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第二十話 北のブロック2


「リーダー、どうして此処に戻るのでしょうか?」

「そうだよ、アタイはやだね。わざわざ死ぬために戻るなんて」


「おそらく全て防ぎ切る事は出来ないだろう。それほどの数だった。あのブロックは捨てて逃げるしかないな。そのときに装甲車が必要だ」


「捨てるのですか……」

「被害が少なければ再建も難しくない。まずは住民達が生き残ることが重要なのだ。それよりも、村のほうにも群れがやってきてなければ良いが」


 それが一番の心配だった。

 果たしてあのバリケードでどれくらいのシーカーが防げるのだろうか。正規兵の数も少ない。住民たちの武装度が高い事がせめてもの救いか。


 四流村(しりゅうそん)に戻ると早速準備を開始した。装甲車に残されていた武器のほとんどを外にだし、少しでも村の武力強化を図る。あくまでも村の安全が優先だ。


「いいか、武器はここに置いておくのだ。こちらにも群れがやってくるかもしれんからな。北のブロックには私とルービックだけで向かう事にする。他のものは厳重に警戒を続けるのだ。それからキャス、万一群れがこちらに来て危険だと思ったらすぐに車を出して私たちを呼び戻しに来てくれ」


「え? えええぇぇぇ〜! そんな状況で車を出すなんてやだよ。大体、往復するのに何時間もかかるじゃん」

「我がマドゥの兵士達なら数時間くらい耐えてくれよう」

「アタイが途中でシーカーにやられちまうよ」

「お前の運転なら大丈夫だ。心配なら、兵士を一人連れて行け」


 何度か往復した時の運転をみる限りは問題ないだろう。

 キャスを無理やり納得させて北のブロックに向かおうとした時、住民に呼び止められた。

「リーダー、大変です。シーカーの群れが!」


急いで走って来たのだろう。住民は激しく息を切らしている。


「何だと? どれくらいだ?」

「良く分かりません。見張りが言うには、千を超えるのではないかと」


 くそっ。

 なんて事だ。


 こちら側にも群れが来てしまったのか……。

 マドゥの惨劇が脳裏をよぎる。


 あの時は迎撃する事を選択し、結果、ブロックが壊滅した。しかし、他の選択肢は無いに等しかった。住民の数が多すぎて逃げる事すら出来なかったのだ。


 今はどうか?

 装甲車が一台と、車が数台ある。逃走は可能だろう。


「ルービック、すぐに迎撃体制をとれ。奴等が来る西側に重点をおくのだ。キャス!お前は住民達と手分けして装甲車に物資を詰め込むんだ。すぐに逃げ出せるようにな。準備が出来次第、お前達も戦いに参加してくれ」


 以前から皆には話しを通しておいたのだ。シーカーの大群が攻めて来た場合は、逃走準備をしつつ迎え撃つと。その甲斐あってか、二人とも直ぐに行動に移ってくれた。兵や住民達にも大きな混乱は見られない。


 あとは、引き際さえ間違わなければ大丈夫だろう。

 ウォルツォーネは、まずは見張りの居る場所に急いだ。自分の目でシーカーの数を確かめる為だ。


「どうだ?」

「はい、おそらく変わりはありません。およそ千体ほどだと思われます」

「うむ、私にも見せてくれ」


 見張り台に据え付けられている望遠鏡から西側を覗く。

 確かに黒くうごめくものが見える。見張りが言うとおり、千体ほどだろう。この程度であれば、我がマドゥの兵士達であれば問題ないレベルだ。


 それが分かった事により、逆に迷いが生じることになった。北のブロックが気になって来たのだ。ここを兵達に任せて向かうべきだろうか?

 この数であれば、自分が居なくても対処できるだろう。間違いなく北のブロックの方が事態が深刻だ。それに、シティとかいう訳の分からない連中の存在もある。助けに行くべきだ。


 しかし再度、ウォルツォーネの脳裏にマドゥの惨劇が浮かび上がる。

 駄目だ。まずは村の安全確保のため、目の前の敵を殲滅することにしよう。


「ここへ到達するまで、およそ二時間というところか」

「おそらく。見通しの良い場所なので助かります」

「確かにな。発見してからこれだけの準備時間が持てるというのは大きい。よし、私は村に戻って出撃体制を整える。お前も適当な所で切り上げて村に戻るんだ。いいな」

「はっ。了解しました」


 遠くに黒くうごめいていた()は、次第に人の形となって迫ってきた。人の形をしているが、皮膚は半分くらい腐敗して剥がれ落ち、顔面も原型をとどめず、もはや男性なのか女性なのかすら判別が付かない。泥で出来た人形のほうがよっぽどマシだろう。


 肉眼で見えるようになると、さすがに住民達がざわめき立った。おそらく彼らにとってはシーカーの大群は初めての事だろう。いくら大丈夫だと言い聞かせたところで本能が恐怖に支配されるのは防ぎようがなかった。


「あ、あんた……。ものすごい量だよ……。大丈夫なんだろうね?」

 キャスティンも例外ではなく怯えている。

 今にも泣きだしそうだ。


「心配するなと言ったろう。我がマドゥの兵士達を信用するんだ」

「アタイらはバリケードの上から攻撃してればいいんだよね?」

「そうだ。兵士達と一緒に突撃するのは戦い慣れた者だけでよい。それ以外の者は、バリケードにて応戦してくれ。いいか、弾薬は節約するんだ。決して深刻な数ではない。落ち着いて近接武器で応対してくれ」


 千体であれば、そのままバリケードで防ぎながら応戦しても良かったが、ウォルツォーネは撃って出ることにした。囲まれてしまうのを避けたかったからだ。囲まれてしまうと、更に多くの群れがやってきた時に逃げる事が難しくなる。




 数時間後、四流村(しりゅうそん)に勝利の雄叫びが響き渡った。

 幸い、後続のシーカーは無かった。最初に見えた千体のみだったようだ。


 ウォルツォーネもいつも通り最前線で戦った。ルービックと共に。二人でおよそ半数くらいは殲滅したのではないだろうか。兵士達を引き連れて二人揃って最前線に立てば、もはや千体程度のシーカーは恐るるに足りなかった。


 軽い。

 これほどまでに軽かったか。まるで木の葉で出来た塊のようだった。相手は避ける事すらしない。

サエキの戦士達と比べると、単なる木偶(でく)の棒だ。


 あらためて戦士達の存在に恐怖せざるを得なかった。戦士一体で数百のシーカーに相当する。もし彼らが本気で四流村(しりゅうそん)を攻めたなら、どう防げばよいのか。


 重火器の配備を急がねばならない。

 ウォルツォーネは最前線でシーカーをなぎ払いながら、そんな事を考えていた。


「あんた、すごいじゃないか!」

 殲滅を終えて村に戻ると、キャスティンが驚いた表情で待っていた。

 まるで戦車のようだよ、と興奮した面持ちだ。


「あたいらが束になってかかっても歯が立たないね。あんたが(まさ)しくボスだよ」

「ボスではない、リーダーだと何度言えば……」

「はぁーい」


 他の住民達もお祭り騒ぎだ。皆、驚きと喜びに満ちた表情でウォルツォーネのことを称えている。


 その光景が、数年前に起こった戦争のときの記憶を呼び覚ました。

圧倒的な兵力を伴う敵国を見事に打ち破り、無事マドゥに凱旋したときの事だ。規模は違えど、国を懸けての戦争と言う意味では大きな違いはない。


 今この時をもって、真のリーダーと認められたようだ。


「ようやくリーダーだと認めてもらったところで、早速だが北のブロックに向かうぞ」

「え?」

「え?ではない。時間がないのだ」

「少しくらい休憩を……」

「駄目だ。北のブロックは、更に大量の群れに襲われている。もう手遅れかもしれんが、やるだけの事はやるんだ。とにかく装甲車から物資を降ろしてくれ」


 キャスティンは文句を言いながらも他の住民と手分けして荷降ろしを行ってくれた。


 はたして大丈夫だろうか。かなりの時間をロスしてしまった。あの時に見えた数千のシーカーは間違いなく到達しているだろう。その後ろにどれだけの数が控えていたのかも分からない。第一陣、第二陣、と時間を置いて波のように流れてくる事も少なくない。


          ◆


 ゼロの人工知能は博士からの指示を待っていた。

 第一陣の群れは大きな損害なく収めることができた。その後、第二陣の群れの先頭が二十三分十八秒で到達する見込みだ。


 博士から『撤退』の指示は出ていない。ということは、このまま引き続いてシーカーの群れを殲滅することになる。


 だが、三十分前には検知できてなかった群れをセンサーは検出していた。数を計算しなおさなければならない。


「博士。新たな群れを検出しました。およそ七千体が加わり、合計で一万二千体です」

「少し多いか。対応できそうか?」

「我々だけでは被害が出る可能性があります。シティのマシンが裏切らずに戦えば問題ないでしょう」

「それだけは気をつけなければならんな。とにかく不審な動きをしないか常に見張るんだ」

「了解しました。アトム、お前はシーカーの殲滅を優先するんだ。ガンマ、お前はシティの連中の動向に注意を払え」

「了解」


 シーカーの大群は、シティのマシン達も検知しているはずだ。お互いの利害が一致する間、すなわちシーカーの数が多い間は裏切ることはないだろう。


 ある程度殲滅するまでは、ゼロも前線にて戦闘に加わった。万を超える数だとしても、数十体のマシンにとってはそれほど脅威ではない。マシンであるがゆえ、恐怖もなく計算しつくされた合理的な動きでシーカーの排除にあたることができる。


 シティのマシン達と協力し、横一列になってシーカーを迎え撃つ。


 この布陣を保っている限り安泰だ。

 いかにマシンと言えど何十体にのしかかられて身動きがとれなくなってしまうと危険である。こうして前面の敵だけに集中できる布陣を保つことが一番重要であった。


 ただし、それも残り千体を切るまでの間だけだ。おおよそ殲滅が完了し、戦局に余裕が出てくると別の問題が浮上してくる。


 シティの連中だ。


 そろそろ最前線から離脱して、彼らの動向に注意を払わなければならない。

 が、ゼロの計算は甘かった。


 先に彼らの方が動いていたのである。

 四体のマシンがガンマに攻撃を仕掛けていた。


「ガンマ、防御に徹しろ!すぐに助けに入る。アトムは博士を連れてから来い!」

 指示を出しながらガンマのもとへ向かう。


 ゼロ、アトム、ガンマは博士がシティから逃走するために造った特別仕様のマシンだ。通常造られている量産タイプよりは性能が数段上である。


 まず使っているチップ自体が高性能だ。チップは非常に希薄で高価なため、量産タイプに使用しているチップは廉価版である。命令どおり母体を稼動させる事で精一杯だ。緻密な計算や人間とのコミュニケーションをとる事はできない。


 特別仕様のチップは非常に高性能で、ある程度相手の動きを予測し、学習し、何よりも計算速度が段違いのため動き自体が高速だ。人間でいうと訓練を受けた兵士程度の動きが可能となっている。


 動きだけで見ても、熟練の兵士と素人の人間が戦うに等しい開きがある。

 加えて肢体に利用している各パーツの強度も大きく異なる。一対一の対決では話にならないだろう。


 しかし、さすがに四体のマシンが相手では厳しい。


 これを合図に、シティのマシンは一斉にゼロ達に襲い掛かってきた。

 残りのシーカーは、ゼロ達を仕留めた後でゆっくり排除することが可能と判断したのだろう。ゼロに感情と言うものがあれば、計算が甘かった事を後悔したに違いない。


 しかしマシンであるゼロには、そのような感情はなかった。淡々と、現在取りうる事のできる最善策を行うのみだ。


 最優先事項は博士の命令である。例えゼロ自身を破壊しろという命令だったとしても、それを守るのだ。これはチップにハードコーディングされているため、変更される事はない。以前に製造したイブというマシンは、自我を尊重するようプログラムしたために失敗したと博士は言っていた。その経験を活かして行った措置とのことだ。


次の優先事項は博士から必要に応じて指示される。現在は、博士の安全の確保である。


 シティのマシンが標的をゼロ達に変更したため、シーカーを排除するものが居なくなった。そのためシーカーは住民を襲いだすことだろう。しかし優先するは博士である。住民の命は諦めるしかない。


 防御に徹していたガンマは、ゼロが駆けつけるまで何とか持ちこたえてくれていた。

「よし、攻撃に出るぞ。作戦は無しだ」


 真っ向勝負でも問題ない。元々の性能が違うからだ。二体のマシンが同時にゼロに攻撃を仕掛けてくるが、問題なくがっちりと受け止めた。左手で掴んだ方のマシンを右斜め前に投げ飛ばすと、両腕でもう一体のマシンの腕を捻り上げる。


 ガキッという金属音が相手の右腕から発せられた。

 そのまま腕を引きちぎり、フルパワーで頭部を殴りつける。量産タイプは頭部の強度が足りないため、これで一時的に動作しなくなるだろう。


 この隙にもう一体のマシンを仕留める事にする。

 もう一体のマシンは、更に脆かった。既に何らかのダメージを受けていたのかもしれない。


 昨日は先に博士を人質に取られてしまったため身動きができなかったが、今は何の足かせも無く動くことが出来る。特別仕様のゼロ達三体の前には、シティのマシンは敵ではなかった。


 素早く確実に仕事をこなすゼロ達の前に、ガラクタと化したパーツが積みあがっていく。


「残念だったな、私のマシン達は量産タイプとは違うのだよ」

 ほぼ全てのマシンについて破壊が完了し、博士が勝利宣言を行った。シティの隊長は苦々しい表情をしたままずっとこちらを睨んでいる。

 完全に計算違いといったところか。マシンの性能がここまで異なるとは想定してなかったのだろう。


 アトム、ガンマは残りのシーカー殲滅に戻し、隊長を縛り上げて装甲車に詰め込んだ。ほぼ利用価値は無いと思われるが、念のため連行しようとの博士の意向であった。


「ここはもうダメだな」


シティの連中のおかげでブロックの住民は全滅してしまった。このまま此処に留まるか、四流村(しりゅうそん)に身を寄せるか。


 博士はゼロの意見を求めてきた。

「生活するには四流村(しりゅうそん)が適していると考えますが、此処には新たにシティのマシンが向かっているはずです。四流村(しりゅうそん)が発見されるのも時間の問題でしょう。この場所を離れるのが得策かと思われます」


「そうだな。更に西に逃げるしかないか」

「はい。東からはシティの追っ手がありますから。しかしながら、西からはシーカーの大群が来ているとの情報もあります。お気を付けください」

「ああ。シティの連中も言っていたな。まあ、お前達がいるから大丈夫だとは思うが。万一ということもある。何か異常を感じたらすぐに報告してくれ」


 この分だと、研究の続きができるのはいつになることやら……と、博士は呟きながら装甲車に乗り込んだ。ゼロも操縦席に座るとゆっくりとアクセルを踏み込んだ。


 こんな場所までシティの追っ手が来るとは想定外だった。実際には追っ手ではなく前線基地を作る為だったのだが、発見されたからには追っ手が来る可能性は高いと判断せざるを得ない。派遣した戦士達が壊滅したとなると、尚更だろう。


「イブは本当に生きているのだろうか……」

 質問なのか、独り言なのか微妙な言い方で博士が呟いた。

 博士は前方を向いたままで、視線も遥か遠くを指しているため独り言の可能性もある。


四流村(しりゅうそん)のリーダーが言っていた女性のマシンについてはイブと特徴が一致します。しかし、男性のマシンに関する情報がありません。シティ以外でも同様のマシンが作成されているというのは考えにくいことですが、いずれにしても現時点での判断は出来ないでしょう」


 念のため回答しておいた。が、その言葉が博士の頭に届いたのかどうかは分からなかった。博士はそのまま目を閉じてしまっていた。


 まだ正確な行き先についての指示はもらっていない。確認する必要があったのだが、博士の疲労が濃い状態だったので、それはまた後ほどでよいだろう。とりあえずはシティの追っ手が掛からないと思われる場所まで移動できれば良い。


          ◆


「間に合わないだろうな……」

 北のブロックに向かう途中で、ウォルツォーネは小さく(つぶや)いてしまう。


「何か?」

「何でもない」

 幸いにも運転席のルービックには聞き取れなかったようだ。


「シティですが、確か『上海・西エリア』にある大規模なブロックだったと思います」

「知っているのか?」

「詳しくは知りません。昔、シティから移動してきた人物から食材を分けてもらった事があります。食べたこともないような不思議な味でした。世界が崩壊する前の文明がある程度残されているらしく、精密機器等も製造されていると言っていた記憶があります」


 文明は完全に滅びてしまったと思っていたが、そうではなかったのか。


 しかし、そのシティが何故に野蛮な侵略まがいの事をするのか。


 シーカーの大群に対抗するためと言っていた。

 それだけの為に?


「そんな高度な文明を持った連中なら武器もさぞかし発達しているだろうに、奴らは素手だったな」

「温存しているだけかもしれません。素手でも十分な戦力でしたから」

「そうだな。であれば、あのシーカーの大群も殲滅できている可能性があるな」


 あまり歓迎できる事ではないかもしれないが。


 不安な気持ちと共に北のブロックに到着すると、辺りは静まり返っていた。

 ブロック周辺には大量の残骸が積み重なっている。


「こ、これは……」

「かなりの大群だったようですね。数千どころか、万は軽く超えているでしょう」


 やはり間に合わなかったのか。

 シティの文明を持ってしても太刀打ちできないのか。


 我がマドゥの城壁であれば何とか耐えれたかもしれない。しかし、この貧弱なバリケードでは全く防ぎきる事ができなかったようだ。ブロック内部にも大量の残骸が残されていた。侵入を許してしまい、そのまま応戦したが耐え切れなかったのだろう。


「シティの連中が使っていた装甲車が見当たりません」

「くっ。逃げたと言うのか。ここの住民を見捨てて」

「そうかもしれません」


 しかし、サエキの戦士たちは本当に壊滅してしまったのだろうか。あの強さなら逃げ通すことは出来たかもしれない。


 それは無いか。曲がりなりにもリーダー代理だ。自分なら住民と運命を共にする。


「リーダー、これを見てください」


 ルービックが何かを見つけたようだ。

 それは腕だった。途中でちぎれた腕だ。


「シーカーに食いちぎられたんだろう。特にめずらしくもない」

「いえ、内部をよくご覧ください。明らかに人間のものではありません」


 彼女はそう言って皮膚を半分くらい剥ぎ取った。


 それは変わった物体(・・)だった。

 表面は確かに人間の腕そのものなのだが、よく見ると内部は異常だ。まず中心には黒い骨がある。そもそも骨はこんな色をしていただろうか。


 そして、筋肉にあたる部分が全く存在しないのだ。代わりに細い鉄パイプのようなものが数本存在している。


「金属……か?」

「そのようです。埋め込まれた、というよりは金属で作られていると言ったほうが適切かと」


 金属で作られている?

 どういう事だ。


 ……マシン!

 突如、頭の中を稲妻が走りぬけたように閃いた。



 シティの人間は確かにそう呼んでいた。

 まさかそんな……。


 ルービックも(うなづ)いている。


 あれは比喩ではなく、本当に言葉の通りだったのだ。

 ウォルツォーネは大量の残骸のなかで暫く愕然としていた。



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