下をエレナ艦長に続いて暫く、ロアが煩いので息をはいて手を離す。ロアは腕を振って、感覚を戻す様子。

「感動の対面ハグとかはないと思っていたけどさぁ、腕ねじ上げるって。……ルシャ?」

「……」

馴染みのある声だった。落ち着くためにもう一度はぁと息をはく。

「聴取です」

「わぁ……。うん、そうだねぇ」

引いたくせして嬉しそうに笑ったロアと、エレナ艦長の後ろを一緒に歩いた。



「ばぁちゃんがね、裏から世界を牛耳ってる団体の一員なんだ。牛耳ってるっていうか、そういうのをなくしたいって団体でね。昔から住んでいた山奥の里で、ある日突然、ここは機構の土地です、山を降りなさい、そうしなくとも上納金をって、どうしてってなったわけ。昔からそこで、山のモノを必要なだけ取って生きていた、もし余ったら山に返さないと。誰かにやる分を取りものでもないんだよ。それで、自分達は人で無し、人の権利を持たない無法者、山猿になった」

エレナ艦長の向かいに座ったロアは緩やかな調子で話した。

「だから本当は裏から画策して人を行動させるのも嫌いで、だけど権利だなんだと息巻く機構のやり方を打ち倒すために、その団体は行動していた。それぞれの自由の為の行動をって……。なのに命令されたんだ、ルシャを利用してコンフリー老師を思いのままに操れって。僕はルシャが他人に左右される者でもないって言ったら、ゲノムを使って操ればいいそれぐらいの隙は見つけられるだろって、周りにバレるよって言ったら、人でなしが良い人になっても誰も気にしないってさ。ふざけてると思ったよ。いいのに別に。そのまんまで。それを勝手に変えようだなんて、どこが自由の為の行動なの?」

「……」

「人の気を自分の都合で変えるなんてタチの悪いことの手伝いなんてしたくなかった。断ったらあぁなったの。死体っぽく転がってたら一応助けてくれたけどね。ルシャとの縁は切るには惜しいみたいだよ」

「……随分と正直に話されますね」

「だってどうせ見られたら困るし、なにも言わずに処分受けるのもね。僕はある種なにもしてないから、それはそれで不当じゃない?」

「なにもしてはいませんか」

「さっき団体っていったけど、共同思想なだけで組織だってもいない。うん思想共同体と思ったら気持ち悪いね。僕はただばぁちゃんが言うのになんか良いなぁと思って言われるままだったけど、選択の自由をうたいながらさせてる時点で、錯誤だね。違うや、なんだっけ、ただまぁ、育ちは人に影響を与えるわけだ。僕はあの時起きたことを起こすことを知らなかった。士官学校に入るまではただばぁちゃんの言うままに色んな区の施設を渡り歩いていただけ。他の共同思想家も知らない。なにも……ごめんね、役に立たなくて」

自分の目を見てロアは言った。

「嫌になった?」

「なにがです」

「……ならいいや」

少し寂しそうであって、申し訳なくも思えた。その後、ロサケアは処分不適当となり、署で巡回業務に従事しながら学校に通うようになった。

自分の感情思想も変えられないのに人のものを変えようとするのは、間違いであろう。ただ、法や規律に反せば取り締まればいい。その法がどうであろうとも。

読んで下さった方がいましたら、ありがとうございます。

続きがあるような、終わりらしい終わりは苦手なので、ここでこの話は終わらせていただきます。

オチに悩んで、ロアを復活させてしまいましたが、あまりそういう話を好んでいないのに、書いてしまい、悲しい。

次の話も冒頭そうかもと。

今回と同じ世界観で書きます。

次はこの世界観を書き始めたきっかけの話となります。

よしなに。

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