募集
「申請が通ったわ」
数日後、普通科の解剖学研究室を訪れた二人へ、ヴィオラは一枚の許可書を差し出した。学院印の押された書類には研究責任者としてヴィオラ・シュタインの名が記され、その下にアレクシスの名前が続いている。
アレクシスは内容へ目を通し、小さく息を吐いた。
「思っていたより早かったですね」
「研究内容を書き換えたもの。魔法学の話をすれば魔法科へ回されるし、器官の存在を証明するなんて書けば却下されるわ。解剖学として身体変化を観察する、それだけよ」
ヴィオラは許可書を受け取ると、そのまま壁へ貼り付けた。目的が何であれ、学院が認めたのは身体観察であり、新しい魔法理論ではない。その線引きだけは最後まで崩さなかった。
「まずはアレクシスの検査ですか」
「それも必要だけど、先に人数を集めましょう」
ヴィオラは机の上から紙束を取り上げた。被験者募集要項と書かれたその用紙には、参加条件と実施期間だけが簡潔にまとめられている。
「低魔力維持訓練による魔力回復速度への影響を調べる研究として、被験者を募集するわ」
募集要項には、能力向上は保証しないこと、途中で参加を中止させる場合があることが、他の項目よりも目立つよう記されている。
「魔力の増加を期待して集まる者もいるでしょう」
「期待するのは自由よ。ただ、少なくとも他の生徒で再現性が確認されるまでは、あくまで魔力回復速度への影響調査としたほうがいいでしょうね」
そう言うとヴィオラはルカへ募集要項を手渡した。
「じゃあ、募集はお願いね」
「俺たちが掲示するんですか」
「魔法科の生徒を集めるなら、その方が早いでしょう?」
もっともな理由だった。
◆
魔法科棟の掲示板へ募集要項を貼ると、予想以上に人が集まった。
「アレクシス先輩が指導するのか」
「研究協力者募集だって」
「弱い魔法を維持するだけでいいのか?」
興味を示す者もいれば、首を傾げる者もいる。立ち止まる生徒は次第に増え、小さな人だかりができていた。
アレクシスは質問へ一つだけ答える。
「詳細は説明会で話す」
その一言だけで十分だった。
説明会の日程を書き写す者、友人を呼びに走る者、そのまま立ち去る者。反応は様々だったが、研究に興味を持つ生徒が想像以上に多いことだけは確かだった。
人波が落ち着いたところで、ルカが小さく呟く。
「学院の生徒は、強くなる可能性を見逃さない」
保証はない。
結果も分からない。
それでも挑戦したいと思う者は少なくなかった。
翌日の放課後。
第一小講義室で、被験者募集の説明会が開かれることになった。




