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六、調子に乗ってはダメ。ゼッタイ。

「なあ、本当について来るのか?」


「当然ですわ!妻として、夫を支えるのは何よりも優先されるのですわ♪」


「うん、まだ夫婦になったわけじゃないとかは置いておいて、今日もテンションが高いね、ソリュは」


「そんなに褒められたら、照れてしまいますわ♪」


「そっか、気を付けるよ」


 全て褒め言葉として聞き入れそうだから気を付けないとな。


「それにしても、まさか旦那様も初ダンジョン挑戦日だった何て、運命以外の何物でもありませんわ!運命と言うものは存在するのだと、昨日ほど感じた日はありませんでしたわ♪」


「そっか。でも、何度も言うようだけど」


「分かっておりますわ!第一夫人の座は、これから旦那様と生活する上で、必ず勝ち取ってみせますので、問題はありませんわ♪」


「そうですか…」


「そうなのですわ♪」


 誠に遺憾ながら、俺はハーレムを作る事になってしまっていたのだ。リルの気持ちがどれくらい俺の方に傾いてくれているのか、それだけを悶々と考えていただけなのに…


 大体、俺がそんな器用な事が出来る人間なわけがない。リルだけが、俺と一緒になってくれればそれだけで良かったんだけどなぁ…まあ、そのリルが提案したようなのだが…何故だか、未だに分からない。


 良く考えてみれば、今後俺に嫁ぎたいと言う女子が現れなければ、ハーレムも何もないのだ。うん、考えたら問題ないか…?いや、リルを俺の嫁にすると言う野望が潰えるのでは?いや、無謀な野望だとは思ってはいたんだけども…


 彼女、ソリュに不満があるわけではないんだ。如何にも美少女な、ソリューネを妻とするだけでも俺にとってはあり得ないほどの幸運だと言えるだろう。


 しかし、しかしだ!やっぱり、妻とするならリルが良いんだよな…好みのタイプと言うやつなんだろうな。俺自身、リルみたいな娘が好みのタイプだった何て知らなかったんだ。だから、リルには何度も見惚れたし、何度もずっとそばにいて欲しいと思ったのだ。


「ソリュ、こんな事を君に聞くのはとても情けない話だと思うんだけどさ…」


「何でしょうか?」


 うん、急にお嬢様モード?になるのやめてくれ。余計に聞き難くなるじゃんか…でも、行くしかない!


「ええと…だ。その…リルが、俺のハーレムに加わってくれる可能性ってあると思うかな?」


 いや、分かるよ?リルと出会って2日目の娘に何聞いてるんだ?と思うんだろ?でもさ!女性同士だから分かる機微ってやつがあるかもじゃん!さりげなくハーレムって単語を使ってハードル下げたし!…あれ?ハードル上げてる…?


「え?本気で聞いていますの?」


「え?本気で聞いてますけど?」


「・・・旦那様って結構鈍感だったりしますの?」


「え?ど、どういう意味?」


「・・・悩みますわ、思ったよりも…チャンスでもあるのですわ…しかし、思ったよりも嫉妬が…」


「もしもーし?ソリューネさんや?ブツブツと何を言っているんだーい?」


 俺の問いかけにも答えず、何やらブツブツと独り言を呟きだしたソリュ。どうしたんだ?…ああ、俺が無理難題を押し付けたから困っているのか?そうだよな、さすがにほぼ初対面の相手の気持ちなんて分かるはずないよな…


「すまないソリュ、忘れてくれ。俺が…いつか直接聞くから」


 キリッとした表情でそう言った俺だったが


「え?良いんですの?いつかとか…10年後になりそうですわ」


「ぐはっ!?」


 八重真の精神に、絶大なダメージ!!俺もそう思うよ!寧ろ、10年経ってもうだうだやってそうで怖いよ!!


「一つ聞きたいのですけど…使用人…リルが旦那様のハーレムに加わっても、私も愛して頂けるのでしょうか?」


「それはもちろん」


 ここだ!ここで、しっかり俺の意見を言えば…ハーレム自体が無くなるんじゃなかろうか!?いけ!八重真!!


「もちろん!・・・ソリュにも愛を注ぐに決まっているじゃないか」


 お前えええええええ!!?何ひよってんだお前!?俺だけどさ!リルに対して申し訳ないと思わないのか!!俺だけどさぁ!!!


 言い訳させて頂くと、不安そうな表情のソリューネを見て、とてもじゃないが突き放す事が出来なかったんだ。だって、捨てないで!と、訴えかけてくるような揺れた瞳だったんだぜ?まだ何もしてないけど、何故か悪い事をしている気分になったんだ…俺の負けですか?


「旦那様ぁ!一生ついて行きますわぁ!!」


 そう言いながら、飛びついて来たソリュを受け止める。うん…我ながら流され過ぎてヒドイ。こうなったからには、責任を取ってソリュの事も愛するしかない。だけど、一番はリル何だからね!!・・・誰も得しないツンデレだなぁ…


「私を受け止めて下さった旦那様に、一つだけヒントを差し上げますわ」


「ヒント?」


「はいですわ。普通なら何とも思ってもいない相手に、自分の大事な物を預けたりしませんわ」


「ん?あ、短剣の事か?」


 そう聞き返すと、ソリュは微笑みで返して来た。いや、話の流れと関係ないけど近すぎてドギマギするんだが…


 でも、そうか…少なくとも、少しは俺の事を異性として気になる程度には見ているって事か?・・・仕える主人としてじゃないと良いなぁ…どうにも、リルには迷惑しかかけていないから自信が持てないんだよ、うん。


「仕方ありませんわ。今は、第二夫人として旦那様に尽くさせてもらいますわ♪」


「え?良いのか?第一夫人とやらじゃなくて?」


「今現在は、仕方ありませんわ。こんなに、旦那様に思ってもらえるなんて、リルが羨ましいですわ」


「え?・・・え!?」


 ボゥッと擬音が付きそうなほど、急激に顔が熱くなるのを感じた。いや、だってさ…思ってなかったんだ…リルの事を好きすぎるのがバレるなんてさ!?


「旦那様の照れた顔も、可愛らしくて好きですわ♪」


「可愛いとか男に言っちゃいけません!」


 恥ずかしいぃぃぃ!!!少し考えれば分かるじゃん!!バレバレじゃん!!少しは考えろよ、俺!!


「リルに嫉妬してしまいますが、彼女のお陰で旦那様の妻になれたようなものですわ。ですから、旦那様がリルに対してアプローチなさるなら、お手伝いさせて頂きますわ♪」


「いや、まだ妻にしてないんだけども…本当に手伝ってくれるのか?」


「もちろんですわ!」


 やったぜ!ソリュが手伝ってくれるなら、大分可能性が上がったのではなかろうか!!このままの勢いでリルに告白!!・・・は、断られたら立ち直るのに時間がかかりそうだから、もう少し探索者として頑張ってからにしよう、うん。


「それじゃあ…まずは、二人でレベルアップを頑張ろうぜ!!ソリュ!二人で探索者の頂点に立つのだ!!」


「分かりましたわ!お供させて頂きますわ!!」


 ソリュって、結構ノリが良いよなぁ…さすがに、探索者ランク10は厳しいと思うが、勢いって大事だから目標は高く行こうか!!


「って、ソリュさんや?腕を組んだままでは剣が抜けないのだが?」


「大丈夫ですわ!私が、旦那様の剣となります!旦那様は、わ、私を守って下さいね♪」


「それは当然守るけど…大丈夫なのか?」


「サラッと守ると言う旦那様が素敵過ぎて困ってしまいますわ…♪」


「会話が微妙にずれてない?大丈夫なのか?俺たちって??」


 そんなやり取りをしながら、カルカルダンジョンを進み続ける。広大な広さの、カルカルダンジョン第一層だが、俺にかかれば大体の位置を把握出来る。少なくとも、昨日歩いた道は全部記憶しているので問題ない。


「ダンジョンを迷いなく歩く旦那様、素敵ですわ♪」


「ソリュの旦那様フィルターが高性能過ぎて怖い件」


 フィルターが消えた時、目の前のへっぽこ男に失望しないで下さいね?


「旦那様!魔物ですわ!怖いですわぁ!!」


 怖いですわを連呼し、俺の腕にしがみつくソリュ。凄く嬉しいんですが、動き難いので加減して下さいな。


「怖いですわ!怖いですわぁ!!フレイム!!!」


「なっ!?」


 ソリュが片手をモサモサに向け、フレイムと掛け声をかけた瞬間、彼女の手から巨大な炎がモサモサへと飛んで行った。そして、ゴォォ!!と音が聞こえそうなほどの業火がモサモサを包んだ。


「え?は?ええっ!?」


「怖いですわ!怖いですわぁ!!」


 未だに怖いですわを連呼しているソリュに言いたい。森の中で、躊躇なく炎の魔法を使う君の方が怖いと!!誰もがきっと思うぞ!!


「か、火事だあ!?」


「あ、大丈夫ですわ。ダンジョンの地形は、不思議と燃えたりしないのですわ。壊しても、すぐに直りますわ」


「へ?」


 よく見てみると、燃えているのはモサモサだけだった。と言うか、よく見たらモサモサが4匹くらいまとめて燃やされていた…南無。


「あ、魔石になった」


「あ…怖かったですわぁ♪」


「まだ続けるのか?ソリュさんや…」


 と言う訳で?俺とソリュのパーティとしての初戦は、見事な完勝となった。俺にとっては、観賞に近かった気がするが…


「しかし、余裕だったな。どうしてこんな簡単に魔物を倒せるのに、ピンチになっていたんだ?」


「お恥ずかしい話ですが、上級魔法使いと言う珍しい職業持ちだった事で、調子に乗ってしまったのです。自分は特別な存在で、いくら魔法を使ってもまりょくが尽きる事はないと思い込んでしまっていて…」


「ああ、自分を制御出来ずに自滅してしまったと」


「はいですわ。本当に、あの時の自分を殴ってやりたいですわ!」


 本当に、過去に戻れたら手加減なく思い切り殴りそうな勢いで話すソリュ。気持ちは分からないでもない。俺も、強い職業持ってたらやらかしていた可能性が高い。お調子者だしなあ…俺ってやつは。


「何の前兆もなく、まりょくがなくなると魔法が使えなくなるのですわ。気が付いたら、まりょくが無くなっていて、派手に魔法を使っていたせいで、魔物が集まってきてしまっていて…」


「ああ…それは、詰む訳だな。そこに、俺が助けに入ったと」


「そうですわ!あの時の旦那様の雄姿は、生涯忘れる事はないと言い切れますわ!!」


 ソリュの俺推しがヤバイ。いや、嬉しいけどむずがゆすぎる。もう少し、オブラートに包む感じでお願いしたいものだ…贅沢言ってるのは分かってるけど。


「それでは!まりょくが尽きるまで、私が敵を燃やしますわ!!」


「おう…って、ちょっと待て!!俺が戦うから!!魔物が集まって来ちゃうから!!いざって時に、俺だけで戦う事になる未来が見えるから!!!」


 あぶねぇ!!危うく、トレントとタイマン再び!!になるところだよ!!って、すでにやって来てないだろうな!?


 キョロキョロと周りを見渡してみる。・・・うむ、トレントの姿は見えないな…マジで、良かった。


 しかし、別のが複数来ている。エッダー3のモサモサが2だ。うし!俺の腕前を見せる時だ!!


「ソリュ、下がってろ!俺一人で十分だ!!」


 そう言って、敵に向かって突進する!ソリュは、何故か手を組んで俺の雄姿を見守る姿勢となっていた。いや、ピンチになったら助けて下さいね?俺、すぐに調子に乗るからダメかもしれんよ?


 そんな下らない事を考えながら、接敵した!


「まずは一匹」


 やはり、トレントを倒してレベルアップしたようだ。敵の動きが面白いほど見え、モサモサの突撃をかわしながら真っ二つに切り裂くことに成功した。え?今の格好良すぎない?


「キャー!旦那様!!素敵ですわぁ♪♪」


 やべ、気持ち良いな!黄色い声援が、こんなに気持ち良いとは知りませんでした!!それだけで、彼女の価値があると言うものだ!!


 調子に乗った俺に、エッダーの手枝が複数迫って来た。


「フッ、届かんよ!!」


「キャー!!格好良すぎますわぁ!!」


 エッダーの手枝を、全て防ぐことなく切り捨てて見せた俺は、更に調子に乗った。ソリュからの声援も、そんな俺の天狗鼻を加速させる。


「さあ、まとめてかかって来るが良い!!!」


 俺は、手枝を失ったエッダー3匹を、順番に切り伏せて見せた。


「旦那様ぁ♪世界一、素敵ですわぁ♪♪」


 メロメロになって声援を浴びせてくれるソリュ。やばい、俺はどこまでも登れるんじゃないか?このまま、ランク10まで一気に駆け上がって…


「ぐはぁ!!?」


「旦那様!?この、毛玉!!燃えてしまえ!フレイム!!」


 調子に乗り過ぎた俺は、まだモサモサが一匹残っていたのを忘れて自分に酔っていた。そして、天罰とばかりにモサモサの体当たりを思い切り腹に貰ったのだ。


 そして、倒れ伏す俺を見て激怒したソリュは、モサモサを蹴り上げ、フレイムをお見舞いして燃やし尽くして倒したのだった。


「フッ…今日の所は…これくらいにして置いてやる…ガクッ」


「旦那様ぁ!!しっかりですわぁ!!!」


 こうして、俺の冒険は幕を閉じた。・・・訳はないが、一時中断となった。その後、昼食となったが、リルの美味しい手量の味が分からなくなるくらいの羞恥心を抱えながらの食事となったのだった。調子に乗る。ダメ。ゼッタイ。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。


一週間は毎日投稿したい。後、一日か…

次話も、宜しくお願いします。

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