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坊主めくり

「坊主めくりをしましょう!」

 結実は白い息を吐きながら言った。僕たちは学校から離れた人通りの多い通りに立っていた。


「確か、僕の知っている坊主めくりは、外でやるものではなかったような気がしているんですが?」

「百人一首を使う方の坊主めくりじゃなくて、外でやる坊主めくりよ。まあ、実際やってみようか。」

 結実はそう言うと、行きかう人々に目を凝らすと、何かを見つけたように人ごみの中に入っていった。そして、結実は少し太った中年男性に話しかけていた。結実はその中年男性を僕の方に連れてきた。


「アンケートに参加いただいてありがとうございます。このアンケートは、最近巷で流行っているイケてるおやじ略してイケおじについての調査になっています。


 早速ですが、中々渋いファッションをされていますねえ。特にその帽子がいいですね。ちょっと近くで見せてもらえませんか?」

 そう言われた中年男性は、気分を良くして、頭にかぶった帽子を脱いだ。帽子が取り除かれると、頭には、脂っぽい肌色の頭皮が堂々と出てきた。


「ハゲとるやないか!」

 結実はそう言って、はげた頭を思いきりひっぱたいた。気持ちのいい音が人だかりの雑音の中に響いた。叩かれた中年男性は、最初は何が起きたか分かっていない様子だったが、段々状況を理解すると、禿げた頭に付いた赤紅葉の手形以外も赤くなっていき、茹で蛸のようだった。


「何をしてくれるんだね!」

「ハゲとるのに、喋んな!」

 結実はもう一度、中年男性の頭を叩いた。


「なんだね!君達は!制服を着ているということは学生だな!学校に抗議させてもらう!」

「学校に抗議ですか!」

「そうだ。そう教えたら、見ず知らずの人間をいきなり叩くことができるんだ!」

「もしかして、ハゲしく抗議するつもりですか?ハゲだけに。」

 中年男性はさらに顔を赤くして、怒っていた。その顔から今にも湯気が出そうだった。


「すいません。帽子は返しますから。」

 そう言って、結実はその中年男性の頭に帽子を被せた。そして、少し中年男性を落ち着けさせた。かと思うと、結実は今、被せた帽子を外した。


「何度確認してもハゲとるやないか!」

 結実はまたハゲた頭をひっぱたいた。




 それから色々とあって……


「つまり、帽子を被っている人の帽子を取った時、ハゲだったら一点で、最後に持ち点が多かった方が勝ちってこと。」

「ルールは分かりましたけど、ハゲをひっぱたく必要ってあるんですか?」

「ないよ。でも、楽しいじゃん。」

 

 頭いかれてるわ。


「じゃあ、僕もハゲひっぱたきますね。」

「よし、じゃあ、淡島の番ね。」

 僕はとりあえず先ほどの男と同じような帽子を被った中年を探した。すると、同じような中年を見つけた。なので、先ほどと同じように嘘のアンケートで騙して、結実の近くに連れて行った。


「……と言うことで、帽子を近くで見せてくれませんか?」

 その男性はにこやかに帽子を取った。帽子を取った頭には、ふさふさと髪の毛が生い茂っていた。


「ハゲとらんのかい!」

 僕は髪の毛のある頭を思いきりひっぱたいた。やはり先ほどのハゲ頭と違って、いい音はならなかった。

「チッ、ハゲじゃないといい音ならないじゃねえか。」




 それから、ゲームに従って、ハゲをひっぱたいていった。ハゲ散らしている奴からバーコードハゲ、ザビエル等たくさんのハゲの帽子をめくっていった。最終的に僕は七点、結実は六点で最終ゲームになった。


「つまり、結実は今からハゲを見つけないと、負け。例え見つけたとしても、僕がハゲを見つけることができれば、結実の負け。


 じゃあ、頑張ってハゲ見つけてきて!」

 結実は人だかりに目を凝らして、帽子を被った中年を吟味していた。そして、いくつかの中年を見逃した後、一人の中年を捕まえた。


「……と言うことで、帽子を見せてもらえますか?」

 その中年は帽子を外したが、禿げておらず、黒々とした頭が出てきた。僕はガッツポーズをして、勝利を確信した。しかし、結実は黒々とした中年の頭を凝視している。そして、何かに気づいたかのような顔をした。


「カツラやないかい!」

 結実は中年男性の髪の毛を数めるように、頭をひっぱたくと、髪の毛の束がずる剥けて、地面に落ち、ハゲ散らかした頭皮が出てきた。


「ハゲとるんかい!」

 僕は思わず、カツラがとれたハゲ頭をひっぱたいてしまった。




「じゃあ、僕の番。今同点だから、ハゲを見つけられなかったら、引き分けってことだな。


 よし、最後は特大のハゲで締めてやろう。」

 僕は今までの知識を使って、ハゲを探した。そして、もっともハゲらしい中年帽子を見つけた。僕は慣れた手順で、その中年を結実の所に連れて行った。


「……帽子を見せてください。」

 僕は祈るような気持ちで、中年の頭を見つめた。中年は帽子を取ると、出てきた色は……



 黒だった。


 つむじの肌すら見えない素晴らしい程の黒。結実は小さくガッツポーズをとっている。僕はカツラの可能性を考えて、中年の髪の毛を引っ張ってみるが、カツラではなかった。中年は怒りだしてきたが、僕はハゲの確定演出が外れてしまったショックが大きかった。


 中年は黒い汗をかいて、怒っている。僕は自分の手の平を見てみると、ぱらぱらと黒い粉が付いていた。


「ハゲの粉つかっとるやないかい!」

 僕は怒った中年の髪の毛をむしるように、かきむしるとぱらぱらと雨のように、黒い粉が落ちていく。すると、あれだけ黒かった頭から肌の色が見えてきた。


「ハゲとるやないか!」

 僕は今までよりも大きい声でそう言うと、ハゲ頭を強くひっぱたいた。叩いた頭からは、黒い粉が飛び散り、気持ちいい音が響いた。


 坊主めくり 勝者 淡島

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