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あっち向けおい

「淡島君、あっち向け、おいしない?」

 学校に復帰した玲奈が僕に、ゴミゲーの誘いをしてきた。玲奈はいつもゴミゲーのプレイヤーなので、ゴミゲーの誘いをすることは珍しかった。


「ルールはあっち向いてほいと同じだから、淡島君は普通にあっち向けほいをしてくれればいいよ。


 じゃあ、まず、じゃんけんからね。」

 玲奈は手を握って、じゃんけんの準備をした。僕もそれを見て、同じようにじゃんけんの準備をする。


「最初はグー、じゃんけん、グー」

 玲奈はそう言うと、じゃんけんのために握りしめたかと思った拳を、僕の顔面目掛けて、振り抜いてきた。僕は意表を突かれ、その拳を顔面にもろに受ける。僕は一瞬気が飛びそうになるが、何とか持ちこたえ、玲奈の方を見る。玲奈は笑っていた。


「私の勝ちだね。じゃあ、行くよ。あっち向け、おい。」

 玲奈はあっち向け、おいのおいの部分に合わせて、握っていた拳を開き、僕の右頬を平手打ちにしてきた。


 バチンと言う乾いた音が部室に響き渡る。僕はその平手打ちの勢いで、頭が左側に向いてしまう。


「やった。私の勝ち。じゃあ、もう一回やるね。最初はグー、じゃんけんチョキ。」

 玲奈は手をチョキにすると、僕の両目に、そのチョキの指を突き刺してこようとした。僕は今度はよけるように頭を下げる。玲奈のチョキは、僕のおでこに突き刺さる。


「私の勝ちだね。じゃあ、行くよ。あっち向け、おい。」

 玲奈は先ほどと同じように、おいに合わせて、僕の頭に拳を振り下ろした。脳が揺さぶる衝撃が僕を襲う。僕の頭は下を向いてしまう。


「やった。私の勝ち。じゃあ、もう一回やるね。最初はグー、じゃんけん……」

「ちょっと待ってくれ。なんでこんなことをするんだ。玲奈。」

 玲奈は僕を平手打ちにしようとして、一瞬止まったが、すぐに平手打ちを再開する。僕はその平手を右頬に食らう。


「私の勝ち。じゃあ、連続で四回、あっち向いておいするね。まずは右。」

 玲奈は右拳を握り、僕の左頬を殴ってくる。僕は右を向く。


「次は左。」

 玲奈は左拳を握り、僕の右頬を殴る。僕は左を向く。


「次は上。」

 玲奈は握った左拳を、僕のあごに向けて突き上げる。僕は上を向く。


「最後は下。」

 玲奈は右手と左手の指同士を絡めて、上を向いた僕の顔面目掛けて、その両拳を振り下ろす。僕はそれを食らうと、体中の力が抜け、首が座らなくなり、力なく頭を下に下げる。僕は下を向いた。


「ねえ、淡島君。聞こえているかな?このジャンパーに見覚えない?」

 玲奈は鈴音先輩とガラスめんこをした時に、先輩が着ていたジャンパーをカバンの中から取り出した。


「このジャンパーは鈴音先輩が私に似合うだろうって言って、私にプレゼントしてくれたの。なんだか普通のジャンパーと違って、赤いペンキみたいな飛沫が付いていて、かっこ可愛いジャンパーで、いいなあと思っていたんだけど、これ、ペンキじゃなくて、剛田先生の血だったんだね。


 校長室に呼び出されて、退学になったことを知らされた時に、そのことに気づいたよ。そのまま私は、退学になって、逮捕された。でも、逮捕されて一週間が経った頃、突然釈放されて、さらに、学校にも復帰できた。


 でも、もう私が学校に戻ってきた時、もう今までの学校とは違っていたの。校長は変わっているし、クラスの人数も半分に減っているし、席には花が置いてあった。


 なんで、皆はいなくなっちゃったの?なんで、花が置いてあるの?なんで、皆そのことを気にしていないの?


 淡島君たちは何をしたの?」


「……」


 パンッ


 部室の扉から聞きなれた銃声が聞こえた。その銃声と同時に玲奈が力なくその場で倒れる。


「玲奈ちゃん。ゆっくり眠っていてね。」

 鈴音先輩が部室の扉の前で、銃を構えていた。


「淡島君、安心して、これは麻酔銃。殺しちゃいないよ。」

 鈴音先輩は笑顔で倒れこんだ玲奈に近づいていく。


「やっぱり、玲奈ちゃんも壊れちゃったか。本当におもちゃってすぐに壊れちゃうよね。


 でも、私、そんなおもちゃを直すの得意なんだ。」

 先輩はナイフと針のようなものを取り出した。


「淡島君、ちょっと後ろ向いていてくれる?」

 僕は先輩の言うとおりに後ろを向いた。


「えーっと、ここをこうして、これをこうだね。」

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ・・・。」

 

「オッケー、淡島君、もう後ろ向いていいよ。玲奈ちゃん直りました。」

「……えっ、なんですか?何かあったんですか?」

 玲奈はいつも通りのちょっと引っ込み思案な性格に戻っていた。


「いやー、他のクラスのみんな全員には、○○○○しておいたんだけど、玲奈ちゃんに○○○○するの忘れちゃってた。ごめんねー、淡島君。また、怪我させちゃったね。」

 先輩は陽気に笑いながら、そう話した。


「淡島君、その顔の傷どうしたんですか?大丈夫ですか?」

 玲奈は心配そうに聞いた。


「大丈夫。こんな傷、まだ大丈夫だよ。」

 僕は右脇腹を触りながら、そのように言った。


「玲奈ちゃん。また七人みんなで、このゴミゲー同好会を続けていこうね。」

「……えっ、あ、はい、そうですね。」

 玲奈は状況に戸惑いながらも、返事をした。僕たちはまた七人で、これまで通りゴミゲー同好会を続けていけそうだ!

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