第19話 はじめての白パンのあじわいを
マルシスはすぐに戻ってきてくれたので、せっかくの焼きたてをひとつ食べてもらうことにした。とても熱いが半分に割ってもらい、その間へ適量のバターを落としていく。
じゅわぁ、とすぐに蕩けてしまいそうなそれを口に入れるように言えば、マルシスははふはふいいながらも食べ出して。
「~~!? ん、ま!!? ふんわりしているのに、ば、バターの塩気とかでじゅわって!!」
「これがライ麦パン以外の基本的なパンの食感ですよ?」
「これが……僕も、作れるようになれば」
「食堂のメニューが大幅に変わりますよ? パンだけじゃなくて、ほかの料理も」
「!! 教えてください!! る、ルチャルさん!!」
「はい、もちろん。スキルが使えるのは限定された人間だけなので、あたしも復習兼ねて色々思い出しますから」
「! はい!!」
今日のメインとなる白パン以外に、シチューもクリーム以外に通常のもアレンジしたものを提供しようとマルシス以外の料理人が厨房に戻ってきたら説明をし。
食堂の時間が迫ってきたら、マルシスらには目を丸くされてもスキルを披露。主に、『時間短縮』だがルチャルの体力に無理ない範囲で使うことは出来た。シュスイの変換は説明がややこしくなるので今回は除外。
それと、腹ペコの騎士たちにシチューとパンだけでは物足りないだろうと、マルシスらに肉を叩いてひき肉にしてもらうことにした。
「美味しいメインを作りますよ! ハンバーグっていうものです」
「「「ハンバーグ??」」」
「野菜とつなぎの食材を入れて丸めて……焼いたらソースをかけたりして食べるものです。今日はソースなしでもしっかりした味付けにしようかと」
「「「??」」」
「師匠が旦那様によく作られる料理のひとつなんです。あたしも弟子になったときに振舞っていただきました」
「ルチャルさんのお師匠さんが?!」
「なので、お墨付きもらってますよ~」
「「「頑張ります!!」」」
玉ねぎを炒めたあとは冷却の魔法で軽く冷やし、それをひき肉につなぎの材料と調味料を合わせてしっかり混ぜ込む。成形は適宜教え、焼き目をつけたら窯でじっくり火を通す。これを今度は……ほかの料理人らにも教えたい白パンの食べ方で試食してもらった。
オープンサンドのハンバーグ版で。
肉汁をうまく受け止めてくれるので、バターのそれとはまた違った味わいに、ほおが緩むのは仕方ない結果になった。
「美味しいでしょう?」
「「「美味しいです!!」」」
「臭みもないし、ジューシーで」
「ふわふわのパンが台無しになるどころか……こんな組み合わせあるんだって思うくらい」
「美味いです! ルチャルさんは何でも知ってるんですね!?」
「それは言い過ぎですよ? マルシスさんたちも料理の基礎が整っているからこそ、美味しいものがちゃんと作れているんです」
「「「!!!」」」
「【枯渇の悪食】の被害が大きかったのにも関わらず、普通に美味しい食事を取り戻せていたのを確認できたので……使者としては、そこがとても嬉しかったです。師匠にも報告出来ますよ」
セルディアスが根源とされていた、【枯渇の悪食】。その撤廃から、数十年経っただけでこの状況まで回復出来たのなら、ある程度の指導を終えればいいかもしれない。
しかし、すぐに技術をものに出来るわけではないので……おおよそ、一か月くらいは滞在する予定だ。ザイルはどうするかわからないが、ルチャルの護衛をまだしたいのならしばらくいるのかもしれない。
あの森の中から、ゼスティア公国の関所に来るまで年齢差は大きいのに食事を与えたことで相当懐かれてしまったのだから。
「あ~、いい匂い。ルチャル、俺もこっちで食ってく~」
と、噂をしていたら風呂にでも入ったのかで……タオルをがしがし拭きながら、ザイルが食堂側に入って来た。その後ろでは疲れた表情のシュートやエクシスも風呂上りなのかでタオルを首にひっかけていたのだった。
「……お疲れのところを、さらに疲れさせたの?」
「軽い打ち合いしかしてねぇって」
「軽いって感じじゃなさそうだけど?」
「俺の相棒両方も使ってないない」
「ふぅ~ん?」
色々問い質したいところだが、食事の列が出来上がりそうなので仕方がないと提供側につくことにした。ザイルはもちろんといわんばかりに全種類ほしいと言ったがトレーにはぎりぎり乗るくらい。仕方ないと、ここはトレーをもうひとつ用意してやった。
次回は火曜日〜




