八、バルドの襲撃?
エルフ受付嬢の名前をエルルに変えました。たくさん出て来て打つの面倒とか言っておりませんよ、ええ。
「・・・ん?何だこれ?」
目を覚ますと、手に何か柔らかいものが触れていた。思わず、手を動かしてしまう。すると
「あ…ん…」
「へ?」
聞きなれた女性の声がして、寝ぼけていた意識が一気に覚醒した。まさかと、そーっと隣りの様子を伺うと、ソリュとバッチリ目が合った。しかも、何やら妖艶な表情をしているような…
「朝からだなんて…やはり、我慢していたのですわね?」
「え!?いや、これは!?その!?」
やばい!?やはり、この触れているものは、ソリュのお胸様だったのか!?巨乳ではないが、それなりに主張しているソリュのそれに、俺の手が…って、落ち着け!とりあえず、離れなければ!?
「すまない!寝惚けて」
「逃がしませんわ!」
「なんだと!?」
俺は、思わず驚きの声を上げてしまった。仕方ないじゃないか?だってさ…俺の腕が、ソリュのお胸様に挟まれているんだぜ!しかも、寝間着なのでとてもラフな格好のソリュのお胸様にだぞ!?これが、驚かずにいられるか!?くっ…腕が幸せ過ぎて動かせない!?
「私をその気にさせて…逃げるなんて酷いですわ♪」
「お、落ち着くんだ!」
主に俺が!!やばい!潤んだ瞳のソリュの顔がやばい!匂いがヤバイ!腕だけじゃなく、のしかかってくるソリュの感触全てがヤバすぎる!!?
俺は、理性を総動員して何とか逃れようと試みる。しかし、思うように動かない。俺の内面で、据え膳食わぬは男の恥と言う言葉が浮かんでは消える。くっ!?こんなことをしている場合では…早く離れないと…まずいんだ!
俺は、全身全霊の気合いで何とかソリュと離れようとしたまさにその時、背中の温度が体感氷点下まで急激に下がった。そして、もにょもにょのせいで下がっていた視線を上げ、ソリュの顔を見ると、青い顔をして固まっていた。こ、これって…
俺は、振り向きたくなくなった。このまま布団に潜って寝直したいと言う衝動に襲われながらも、そんな事をしたら後がもっと怖くなると、気合いを入れて振り向いた。
はい、一瞬で桃色気分は吹き飛びましたね。やはり、般若様がおられたのです。悲鳴を上げなかった俺を褒めて下さい。
「私が朝食の用意をしている間に、お二人で何をなさっておられるのでしょうか?」
俺たちは、般若…リル様の笑顔の圧力の前に屈し、質問に答える事も出来ないでいた。
「何故、お二人とも黙っているのですか?昨日、私は言い聞かせましたよね?八重真様の収入が安定するまで、子作りは禁止だと。まさか、一日も経たずに破られるとは思いませんでした」
違うんだ!確かに、少しヤバかったけどちゃんと耐えられていたはずなんだ!!って、声に出したいけど、下手な言い訳すると余計に状況が悪化する気がして全く声が出せません…
「分かりました。せっかくの朝食が冷めてしまいますので、食べてからまた話し合いを致しましょうか?・・・返事は?」
「「はい!拝聴させて頂きます!!」
俺とソリュから自然と出た返事は、またも揃ったのだった。
「ソリュ…このままでは身体が持たない。君の好意を無碍にする気はないから、探索者としてある程度成功を収めるまで、そう言う行為は待ってくれないか?」
このまま、ソリュに誘惑されてはリルに説教される日々を送り続けると、肉体的にも精神的にも体が持たないだろう。探索者稼業に影響が出ては、悪循環に陥ってしまうだろう。俺も悪いところがあるかもしれないが、ソリュが誘惑してこなければ、ヘタレな俺が何か出来る訳がないのだ。・・・言ってて悲しい真実だった。
「探索者は、いつ命を落とすか分からない稼業ですわ。ですから、私は毎日を悔いのないように生きたい、それだけなのですわ」
「そう言われてしまうとなぁ…」
確かに、少し運が悪い方に転んだだけで、俺たち二人とも死んでいたかもしれないのだ。一日一日を悔いのないように生きるのは確かに大事だろう。だけどなあ…
「ソリュ、俺が絶対にお前を守るから、もうしばらくだけ我慢してくれないか?」
「そ、そこまで言われるのでしたら…なるべく頑張って耐えて見せますけど、抑えきれない時は許して欲しいのですわ」
「分かった、それで行こうか。まあ、俺たちが頑張ってダンジョンを攻略すれば解決するんだ、すぐさ!!」
「そうですわ!旦那様と私なら、あっという間に高ランク探索者になって、子供の10人くらい養えるようになりますわ♪」
「ああ、そうだな!・・・10人?」
「そうですわ!旦那様との子供は、最低でも10人は欲しいですわ♪」
「そ、そうですか…」
うん、リルの許可が出るくらい稼げるようになっても、今のところソリュに手を出す気はないと言う事は、黙っておいた方が良さそうだな。ソリュに不満があるわけでは全くないが、やっぱり、リルと…モニョモニョ
「旦那様、おかしな3人組がこちらに向かって来ますわ」
「ん?おかしな3人組?」
現在、探索者組合に向かって歩いているところだ。現在地は、大体我が家と探索者組合の中間地点と言うところだろうか?そんな場所で、3人組の男が明らかにこちらを目指して歩いて来ていた。
・・・って、どこかで見たと思ったら、初めて探索者組合に行った時に絡んで来た、荒くれ探索者のバルドさんじゃないか!他の二名は覚えてない。だが、多分エルルさんが投げた短刀の刺さったテーブルにいた人たちだ。まあ、絡みのあったバルド以外全く記憶にないけどな!
「バルドさん、こんにちは!元気だった?」
「おう、俺はいつでも元気…って!?何、普通に挨拶してやがるんだ!?」
「え?知り合いを見かけたら挨拶するだろ?」
「え?俺とお前はそんな関係だったか?」
「え?共に恐怖を味わった仲じゃない?」
「ああ、あれは怖かった…って、違うわ!お前、俺を馬鹿にしてるだろ!?」
「え?そんな事ありませんが?」
馬鹿にしていると言うか、憐れんでいると言うか。だって、意気込んで俺に絡んで来たのに、すぐに強制的に引き下がる事になったんだぜ?しかも、あの後こってりとしぼられたみたいだし…
「お、おい?大丈夫なのか?全然、俺たちにびびってねえぞ?」
「嫌な予感がする」
「お前ら!?何びびってんだ!相手は、ただの新人だぞ!!ここは、先輩としての威厳を見せつけてやらないとだろ!?」
「え?先輩としての威厳って…何かくれるんですかね?」
「そうそう、新人の探索者登録記念に…って!そんなわけあるか!?話の流れで違うと分かるだろうが!?」
「え?じゃあ、何の用です?」
「それはな…」
「ああっ!?思い出しましたわ!!!」
「うおっ!?びっくりさせるなよ!?」
バルドが何かを言おうとしたところで、ソリュが突然大声を上げた。何を思い出したんだ?
「この3人組!私の事をナンパして来た底辺野郎たちですわ!!」
「あ?・・・ああっ!?どこかで見たと思ったら、探索者組合でパーティを組めずに困ってる風だったから、声をかけてやった新人娘じゃねえか!?」
「ああ、確かにそうだ」
「思い出した」
「声をかけてやった何て良く言えますわね!私の事をジロジロ見て、明らかに下心100%なのが見え見えでしたわ!だから、断って差し上げたのですわ!」
「そ、そんなつもりねえよ!困ってた新人に色々教えてあげようと思っただけだろ!?」
「あわよくば、仲良くなろうとしただけだ」
「あわよくばがメインだった気がする」
「お前らは黙ってろよ!?」
ああ、こいつら探索者じゃなくて、チンピラだったのか…納得した。
「お前は何で頷いてやがるんだ!?」
「納得のチンピラ感」
「ああ゛!?」
「まあ、確かにバルドはチンピラっぽいよな」
「納得のバルド」
「てめえらも言われてんだよ!?気が付けよ!?」
「あの、探索者組合に行きたいので、漫才なら他所でやってもらえますか?」
「漫才じゃねえよ!!?」
「ドンマイ、バルド」
「良い事あるさ、バルド」
「だから!てめえらも言われてるんだろうがああああ!!?」
おお!?このままエスカレートすると、バルドさんの血管プチって切れそうだな…
「それで、何の用ですか?バルドさん」
「ハァハァハァ、用はだな…良い女を連れて…あ、そう言えば、この間連れいてた美人さんはどうしたんだよ?」
「ああ、リルの事か?探索者じゃないから、今はいないだけで一緒に暮らしているぞ?」
「なん…だとおおおお!!?」
「うおっ!?うっさ!?」
俺も結構叫ぶけど、急に叫ぶのは五月蠅いから止めましょうよ。
「あんな美人さんと一緒に暮らしていながら、他の女と探索者しているだとおおお!!?」
「少し違いますわ!私も、一緒に住んでいますから私の方が少しだけ優位ですわ!!」
「な・ん・だ・とおおおおおおおおおおおおおおおお!!?!?」
だから、五月蠅いって!ご近所迷惑ですよ!?これ以上煽るとマジで血管が逝きそうだから言わないけども。
「バルド、五月蠅いぞ」
「同意」
「てめえら!?どっちの味方なんだよ!?」
「五月蠅いですわ!さっさと、私たちに絡んで来て、旦那様にやられなさい!早く、旦那様の雄姿がみたいのですわ♪」
「そうだそうだ、五月蠅いからやられてしまえ」
「同意」
「お前らはああああああああああああああああああ!!!?!?全員、ぶちころすぞおおおお!!?」
「そこまでです」
おや?バルドさんの血管が切れると思われたその直後、突然のリルさん登場。何この展開?
「あ゛?この前の美人さんじゃなねえか?」
「この前の組合での横暴と言い、今回の事と言い、さすがに見逃すわけにはいきませんね」
「見逃せないならどうするんだ?」
「こうします。エルル様、後はお願いいたします」
「どうやら、この間のしつ…お願いだけでは、聞き入れてもらえなかったようですね」
そして、エルルさん登場。え?今、しつけって言いそうにならなかったか?何をされたんだ…
「ゲッ!?それは、卑怯だろうよ!?」
「立派にお勤めを果たして来いよ」
「うむ、頑張れ」
「何でお前らは他人ごとになってるんだよおおおお!!?」
またも絶叫を上げるバルド。うむ、もう何が何だかだな…
「八重真様、大丈夫でしたか?」
「大丈夫と言うか、何と言うか…」
漫才見てただけなんだけど?
「てめえら!?俺一人に押し付けられると思うなよ!?」
「でもお前さっきさ、全員ぶちころすって言ってただろ?」
「言ってた」
「確かに、言っておりましたわ」
「え?いや、あれは言葉のあやと言うかだな…」
「どうなのですか?」
「え?確かに、言っていたけど…」
「分かりました、おしお…話し合いは、バルドさんお一人にしましょう」
「助かった!頑張れ、バルド」
「負けるな、バルド」
「てめえらあああああ!!?」
「五月蠅い」
「げへえ!!?」
的確な鳩尾へのボディーブロー…さすが、エルルさんです!
そして、腹部の痛みに呻きながらも、覚えてろと訴えていたバルドは、エルルさんに引きずられながら去って行った。
「惜しい奴を亡くしたな…」
「ああ、生まれ変わってもまた友になろうぞ」
この人ら、本当にバルドの友人なのか?まあ、面白いから問題ないな!
「あ、そう言えば、お二人の名前を聞いてませんでしたね」
「俺は、ダンガーだ。友人が迷惑をかけたし、敬語は要らないぞ」
「ハンドラだ。俺にも要らない」
「そ、そうか?よろしく」
何か、完全にバルド一人悪者にされているけど、この二人も悪巧みに参加するつもりだったんじゃないのか?バルド…成仏しろよ。
「それでは、私はこれで失礼します。本日こそは、無茶をしないようにして下さいね?」
「ああ、リルに心配をかけないように気を付けるよ」
「私も注意しますので、ご安心を」
俺たちの返事に満足したのか、リルはどこかへ去って行った。
「あ、今思ったのですけど」
「どうかしたのか?」
「私たち、これから探索者組合に行く所だったのですわ。と言う事は、エルルさんとまた会うと言う事ですわ」
「あ・・・確かに」
エルルさんを見送ってすぐに会うとか何か微妙だな…仕方ないけど。
「気にしても仕方ないな。じゃあ、お二人とも、俺たちはこれから探索者組合に行くので、この辺で」
「そうか、気を付けて行けよ」
「俺たちのような奴に絡まれるなよ」
「自分で言うんかい!?」
俺がそうツッコむと、やるな!と訳の分からない返答をしながら去って行った。本当に芸人じゃないのか?
「・・・行くか」
「はいですわ♪」
ソリュが当たり前のように俺の腕を取って寄り添って来る。それから、二人で歩きだしてふと思う。あれ?ソリュが腕を組んで来るのが当たり前になって来てね?と。やばい、すでにソリュの定位置がここになりつつあるな…今さら、腕組むのやめろとか言い難いから言えないな…
「はい、こちらが八重真さんの新しい探索者証になります。ランクは3となりました。ソリューネさんには、こちらの探索者証を、ランクは2です。お二人ともランクアップのスピードが凄く早いです。個人的には、期待の新人パーティだと思っておりますので、これからも頑張って下さいね」
そう言って、にっこりと微笑んでくるエルルさん。素敵な笑顔です!しかし、バルドさんはどうなったのでしょうか?怖くて聞けませんね…
現在、探索者組合でカルカルダンジョンの第二層に向かいますと報告に来たのだが、そこで昨日までのバタバタで後回しになってしまっていた探索者ランクアップが行われた。何故?と思ったが、どうやら第二層に行くにはランク2が条件らしい。・・・そう言えば、そう聞いていた気もするな、うん、オモイダシタヨ。
俺は、トレントを2回も倒したおかげか、一気に23までレベルが上がっていた。ステータスは変わり映えしないがこんな感じだ。
東堂 八重真
Lv23
たいりょく:72
まりょく :72
ちから :32
かしこさ :32
きようさ :32
すばやさ :32
うん :32
こう見ると何か…強くなった気がするんだ。ほら!たいりょくとまりょく以外で考えると、3倍だぜ!?凄くないですか!?あ、実感も凄かったわ。道理で、カルカル一層の敵がサクサク倒せるわけですよ。
「ランクアップ、おめでとうございますですわ!!さすが旦那様ですわ!探索者を始めて3日目にしてランク3になるなんて素晴らしいですわ!!」
「お、おう。ありがとう。ソリュも、ランクアップおめでとうな」
「ありがとうございますですわ!でも、私の場合は旦那様のお陰だと思いますわ。これから、もっともっと頑張らないといけないのですわ!」
「あ、ああ。お互いに頑張ろうな!」
「はいですわ!!」
「お二人ともテンション高いですね。そのハイテンションが、探索者としての活躍の起因になっているのかもしれませんね」
うん、五月蠅くてすみませんね。テンションが探索に関係しているかどうか…か。まあ、ポジティブ思考をテンションで引き寄せているから、全く関係ないとも言えないかもなあ。
「よし!この調子で、あっという間に第二層もクリアするぞ!目指すは、最終の第五層だ!!」
「はいですわ!!目指せ最速クリアですわ!!」
俺たちは、ハイテンションのまま、カルカルダンジョン第二層に向かったのだった。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
次は、2日以内にお届けします!こう宣言しておかないと眠気に勝てないので…
次話も宜しくお願いします。




