先輩、面談中
今日は特別に申請者様と対象者様のお二人にお越しいただきました。
また、福祉課の担当者にもおいでいただいております。
加えて、今回は更にボイスレコーダーをつけさせていただきます。理由はお分かりですね。
はっきり申し上げますと、あなた方の申請は無効となります。
端的にご説明いたしますと、申請者さん。自殺したい人の殺人を申込しましたね?
調査で明らかになりましたが、対象者様は抑うつ状態で前職を退職後、2年間定職に就かず、その内に近親者及び友人と疎遠になったふりをしているとのことでした。申請者様の当初相談と違う内容です。相談時には、退職してからアルコール中毒にかかり、周りにも当たり散らす厄介者であると説明されましたね。実際には、うつで動けず部屋でじっとする毎日であったという証言をいくつか得られました。そんな中で対象者様は自殺を強く考え、申請者様に相談をして殺人課を利用しようと画策した。そうして、希死念慮が深まった対象者様を救う……と言っても自殺ほう助に近いですが、殺人申込をしたと。
自殺は怖い、自分でも実行できない……そういった気持ちも分かりますが、私共は無暗に人を殺す課ではないのです。
そして、何より自分の生死を簡単に預けてはならないのです。
ここまではよろしいですか? ……続けます。
生き抜くことは大変かと思います。人に迷惑をかけるし、お金も必要です。
それでも対象者さんには、こうして嘘をつき続けようとした申請者さんがいるじゃないですか。
人は簡単に殺せないし、死んでもいけないのです。その苦しみに立ち向かえ、とは申し上げません。
しかしながら、当課を利用して自殺することは制度批判を超えた悪用なのです。
この仕事は忌み嫌われることもありますが、相談者の心のケアもしております。
自立支援医療制度と生活保護申請をしましょう。それが我々の提案です。
ええ、という訳で貴方の申請は取り消しとなります。
私の発言は課として正しくないと思われます。
ですが、決して、もう一人で悩まないでいただきたい。殺人課は、私達の正式名称ではありません。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
次回より新章に入ります。もし作品を楽しんでいただけましたら、評価やご感想をいただけると今後の励みになります。




