番外編 - 魔法少女のNew Year's Eve
謎時空です。
12月31日、大晦日。
激動の一年の締めくくりであり、新たな始まりを迎える最後の日。旧暦では毎月の最終日を「晦日」と呼び、その集大成であるこの日を「大晦日」と誇張して定義したのが始まりだとか何とか。
正直言って、あまり興味はない。
だってもう関係ないし。未だに現代社会に組み込まれた生き方をしていれば、意味のある祝日だったけども。今の僕って半ば現代社会から距離を取ってる身分だし。
魔法少女ではなく、アリスメアーの二代目首領。
そういう立場である僕が、あまり人間のお祝い事に口を挟むわけにもいかない。祝うってより呪う側だし。祝日を邪魔するのがアリスメアーだし。語弊?何言ってんだ過去振り返ってみろ。
「祝わんのか…?」
なんでそんな悲壮感ダダ漏れなの?は?意味わかんな。僕が悪いのかこれ。
納得いかないなぁ……
不満気なリデルこと、過去の行いで僕とほーちゃんから年末年始を楽しめないぐらいのバトルを強要してきた元凶クソ幼女王が膝から降りないのを鬱陶しく思いながらも、それ以上の文句は言わずに大人しく座る。
あー、ココア飲みたい。
いや、コーラがいいな。がぶがぶ飲んで炭酸で喉虐めて心地よくなりたい。
そう自堕落に休日を妄想していると、炬燵に入っていた僕の隣に見知った人の気配が。
無視しよう。
みかん美味。
「酷いと思うの」
「勝手に居座ろうとする魂胆が丸見えなのが悪い。普通に不法侵入で訴えるぞ。勿論オマエだけ」
「私が可哀想じゃないんですか…」
「ない」
「泣〜」
やかましい幼馴染が炬燵の空いてる方、つまり反対側に入ってくのを横目に、リデルの口の中にもみかんを放ってやる。よくお食べ。でもこぼすなよ。
あぁ、ちなみにだけど。
今いるのは僕の実家。宵戸家のリビングだ。久しぶりに解放した。光熱費とか水道代は全部魔法でズルしてます。関係各所にバレたら大目玉じゃ済まないと思う。
でも、暖かいならオッケーです。
僕が法だ。なんならこの家、治外法権だから。若しくはアリスメアーの飛び地なんだから、日本の法律が通用するわけないよね。
うん?家に帰ってきた理由?
……穂花ちゃんたちに、一緒に年越そうと誘われたからとかではないよ?洋風チックな魔城でやるより、雰囲気がいいかなって思っただけで。
というか、知らん間に飾り付けされてたし。
誰だよ注連縄と門松買ったの。本格的に祝う気じゃない君たち。
「先輩」
「なんだい蒼生ちゃん」
「お鍋が食べたいわ…」
「……作れと?」
「ん」
な、生意気な後輩……流石、炬燵の四隅の一角を勝手に占領しているだけはある。ちなみに、最後の隅は真っ先に滑り込んだ寝子と抱き着いたきららちゃんの場所だ。もうかれこれ二時間は寝ている。起こしてあげるべきか……
というか、親御さんと過ごさなくていいわけ?
あっ、いいの?あ、そう……
魔法少女同士で祝いたい?アリスメアーがここにいるのダメじゃんそれ。あ、ハット・アクゥーム、そこのみかん持ってきて。
鍋、鍋ね。どうせ年越し蕎麦食うんだから、食べないで待ってろって思いたいけど。太るのを心配する必要のない僕は兎も角、君たちはよく考えた方がいいんじゃないの。
食べ過ぎはよくな……
ごめんって。そんな目で見るのやめて。ソファでテレビ見てた穂花ちゃんも参戦しないで。寝子ときららちゃんは起きてたの???
口は災いの元、か。
……いや、まだ口に出してない。思考だ。特定の事への察知力高くね?
「仕方ないな…」
「えっ、どっか行くのか」
「そりゃあね。幸い大人数で鍋しても大丈夫なぐらいの量買ってあったから、買い出しには行かなくて済むし。人数多いから大変だけども」
「私から暖を取る気か???」
「誰が湯たんぽだ」
まったく……ワガママな女王様だこと。仕方ないから、最近入荷した抱き枕でも使ってくださいな。
ふわふわでいいよ。多分すぐ暖まるだろうし。
で、肝心の羊毛枕さんは……や、焼いた餅食ってる……その七輪どっから出した。メードだな。後一緒に食べてるペロー。
「んふぇ?」
「それ以上食べるとぶくぶく太るぞ。ふわふわじゃなくてモチモチに……いや、それはそれでアリか。ヨシそのまま食べてていいよ」
「すいません後貰ってくれますか」
「頂きます」
もっと触り心地よくなりそうじゃん……といった願望は即座に拒絶された。今更感が凄いけど、鋼の意思で食べる手を止めた。よくできました。
そのまま僕の代わりにリデルの枕になっててくれ。
メードが美味しそうに餅を伸ばしてる間、わがまま姫の子守りを任せる。うぅっ、温もりが消えた……いいような悪いような。
……そんなシクシク泣くなよ。まるで僕が悪いみたいな感じじゃないか。
「手伝いましょか?」
「いーよ、魔法でやるし……そういえば他のヤツらは?」
「ビルの旦那は暗くなってんのに雪掻き、オーガスタスの爺さんは家族サービスッス。メアリーさんとルイユさんはグゥと一緒に雪だるま作ってます」
「ジジイ以外元気だな……ルイユはピーピー言ってそうな気がするけど」
「正解ッス」
グゥってば、ルイユの芋虫ボディ気に入ったみたいで。すごいペタペタ触るわ、攀じ登るわ、芋虫号にして発進を命令するわで、すごい乗り回してるんだよね。
付き合ってるおばあちゃん大変そう。
オリヴァーはもっと母娘大事にしろ。あいつ偶にヘタレるからな……
うん?先輩たちはどうしたのかって?知らね。あいつら呼んでないし。
……呼んでなかったら呼んでなかったでうるさそう?
それはそう。でもなぁ。僕の家の許容限界が……死体の収容限界は二つまでなんだ。僕とメードでいっぱいだから無理。メアリーとルイユは除く。
さて。
「ごま豆乳でいっか…」
鍋は三つ……死んでる連中の分も込みで、大容量の四つぐらいは作るかぁ。後輩たちは食べ盛りだし、それ以外も結構食うし。ゾンビマギアも普通に食うし。死んでるのになんでそんな食べんだよ。だから肥えるんだよ。
そう思いながら、冷蔵庫の中身をひっくり返す。
うん、うん……十分あるね。コンロ足りないから魔法で代用しなきゃ。
そんじゃ、潤空ちゃんのお料理教室、始まるよ〜。
カットで。
꧁:✦✧✦:꧂
数時間後。
夕飯を完成させ、グツグツ煮立たせたまま魔法で固定。焼きすぎとか熱しすぎとかそーゆーのがない、丁度良さを維持する。うん、完璧。
味見もして美味しかったし、文句はないでしょ。
……そろそろ机に座らせるか。炬燵で食べるには広さが足りないし。
「できたよ」
「はーい」
「待って〜、今いいとこだから〜」
「ぐぅ」
年末のお笑い番組を見ていたほーちゃんたちを呼んで、全員を和室に集める。うち、あるんですよ和室。襖外せば親戚一同が集まってもいい感じの空間になる。
大所帯すぎるけど、まぁ。
ワイワイできるのはいーんじゃないの?あんま、それの経験ないから、よくわかんないけど。
いつの間にか集まってた六花や、雪遊びを楽しんでいた面々も呼び込む。はい暇な人手伝ってー。お茶とかコップとかお皿とかお箸とか、運ぶのいっぱいあるんだしさ。
サボんなよ。聴いてんのかクソミラー。
「初めて言われたよその悪口!?」
「理由はわかるでしょ」
「わかるけどさ〜!本編のノリでワタシのことイジめんのやめな〜い?」
「無理かも」
「そっかぁ」
机に顎を載せてた晶を蹴り上げる。よくわからないけど苛立ちがすごいので、最後の年も適当な扱いで済ませようかと思う。自業自得だろう。
お盆を持たせて往復させながら、僕も僕で準備。
流石にずっとは無理だけど、初回ぐらいは全員分お椀によそってやる。ウインナーとかもち巾着とか、限りのある食材は一杯一個ずつね。一人三個だよ。多分三杯でみんなお腹いっぱいになると思う。食べれそうだったら増やす。そこはサービス精神を旺盛にしてやろう。
ほいほいっと。
「わー、いっぱい!」
……よく見たら全員パジャマじゃねぇか。僕だけ風呂に入ってない?除け者とかふざけてんのかこいつら。ここで無意味にヒステリックになってやろうか。
眉間を密かにピクつかせながら、怒らず準備を完了。
背中に抱き着いて顔をグリグリ押し付けてきた未来や、半分寝ながら右足にしがみついてきた寝子を座布団の上に放り投げてから、ほっと一息。
食べる前から騒がしい。
「いっぱい作ったな」
「先輩たちが手伝ってくんねーから」
「ごめんって。年末でも福袋売ってるお店があったから、色んな店舗から買い漁ってたせいで……」
「あの大荷物そういうこと?いらん買い物やめてよ…」
「だいじょーぶだいじょーぶ!家電とか服とか雑貨とか、みんなで分けよって感じで買ったし!」
「何が大丈夫なんだか…」
廊下が埋まってるんですけど。紙袋いっぱいなんだけど困るんですが。あれ全部かぁ……総額何万だよ。てか開封すんの?いつ?鍋食べ終わったらやんの?あ、そう。
スムージーの機械とかある?
バナナの好きなんだけど。
「早く食べよ〜」
「……食い意地張ってんなぁ、あんにゃろう。僕にばっか押し付けやがって……」
「面倒見がいいからじゃない?」
「自立させなきゃ」
「無理だと思うな」
「ちくしょ〜」
急かすほーちゃんにイラつきながら……なんだろ。今日僕怒ってばっかだな。クールダウン。クールに行こうか。これはよくない。宜しくない。
そんな喧嘩っ早い女じゃないし。
僕はクール。天才で叡智いっぱいのボクっ娘なんだい。メタ発言よくない。
座布団に座る僕の肩に、甘えるように寄りかかってくる幼馴染を軽く手で抑えながら、手を合わせているみんなに習うように姿勢をよくする。
流石に空気を呼んだバカが離れたので、手を合わせて。
いただきます。
「「「いただきます!」」」
よく噛んで食べろよ。締めはリゾットでいい?チーズが余りに余ってるから……
そう思いながら白菜を一口。美味。熱。満足。
……なに、麺がいい?年越し食べるんでしょ。その時に取っておこうよ。そう言えば、納得した様子の祀里先輩は食事を再開してくれた。先輩は大人舌だからね。チーズが大好きなお子ちゃま舌ばっかのメンツじゃあ、リゾットが一番なんだよ。僕もだけどさ。
取り敢えず今は鍋だ鍋。
野菜で肉を挟むように食べよう。一緒に食べた方が多分美味い気がする。
「これお魚入り?」
「よく気付いたね」
「うるるー、ソーセージに肉ついとる。見て」
「んまんま」
「ちょ、蒼生!私の取んないでよ!」
「取ってないわよ!?狙ってたんなら言いなさいよバカ!あと横取りしようとしてんのあんたでしょ!!」
「喧嘩はダメだよ〜。あ、これ美味しい」
「おもち美味し…」
「お豆腐美味しいぽふ!」
「おかわりをください」
「酒飲んでもいいッスか」
「缶ビールなら冷蔵庫にあったぞ」
「……んあ?これか?やろか?」
「yummy…」
「なーんでもう呑んでんのかな……あ、ジョオー様お口になんか付いてるよ」
「これ食えんのか?」
「造形が変なだけでしょ」
「マギスタに上げていー?ラピスちゃんが作ったって」
「お肉いっぱい寄越すのです」
「ラピピに後で怒られるよ」
「わぁ、これがお鍋……結構、重い感じなんですねぇ……あったかいです」
【ハットス!】
……うん。まぁ、賑やかでいいんじゃないの。言うほど嫌いじゃないし。
作った甲斐があったよ。
꧁:✦✧✦:꧂
───鍋を食べて、リゾットを食べて。六花が買ってきた福袋を開けて、じゃんけんと乱闘で欲しいのを勝ち取って手に入れて。テレビゲームもして、お喋りもして……
そうして、際限なく今年最後の日を楽しんでいれば。
「すぅ…すぅ…」
過半数が寝ちゃった。うん。それはもうぐっすりと。
……もうちょいでカウントダウンだけど、起こした方が波風が立たないよね。といっても一時間はあるし。うん、まだ平気、かな。
鍋を片付けながらそう結論付ける。
大人組は酒盛り中だ。流石にうるさいから別室に移ってもらった。それ以外で今起きてるのは、コップをタオルで拭いてるほーちゃんと、ゲーム部屋で遊んでる叶華先輩、鉄架先輩、祀里先輩、ひかり先輩だけ。後輩の魔法少女は全滅である。ちな晶は大人組にこっそり混ざって飲酒した結果、ちゃんと酔って自滅している。ぽふるんも寝た。
んまぁ、みんな年末なのに頑張ってたしね。
午前中も鍛錬してたぐらいだ。そりゃあ疲れて寝ちゃう気持ちもわかる。
「もう一年、かぁ」
「ヤケに感慨深そうだね」
「そりゃあ、そうでしょ」
「……そっか」
この一年、本当に色々あった。
本格的な指導は四月からだったけど……そうだね、実質九ヶ月ぐらい?半年以上の期間だけど、色々あったねぇ。半分以上は僕の仕込み有りきだけど。
新世代誕生とリリーライト復活は知らない。
アリスメアーの再始動、復活怪人、13魔法の一部復活、異星人襲来。そこいらは僕が能動的に動いた結果なので。頑張ったでしょ。
魔法少女の復活、悪夢との本当の最終決戦、異星人との戦いの始まり。色んな出来事が、僅か九ヶ月に詰め込まれている。かつての、古い世代の魔法少女と悪夢の戦いは、五年もかかったっていうのに。アリスメアーが悠長にしてたのもあるんだろうけど。
取り敢えず、色々あった。
大変だった。
「勝手に生き返りやがって」
「や〜、死んでないんだよなぁ〜。そっちこそ私を置いて死んでんじゃん」
「それ言われたら否定できないんだよなぁ」
「ばーか」
「ハァ?」
お互い様ってヤツだ。僕もオマエも、世間様から消えた事実に変わりはない。
……会えただけ、マシか。
ゾンビたちはどうにか再生できたけど。正直、そこまで確証はなかったんだ。仮初とはいえ、一緒に戦えてるのもマシな部類だろ。
「勝手に死ぬなよ」
「勝手に負けないでよ?」
「ふんだ」
適当に誓い合って、勢いのままケラケラと笑って。
寝ているちびっこたちの目覚ましに、背中に入れる用の氷を袋詰めしてから。二人で仲良く笑い合って、悪戯心をいっぱいにして。
意気揚々と、和室の襖をパッカーン。
「おはよう!!」
「おそよう!!」
その後、背中をギンギンに冷たくされた魔法少女たちの悲鳴が響き渡った。
アハハ。あ、良いお年を。
今年一年、誠にありがとうございました。
来たる2026年も、『夜澄みの蒼月(ry』をどうぞよろしくお願い致します。
良いお年を!




