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夜澄みの蒼月、闇堕ち少女の夢革命  作者: 民折功利
月下星王大戦

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331-星狩りアシュラ

後編


 土が焼け、弾け飛び。

 草が切られて空を舞い。

 木は抉られ吹き飛んで。

 山が、荘厳な自然美を描いていた山脈が───凄まじい轟音と悲鳴を奏でて、大きく崩れる。

 ここは星霜山脈チェインフォレスター。

 魔法少女のいない戦場。夢星同盟である元将星、側近、三銃士は、今。


『グルルッ!』

「悪ぃなナシラ、もっと速度上げてくれ!」

「うわわ、また来たッ!?掠った!?」

「チッ、マズイな…」


 星狼という巨体の獣となったナシラの背に、カリプスとダビーが乗って。背後から飛んでくる音速の矢を、全身を捩ってなんとか回避。全力で山肌を駆けるナシラの隣で、翼を失ったリーサルドラゴンが並走。背後を睨むビルは、空気を引き裂く矢をなんとか回避に成功。

 背後に迫る怪物から、彼らは逃げることしかできない。

 全速力で駆けているが……山が切り崩される速度の方が遥かに上回る。


 どれだけ距離を取ろうと……凄まじい熱波と共に、紅き闘馬は追いかけてくる。

 逃げる術は、ない。


「───逃げ場なんて、ないよ?」


 轟音を立てて、逃げ惑う彼らの背後に落ちてきたのは、将星サジタリウス。命燈魔法によって四つ腕となり、鬼神の如き怪物となった修羅が、超強化された馬脚で跳躍し、あっという間にカリプスたちに追いついた。

 一瞬にして距離を詰めたサジタリウスは、怪腕の一つに携えた薙刀を、荒く振るう。

 彼の生命力を具象化した武器、その一つ。

 命刀“ホシナギ”。その一薙ぎは、ナシラを縦に両断して殺さんと迫る。


「させっかよッ!」

【グォォォォォン───ッ!!】

『バウッ!?』

「ビル!?」


 避けきれない速度の刃に、ナシラは無防備を晒すが……彼女の狼体に、リーサルドラゴンが体当たり。横合いから吹き飛ばされた彼女と、その背に乗る異星人の代わりに、石竜の胴体が両断された。

 あっさりと、一息に。

 断末魔を上げる暇もなく、Z・アクゥームは真っ二つに縦に裂けた。


「捨て身かい?」

「取捨選択だよ───無双魔法ッ!<ウェポーナイズ>!逃げんのは終わりだッ!」

「へぇ?」


 残骸に手を触れたビルは、二つに裂けた石竜を武器へと変化させる。灰色の無骨な双剣を作り上げ、悠然と構えるサジタリウスに突貫する。

 迷いはない。足取りに淀みはない。

 数分逃げ回っただけで、星霜山脈は見る影もないぐらい破壊された。岩盤は抉られ、サジタリウスの熱気で草木が燃えた。逃げれたのは、サジタリウスが反撃の隙を作っていたから。隙を作り、誘い込んで、その攻撃を払い除け。

 全て無意味だと教える為の、罠だった。

 そうして絶望感を与えてくる敵との逃走劇を、これ以上続けるわけにも行かず。


 決死の覚悟で、鬼神に挑む。


「ッ、オラァ!!」

「ふふっ、軽い軽い」

「うおっ!?」


 双剣による連続斬撃を、サジタリウスは腕を一本翳しただけで防ぎ切る。一切の切り傷が入らない剛体は、赤黒いオーラを纏っている影響か異様に硬く、そして、攻撃した双剣の刃を少し刃毀れさせた。

 それでも、負けじと衝撃を打ち付けたが……

 サジタリウスは笑顔で、怪腕の一つが握る魔剣を空へと振り上げ、地面に真っ直ぐ叩きつける。

 命剣“ホシヅキ”。

 単純すぎる魔剣の叩き付けは、地面を陥没させ、大地を激しく揺らし、崩壊させ。自分に攻撃されると思っていたビルは足場を崩され、バランスを崩す。

 その隙だけで、十分だった。


「天域闘舞───<カウス・テレベッルム>」


 踊るように。

 舞うように。

 命刀、命剣、弓、そして拳。四本の手腕と武器、そして身体全てを使った物理連撃。巨体から繰り出される技は、ビルの頭蓋を狙うが……

 咄嗟に双剣を交叉させ、防御。

 意味がないと内心わかっていながらも、ビルに選択肢はなく。


「クッソッ!」


 竜の双剣は呆気なく砕かれ、サジタリウスの拳がビルの右肩に直撃する。辛うじて頭部を避けたビルだったが……その代償は、かなり重く。

 パンチ一発で、右肩は貫通。

 力無く、胴体から切り離された右腕が空を舞い、血潮を噴く。


「がァっ!?」

「魔力防御が速かったね。あと少し足りなったら、範囲はもっと広かった。やるじゃないか」

「ッ……嬉しくともなんとも、ねェよッ!」

「おや」


 激痛に喘ぐビルは、まだ左手に残っていた折れた剣を、投げやりにサジタリウスへ投げる。その投擲には、なんのダメージもないが……

 武器化した竜剣の内部魔力が、勢いよく破裂。

 折れた刀身には見合わぬ大規模高威力な爆発をもって、サジタリウスの目を眩ませる。


 そのままビルは地面を転がり、駆け寄ってきたナシラに咥えられて脱出。


「悪りぃ…」

『クゥーン…』

「大丈夫だ!お陰で準備ができた!ダビー!!」

「はいッ!」


 再度遁走するナシラの背の上で、ビルの時間稼ぎの間に準備を済ませたダビーが、鉄工魔法で作ったモノ。

 それは、巨大な銀の砲門。

 ダビーの背丈を優に超える兵器には、砲身にたっぷりと呪詛が詰め込まれている。カリプスの死の森をふんだんに含んだ、呪詛砲撃。

 連撃仕様の呪詛砲を、斬撃と弓矢と共に追いかけてくる鬼神に手向ける。


「工夫したね」

「論評すんなッ!撃てッ!」

「発射ぁ!」


ズドンッッ!!


 凝縮された呪詛が、黒々と淀んだ砲弾となって放たれ、サジタリウスの眼前まで一瞬で届く。その加速度に鬼神は目を見張りながら、冷静に対処。

 呪いの塊を一刀のもとに切り伏せ、両断。

 左右に裂けた呪いの被弾も恐れず、赤黒いオーラで全て無効化する。


「無駄だよ。全て。諦めるんだ」


 砲撃の連射も、命剣と命刀に斬られ、弓に薙ぎ払われ、赤黒いオーラに遮られる。あっさりと対処してみせたサジタリウスは、そのままナシラたちへ攻撃。

 絶え間なく飛来する物理攻撃の数々を、ナシラは器用に回避。岩肌を駆け抜け、ぬかるみを飛び越え、攻撃が己と主人たちに当たらないように必死に逃げる。

 ダビーも負けじと砲撃するが、効果はいまひとつ。

 そしてサジタリウスは、山の麓の方へと必死に逃げ惑うナシラに追いつく。


『ッ!』

「諦めも特には肝心だ。逃げたって、誰も君たちに指差す心無き者は、いないと思うよ?」

「そんなことねェよ!勝手に決めつけんな!魔法少女なら絶対やんぞ!?あとレオード!!」

「励ましのつもりだったんだけど……まぁ、いいや。さ、死のっか」


 命剣を振り上げたサジタリウスに、カリプスが前に出てナシラを守る。ダビーとビルを背にした彼は、折れた剣でサジタリウスの斬撃を受け止める。

 なんとか、弾き飛ばそうとするも……

 そう上手くは行かず。サジタリウスの剛力には勝てず、命剣は双剣を砕き。


 魔力強化されたカリプスの左腕を、ザックリと、綺麗に切り落とす。


「ぐあっ!?」

「ご主人様っ!?」

『ガウ!?』

「仲間を守る心意気は評価するけど……僕には届かない。残念だったね?」

「ナメんな!」


 呪詛が吹き荒ぶ。

 鉄骨が乱立し。

 螺旋が山を削る。

 飛散する破片を武器に変えて、闘馬に消しかかるが……鬼神は止まらず。土が捲れ上がり、木が根から吹き飛び、山が切り崩れていく。一方的な殺戮に、狩人の真骨頂に、夢星同盟は為す術もない。

 赤黒い闘気が、全てを滅ぼす。

 サジタリウスの慈悲なき猛攻で、カリプスは吹き飛び、ナシラは足を失い、ダビーは腕を斬られ、ビルは下半身を潰される。


「がァっ!?」

「きゃぅ!?」

「君たちの頼みの綱なら、その重傷も治せる筈だ。実際、今の魔法技術ならそれを可能にしている。正しく神業……正直、僕たちの暗黒銀河にも欲しいぐらいだよ」

「ハァ、ハァ…薬草院だかがあんだろ…」

「部位欠損は流石にね?」

「ガハッ!!」


 淡々と語るサジタリウスを見上げて、カリプスは歯噛みする。出血による呪いの流出を警戒してか、サジタリウスからの攻撃は打撃がほとんど。唯一斬られた左腕は、熱で強制的に焼かれ、呪詛は吐き出せず。

 血反吐程度では、サジタリウスを呪えない。

 自分よりも傷ついたビルに、そして、一矢報いることもできない自分に、申し訳なさと悔しさで、胸をいっぱいにさせながら。


「がァッ!!」


 カリプスは単騎で突進。

 反射で放たれた弓矢に脇腹を抉られながら、敵の胴体に噛み付く。赤黒いオーラに全身を焼かれ、あまりにも硬い身体に歯が折れるが、諦めず。

 なんとか、歯を身体に食い込ませ……

 直接、死の森の呪詛を。体内に注ぎ込むことで、鬼神の躍進を止めようと。


 だが。


「痛いね……でも、それだけだ!」


 身体の中を呪いに蝕まれる感覚に苛まれるが、決して、それが死に繋がることはなく。サジタリウスは余裕の笑みを見せながら、カリプスの首を掴み、引き剥がす。

 その際、自分の腹の肉も幾分か削がれたが……

 修羅の形態になった以上、痛みを感じなくなったのか。サジタリウスは好青年じみた笑みを浮かべたまま、掴んだ黒山羊を投球する。


 人形態に戻ったナシラの足の止血と、ビルに応急処置の治癒ポーションをしていたダビーへ、カリプスが勢いよく突っ込む。


「あだぁ!?」

「ぶぎゃっ!?」

「すまッ、ゲホッ!ゴホッ……クソッ、ちっとは苦しめやクソ野郎がッ…」

「ホントにな…」


 4人共にボロボロ。

 死にかけの敵対者を、静かに歩み寄ったサジタリウスは見下ろす。山のような出で立ちの怪物は、悠然と見上げる彼らに聳え立つ。

 そこにあるのは、勝者の微笑み。

 彼らには何もできないと、誰がどう見てもわかりきった結論である。


「もう限界そうだね」

「勝手に決め付けてんじゃねェよ…」

「そう焦るもんじゃないよ。なにせ……君たちの救いが、どうやら来たようだし」

「あ?」


 徐ろに天を見上げたサジタリウスは、意図的にカリプスたちから離れ、距離を取る。

 頭上に輝く白金の光。

 流星の如き光と共に───夢星にとっての英雄が、宙を真っ直ぐ貫き。


 茫然と見上げる仲間たちの傍に、極光を伴って。彼女は舞い降りる。


「───光魔法<セイクリッド・サークル>」


 彼女の着地と同時に、翠色の魔法陣が大きく展開され。仲間たちを、そして、サジタリウスをも巻き込んだ、高速治癒の光が辺りに充満する。

 一瞬にして、カリプス、ダビー、ナシラ、ビルの身体が癒えていく。


 怪我が治る。

 深手を負わされた夢星同盟たちの身体が、元の傷のない綺麗な身体へ修復されていく。失った血も補充され、浄化され、折れた骨は元の形に戻り、断裂した筋肉も、失った手足も下半身も、正しく治る。

 五体満足に再生しつつある仲間たちの、驚きの目。

 それら全てを無視する形で、サジタリウスの前に立つ、極光の魔法少女。


「お待たせ」


 極光が煌めく。

 陽光が揺らめき。

 聖光が輝く。


 夢星同盟の最終兵器───リリーライトが、星霜山脈に降り立った。


第二ラウンド

蒼月vs天魚雷神

極光vs天弓闘馬

祝福・彗星・花園vs魔壊暴牛

力天使・虚雫・歪夢・赤銅vs鯨貪呑禍

魔蠍狠妖vs翡役淵底

死者組vs画領転醒

夢貌の災神vs星喰い

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