番外編 - 魔法少女のNew Year's Day
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
毎日小説投稿生活、335日目です。あともう少しで投稿を初めて一年が経ちます。我ながらよく続いてますよね……重ね重ね、応援ありがとうございます。
新年もラピスの物語を、完結まで連続投稿を頑張る作者をよろしくお願いいたします。
「新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!!」
「あけおめことよろでよくない?」
「親しき仲にも礼儀ありぽふ!」
「そっかぁ」
やって来ました1/1。ハッピーニューイヤーをテレビのカウントダウンに合わせて叫び、年越しそばを食べてまた爆睡をかました魔法少女一行。
朝になり、昼近く。眠気を覚ました後輩たちと一緒に、僕たちは初詣に来ていた。
と言っても、来てるのは極一部を除く女性陣だけ。
付き合いの悪いメアリーとルイユは来ない。メアリーは兎も角、ルイユはただの出不精だ。噂に聞いた新年最初の混み具合に恐れ慄いたらしい。
……今思うと、僕も拒否ればよかった。確実に無理矢理連行されるだろうけど。
「思ったより混んでる…」
夢ヶ丘で一番大きな神社。瑜夢神社。新年のあれこれでやってきたそこは、凄まじい人集りで目眩がしそうな程、老若男女がごった返していた。
人酔いしそう。寂れた神社行きゃよかった。
……それはそれで悪目立ちして印象に残っちゃうのか。やめとこ。
「並ぼ!」
僕たちを牽引するのは、振袖を着た穂花ちゃん。彼女のイメージカラーを薄めた淡いピンクと、純心さを表現した真っ白な色をベースにした振袖。布地には同系色の可愛い花々が幾つも散りばめられている。
全体的にかわいいヤツだ。
他の子もそんな感じのカラーかな。蒼生ちゃんは藍色、きららちゃんは黄色、ほーちゃんは紅白、リデルは黒色のかわいいやつ、グゥは赤色、メードは水色、寝子は桃色、晶は薄紫色、叶華先輩は白と金色、鉄架先輩は灰色、祀里先輩は紅、ひかり先輩は謎のカラフル、未来は黄緑……
うん、色彩豊か。こんなあるんだねぇ。
ちなみに僕は黒色をベースに青を差した振袖だ。強引に着せられた。月の紋様があって綺麗なのが、僕っぽいから着てあげたけど。
似合ってるでしょ。
「髪の毛の飾りズレてるよ」
……月読ってかっこいいよね。それイメージした髪飾り用意しました。
自前で。
「それにしても、すごい賑わいだね…」
「私も来るの久しぶりだけど、結構昔から人多いよねぇ。スリとかすごそう」
「その発想に行く時点で野蛮だよお姉ちゃん」
「ひっどい!」
社殿まで続く参道に並んで、お賽銭するのを待つ。結構長蛇の列だから、待ち時間は長そう。
……こら、玉砂利蹴らないの。
グゥが真似するでしょ。女王の威厳ってのをもうちょい見せてよね。
結局石蹴りで遊び始めたお子様は抱っこで確保した。
僕がリデル、ほーちゃんがグゥを抱き上げている。これ意外と温いな……寒空の下の湯たんぽにちょうどいいや。
重くないし、このまま捕まえとこ。
おい不服そうな顔すんなよ。
「ぐぬぬ…」
「ぐぅ!」
「いいよ〜、はーい、ぎゅ〜」
「きゃぁ〜♪」
「!?」
リデルと一緒にびっくりしちゃった……オマエ、そんな声出せるんかい。抱き締められてそんな喜ぶのか……結構人間性というか、そーゆーのを学習し始めたよね、グゥ。
多分、言動と存在感以外は近しくなるんじゃ……
この言い方だとニンゲンです!って自己主張してる知能高めのバケモノができあがるだけじゃん。
うちの子は悪夢なだけでバケモノじゃないんです……
ちょっと将星とか発狂させて宇宙を滅茶苦茶にしかけた実績があるだけで……
……リデルもやってあげた方が喜ぶのかな。精神年齢、そんぐらいでしょ。
「ナメるなよ阿呆」
侮辱罪が適用されました。
でも普段からそんな感じじゃん。新年一発目だけどさ、そこら辺は正直に行くよ。嘘はよくないからね!オマエはそれぐらいのガキだ。
異論は認めぬ。
ガヤガヤ
ワイワイ
……賑やかだ。本当に。子供たちの元気な声とか、若いカップルのぶち壊したくなる笑い声とか、学生のうるさい喋り声とか、老夫婦の穏やかな会話とか……
二年前じゃ考えられない光景が、ここに広がっている。
こんな人の集まり、悪夢の格好の餌。怪人が来て人質になるか、悪夢の檻に閉じ込めてアクゥームにされるか……その二択しかない。
でも、今は違う。もう違くなった。
今もまだ、悪夢の脅威はあるけれど。統制されたのなら大丈夫、なんて思考なのか。そこはよくわからないけど、時代が変わった、といった見方でいいものなのか。
……感慨深く思えばいいのか、鬱陶しいと思えばいいのやら。
「頑張った甲斐があるね」
「……主に僕が頑張ってるからでは?」
「そうかもしれないね。否定はできないなぁ……なんか、納得いかないけど」
「なんでさ」
そう軽く愚痴を言い合いながら、暇になって僕の背中を突き始めた晶や未来の相手もしてやる。ガキンチョ共め。やり方がガキなんだよ……
スマホで暇潰してる先輩たちを見習え。
なんで僕が全員の保護者役みたいな立ち位置にいなきゃいけないんだよ。相変わらずのことだけど納得いかない。年長者鉄架が頼りにならんのが悪い。
恨み辛み八割込めの視線をぶつけている道中、手水舎があるところに差し掛かったので、そこで一旦手を清めて、なんとなーく浄化された気分になる。
うん、悪夢は浄化されません。
こーゆー恒例行事も危うく吹き飛ぶとこだったの、本当怖いよね悪夢って。
「うーちゃん何お願いする〜?」
「世界平和」
「ぜっっったい嘘だ。建前であろうとそんな他所様の為に頑張るわけないじゃん……あー、わかった!自分が好きに動きたいからだ?今物騒だもんね」
「全解説やめてくんない?オマエのお願い破綻するように祈ってやろうか」
「ごめんなさい」
祈って平和になるんならそれに越したことないだろ。
列はどんどん前へ前へと進んでいく。お賽銭を投げて、鐘をガランガランと鳴らして。和気藹々と談笑する一般人たちの声は、悪夢に染まった僕でも煩わしくなく。
平和だなぁ、といった在り来りな感想が前に出る。
それを作り上げたのが、僕とほーちゃんであり、後輩の子達の力だと思うと……まぁ、悪くはない。僕は一時的に悪化させた自信があるけど。
治安がある程度よくなったのはいいことだ。
……おっと。感慨に耽ってる間に、僕たちの順番が近くなったみたいだ。
「小銭ちょうだい」
「き、君たちもがめついなぁ……五円玉でいいんだっけ?ご縁がありますようにとかなんとか」
「ちゃんと人数分あるのか?」
「いや先輩たちは自分で用意しろや……ま、こんなこともあろうかと買い物の度に残しておきました」
「流っ石〜」
……こういうマメなとこが任せっきりにされる原因だと思うのは、気の所為?
気にしなかったことにしよう。
別に、頼られるのは悪いことじゃないし?限度があれば許してやらんこともない。さっき怒ってた気がするけど、無かったことにしよう。
僕は生粋の平和主義者。ここは刹那の時間でもみんなに優しくして、好感度を稼いでおこう。新年から善行を積む女なのだ、僕は。
えーっと、人数は……16人か。ぽふるん入れて17枚。あ、ハット・アクゥームは……いる?いらないよね?いらないって言え。
【ハッ!?】
「冗談だよ」
そんな抗議する目で見なくても……僕ら一心同体の半身なんだから、別にいいじゃんね。
身バレ必須存在を認識阻害して連れてってるんだから、少しは憂慮しろよな。これ以上やったらペット虐待で通報されるからやんないけど。今のこいつ、犬に見えるような魔法かかってるから。
……それを逆手に取ってる?こいつ、やるな。我ながらムカつく帽子だ。
「ん、もうか」
一歩二歩、列に沿って歩き続け。漸く、社殿の賽銭箱とご対面。こっそり箱の中身を覗いて……わぁ、すんごい量入ってんな。初詣効果すごっ。
お札も入ってんのか。ご利益を求めてるのか、信心深い御仁なのか。いや、そういえば万時円満って語呂合わせの縁起があった気がする。それか。
ふむ。
二礼二拍手一礼、作法に習って賽銭箱の前でいもしない神様に挨拶をする面々。
それを横目に、僕は徐ろに五円玉を財布にしまって。
「いち・まん・えん」
「……はァ!?」
一万円札を賽銭箱に投入ッ。ご縁なんかいらねぇから、いい感じのご利益をください神さま仏さま。
だいぶ現金だけど、きっと喜んでくれるでしょう。
天国も酒代高騰で寂しい思いしてるかもじゃん?これで足しにしてもらって。
「ズルくね!?」
「神は現金なり」
別にー?自分の願い優先してねとかそういう邪な考えは抱いてませんけどー?
何がズルいんですかね。
おい聞いてのか神か仏。頑張って悪夢統制してんだから少しは融通しろよ。僕無神論者だけど。仏教徒でも神道の人でもないけど。そこはこう、いい感じに大らかにやってもれて。
なんて罰当たりなことを思考しながら、ぶっとい鈴緒を揺らして鐘を鳴らして、最後に一礼して社殿を後にする。背後でブーブー言ってるうるさいのがいるけど、ぜーんぶ無視だ。文句あんなら並び直して自分の銭投げろ。
ちなみにこの後、御神籤とお守り買った。
おみくじってこんな難しい字してたんだね……あ、ちな大凶でした。ふざけんなよ。
お守りは厄除けにした。
悪夢除けとかもあったよ。僕が近付いてるから無意味なモノだったね。
お財布は軽くなったけど、こんぐらいならまだ許容範囲だもんね。
……はぁ。
꧁:✦✧✦:꧂
「───ファ〜ッピィ〜〜〜ニューーッ!!イヤーッ!!やはり年を跨っても君は綺麗だなぁ!着物、いや、振袖?だったか。その姿も美しいぞ!私のブルームーン!!」
「ッ、新年早々うるせぇわボケ。オマエのになった覚えはないって散々言ってんだろ」
「でも私Dad…」
帰って来て早々、呼び鈴がピンポーンってけたたましく鳴るもんだから、だーれも動かない中出迎えてやれば……ハイテンションのオリヴァーがいた。
すんごいうるさい。養父の自己主張が激しい。
叫ばれる前に防音結界張ってよかった。敷地外に爆音が鳴り響く悲劇は防げた。
僕偉くね?
「ハイあけおめことよろ……で、後ろのは何」
適当に挨拶を返してから、オリヴァーの後ろ……かなり見覚えのある老若男女の集団を睨みつける。
うん、手前にいるティファさんとエヴァちゃんはいい。
オーガスタスの中の人の奥さんと娘ちゃん。着物着てる金髪美女は絵になるねぇ。
で。
スーツにコート羽織ったマフィア風だったり、すっげぇ怪しいローブ着てたり……
すっげぇ関わりたくないヤツらがいる。
具体的に言うと、財閥連合の魔法少女ファン共。パパ活ママ活共。
「おおおお久しぶりです、蒼き月……本日は僭越ながら、日本の風習である“お年玉”なる金銭の受け渡しをする為に馳せはんじたわけでして…」
「カルトローブ君さぁ。はぁ?ありがとう」
「神がお喜びだぞ!!」
「「「ウオーーーッ!!!」」」
「いきなり狂うのやめろ。瞬間沸騰の熱狂崇拝なんざ誰も求めてねぇんだわ」
お年玉くれるんだって。歓迎はできないけど受け入れてやろう。玄関が手渡し口です。それ以上は踏み込ませないカルト教団の聖地なんかにしてたまるか。
独裁会社とか宝石工房とか製薬会社とか民間軍事とか、多種多様な業界のお偉いさんが代わる代わる新年の挨拶を僕にしてくる。
多分、普通に生きてたら関わってこないヤツら。
全員、魔法少女やってた僕に助けられたからって理由でここにいる。傍迷惑だけど、これ善意なんだよなぁ。何故全員で押しかけを選んだのか。ぜってぇ発端はオリヴァーだろ。わかってんだよ。
会食の集合前に寄った?寄ってくんじゃねぇーよ。
取り敢えずエヴァちゃんには逆にお年玉あげて、妻娘は家に上がってもらって他は帰ってもらう。みんな大人しく頭下げて帰ってくの、まるで僕が偉くなったみたいだから本当にやめてほしい……
ヨシ、家に戻ろう。
「えっえっ待って私は?」
「お呼びじゃないから……」
「あなた、帰りの車の用意、お願いね」
「んえ?パパいっちょじゃないの…?」
「物騒なのゾロゾロ連れて、健全温和な一般人の家の前でたむろしたのが100パー悪い」
「健全…?」
「温和…?」
夫婦で揃って首傾げんなや。
仕方ないからオリヴァーも家の中に入れてやること……こいつ会食の途中に寄ったって言ってたよな?ならここにいる暇ないんじゃないの?
……こっち優先?影武者が代わりに行ってる?
あ、そう。もうこの後普通のおせちとお雑煮食べるだけなんだけど……そんなに庶民の味が食いたいか。それとも僕の手料理を食べたいのか。後者だな。
てかお年玉寄越せよ。
「勿論だとも。はい」
「……ぶ、ブラックカードはいらない……」
「上限無しだから安心したまえ。万が一があっても、私のポケットマネーでどうとでもなるぞ」
「金持ち怖い…」
高くても万札一桁で十分なんで……いや、ホントに…
꧁:✦✧✦:꧂
───それから数時間後。
オリヴァーのポチ袋が乱舞したり、ほとんどスーパーの味であるおせちを食べて、手作りの栗きんとんとかお雑煮とかを食べて。
夜中に羽子板とかいう意味不なこともやって。
着てた振袖を魔法で綺麗にして、畳んで、たとう袋って名前のに入れて、収納。初日の出は見れなかったが、まぁ別にいいでしょ。
新年一発目、楽しめたし。
ワイワイガヤガヤ、まだ寝そうにない面々は配信魔法で新年早々コメントと遊んでいる。それを邪魔しないよう、静かに外に出る。別に、夜風に当たりたい気分になった、なんて感傷的なモノではない。
二階のベランダから外に出て、そのまま屋根に登って。
瓦屋根の上から、空に鎮座する満月を見上げる。新年の初めから満月、か。幸先いいね。何の幸先なのかは、僕もわかんないけど。
月見酒はやらないけいど。ココアを両手に持って啜っていれば、待ち人がやってくる。
僕は待ってないけどさ。表現としては適切だから。
先程から、僕にだけは伝わるように思念を飛ばしていたあんちくしょう。
宙から隣へ、音もなく。虚空より現れた男は、僕の隣に腰掛ける。
「新年早々なに」
「ふむ?新年。成程……あの賑わいはそういうこと、か。どこもかしこも祭り騒ぎで、来る星を間違えたのかと最初勘繰ったのだがな」
「宇宙にはないの?」
「新星祭がある。やることはこちらとそう変わらん。まぁ我は抜け出して来たのだが」
「それでこっち来んのやめろ」
「歓迎してくれ」
最早、言うまでもないだろうけど───フットワークが軽い系の銀河皇帝、ニフラクトゥだ。一年の始まりは宇宙共通なんだなと驚きはしたが、なんでも、王域でも新年の催し事をしていたのに、億劫になって抜け出したらしい。
バカかな。こんなのが六百年も王してるとかさ。
というか、地球に出没しないで欲しい。デスポーンして消えちまえ。
「玉座に座って見るだけなんだ。飽きないモノがいるなら是非会いたいモノだ」
「全世界の王侯貴族に謝れ」
毎回新しい式辞考えて、威厳よくしたり笑顔になったり有象無象に見せなきゃなんだぞ。絶対大変だろそんなん。それに比べてこいつと来たら……ナメてんの?としか言いようがない。
式典すっぽかすなバーカ。
リブラとか泣いてんぞ多分。僕が言うのもなんだけど、自由すぎるのもいい加減にしろ?
殺意を見せずにそう言えば、無表情なのに何処か悲嘆を滲ませた顔をする。おい、そんな顔すんなよ……殺したくなるだろ。
「いいな、その殺意。だが、本番は後に取っておこう……なにか余暇を潰せるモノはないか?混乱を避ける為にも、オマエと二人で楽しめるものを」
「なーに言ってんだか。戦争中の相手に何言ってんの」
「この程度の距離感が、我らの関係において適切であると思っているが」
「馴れ馴れしいって言われるでしょ、これ」
「勝手に言わせておけ」
「わぁ暴論」
この後、仕方ないから大気圏で羽子板やった。パワーで負けた。
……嬉々として僕の顔面に落書きしやがったの、マジで覚えとけよ…
サプライズニフ理論
次回から戦争編再開です。
新年早々物騒だわ…
あ、頂いたイラストです。
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急ピッチで描いて頂きました。
素敵なラピスの振袖姿です。重ね重ね、ご支援ありがとうございます。




