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パン職人の弟子の弟子。スローライフの旅へ出発  作者: 櫛田こころ


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第21話 おかわり大盛況

「「「「「おかわり!!」」」」」

「は~い」



 近衛騎士団の食堂は、さながら戦場とも言える状況になっていた。


 しかしながら、内容は至ってシンプルに『おかわり合戦』と和やかなものだ。ルチャル提案の二種類のシチューに加え、今までこの国ではお目にかかったことのない『白パン』の美味しさに……胃袋を掴まれるのは仕様がない。


 ただでさえ、大食らいだと思われる騎士団たちは稽古に割り込んできたザイルによってへとへとになるまでしごかれたのだから……このご褒美は至高とも思えたのか。


 ルチャルは自分の夕飯は無限収納棚から適当に出せばいいかと思い、配膳係に徹していると毎回毎回もらえる騎士たちの笑顔に嬉しさが隠せない。


 教えて、よかった。


 作れて、よかった。


 いくら各地派遣使者の中でも『筆頭弟子』などと呼ばれているが、幼少期のトラウマがあるので初回の反応には慎重になってしまう。それがなくなれば、あとは仕事をするのみと勤しんでしまう悪い癖があるのだが。



「……ルチャル。君はさっきから仕事ばかりしているようだが」



 二回目のおかわりに来たライオスに声をかけられたものの、大丈夫ですとすぐに返事をした。



「修業時代の、配膳合戦に比べればゆっくりですし。あたしは、さっきお見せしたスキルの中のパンを食べればいいですから」

「……合戦??」

「セルディアスの名物ですかね? 弟子たちの腕前披露といっしょに、街中の人たちへ無償で料理を振舞うんです。経費は国が補助金として出してくれるんですよ。職人にとっての、ランク昇格試験のようなものでしょうか」

「……そのような催し物が?」

「あたしは五回くらい経験しましたけど。手伝ってくれる人たちがいても、もっとへとへとになりましたし。これくらいへっちゃらです」

「……そうか。しかし、無理はするなよ?」

「はい」



 堅物な見た目の割に、結構心配性なんだとルチャルは感心した。慎重派だからこそ、油断禁物とも自分で言っていたから……国の益になることそうでないこと抜きに、他人を労わる気持ちがないわけではなかったようだ。


 心配だからこそ、相手を気遣ってしまう。顔に出にくい分、態度で示してくれるのだ。今もトレーを片手で持ち、空いている方でルチャルの頭を軽く撫でてくれたから。



(あれは……俗にいうモテ男子とやらかもしれない)



 祖の親友である伯爵が、世のモテ方のノウハウを教えてくれたことがあったので、なんとなくそれに当てはまるなと思い出したのだ。


 とりあえず、ライオスのあとにも何名かおかわりが来たので配膳していくと、あと一杯のところでザイルが何回目かのおかわりに来たのだ。



「まだあるか?」

「ザイルで終わり」

「お、マジ?」

「何杯食べたのってくらい来るけど。試験そんなに体力使ったの?」

「おう。ギルマスとのタイマンはなかなかだったぜ。追い詰めるのに苦労した」

「……の、あとに。騎士団の人たちと汗流したのに?」

「消化不良って感じだったんだ。許してー」

「はいはい。これで最後」

「「「「「えええええ!!?」」」」」



 ルチャルがシチューを全部器に盛ってやると、後方で待っていた騎士団の若い団員らが声を上げたのは仕方がないと言うべきか。


 それに対し、ザイルは『早いもの勝ちだ』と誇らしげに笑ってからさっさと席に戻ってしまった。



「……今日だけではないので。また明日も調理担当さんたちに教えていきますから」



 ね?と気落ちしているのを宥めてやれば、近くにいたエクシスが少し前にもあったように距離を詰めてきて……肩を強く掴んできた。



「ほんと!? あの美味しいシチュー以外にもまだあるんだよね!?」

「あ、あります。ありますから、とりあえず落ち着いてください」

「約束だよ!」



 と言って、トレーの中身はもう空っぽだからなのか返却スペースに置きに行ってしまった。ほかの団員らも似た感じでどんどん返却していき、残ったのはザイル以外に副団長のふたりだった。


 フェルナンの方が先に食べ終わると、片付けを終わろうとしていたルチャルにおいでと手招きしてきたので、誘われるがまま彼の前に立つことにした。



「どうしました?」

「いえ。大変美味しかったとお礼を言いたく。あのパンは病みつき過ぎますよ。公主にもあとでお持ちするんですか?」

「え? 食事作る人は別では?」

「いいえ? 専属の調理人がいるわけではなく、ここから一部お持ちするんです」

「え!? マルシスさん!!?」

「ごめんなさい!! 誰か避けているものだとすっかり!!」



 ほかの調理人たちもしまった、と言わんばかりの表情だったので……仕方がない、と無限収納棚の中身以外の温かい料理はザイルも巻き込んで手分けして作ることとなった。せめて、あの残量だけでも確保していれば、ガイウスの食事はちゃんと残せていたからだ。



「俺関係なくない?」

「ダメ。こっちのミスもあるけど、ザイルは食べ過ぎ」



 ということで、ガイウスのところへいっしょに配膳も行くことになった。もともと顔見知りなので挨拶も兼ねて、と。

次回は土曜日〜

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