第15話 青年の弟子①と女性の弟子①
「サルシェ、ただいま」
「あら、おかえりなさい。マージュ」
とある山奥の一角に、ふたりの若い男女。
仲睦まじい様子だが、事実その通り『恋仲』同士の旅路だ。ただし、旅行ではなくきちんとした任務を果たすための、重要な旅の途中ではあるが。
「兎がいくつか狩れてね? 捌いてきたから、すぐにシチューとかに入れれると思うよ?」
「まあ、嬉しい。山兎のシチューは美味しいもの」
「ルチャルの得意料理だったね?」
「本当に。あの子はシュスイと二人で行ってしまったけれど」
「なに。筆頭弟子として、きちんと任務は出来る子さ」
「そうだけれど」
同じ師を持ち、同年代ではないものの……今はゼスティア公国で厄介になっているルチャルとは兄弟弟子のふたり。セルディアスから大きく離れ、今は別の国を目指しているところだ。セルディアスはここ数十年で同盟や友好関係を他国と築くことへ力を尽くし、祖の兄上である現国王もそれはまったく同じだった。
臣下としてでも、国を代表する使節団としてでもなく……職業としては、冒険者ともある意味肩を並べる『職人』として、皆それぞれ三世代目の役割を果たすのだ。ふたりは、その中でも自分たちより秀でていた幼い同士のことを必要以上に気にかけてはいたが……結局は『大丈夫』という答えに行き着いている。
それを何度か繰り返すくらい、『おっとりさん』なのだがこれでいて腕の立つ冒険者並みの実力保持者なのだ。
「ホムラ、ゼスティア、ソーウェンにラクトリマ……たくさんの国があるけど、僕たちは僕たちのペースで向かおう」
「ええ、そうね。せっかくルチャルのことを思い出したから、シチューも作っちゃいましょうか?」
「焼くのは僕がやるよ」
「ええ、お願い」
それぞれ、契約精霊に変換をお願いし、調理用の機材になってもらう。こんな山奥でも街のそれか王城以上のスキルを展開できるのは……ふたりの師である『リーシャ=コルク=アルフガーノ』が自身の異能を弟子らに伝授可能となったから。
祖が『幸福』なら、師は『幸運』。適性はもちろん必要だが、よほどのことがない限り弟子らには伝授できていた。一世代目は講師や城の職人になっているが、二世代目は今指導係がメイン。なので、比較的動ける三世代目の自分たちが使者として任命されたのだ。
年齢や性別、種族もばらばらなため、各国の対応を見るための……それこそ、神から言いつかった任務とも言われている。その真実を知るのは自分たち職人なのだ。
「炙り、終ったよ」
「ありがとう、マージュ」
サルシェが適当にある食材でシチューの具材を炒めているところに、マージュがさっと焼いた兎肉を投入。この方法を教えてくれたのも、自分たちよりずっと幼いルチャルだ。あの少女は、人の懐に入るのが上手いし、発想力が大人以上。
今頃、どのあたりで使命を果たそうとしているかとても楽しみに思っている。サルシェは、あく抜きをしてから……煮込むとき用に残しておいた牛乳を収納棚から取り出した。
収納棚があれど、時間経過は多少してしまうので悪くなりそうな食材は火を通すのが鉄則。これは、祖からの教えそのままだ。
味付けといっしょにとろみが出来てたら、軽く味見はした。肉の出汁と野菜の出汁がよく混ざり合い、美味しいシチューの味にはなっていたが。
まだまだ、最初に衝撃を受けたときの、ルチャルのシチューには程遠く感じてしまう。
とりあえず、この料理は完成だが。あの子なら、どんなパンで食べるかしら?とマージュと無限収納棚の中を検索して、合わせるパンを選んでいくことにした。
次回は土曜日〜




