4話
久しぶりの投稿です。今年初めてでもありますね(*‘ω‘ *)
私は湯浴みを終えるとリーンがいる寝室に行った。
ドアを開けるとすうすうと寝息が規則正しく聞こえる。どうやら本当に寝入ったらしい。私はさてと考えた。仕方ない。そっとドアを閉めてベッドに近づく。
「……リーン。お休み」
そう言ってリーンの頭を優しく撫でた。離すとベッドの反対側に行った。シーツや毛布を捲ると中に潜り込む。隣に眠る彼女とは離れた所にだが。こうした上で顎の辺りまで引き上げた。瞼を閉じたのだった。
翌朝、七の刻頃に目が覚める。半身を起こすとすぐ側に人の気配を感じた。そろりと見るとしどけない姿で眠るシェイリーンがいた。髪は枕やシーツに広がりちょっと扇情的である。あ、いけないな。すぐに視線を逸した。私は起こさないように気をつけながらベッドから降りた。
身支度をざざっとすませてから着替えも手早く終わらせた。急いで寝室に戻るとシェイリーンが目を擦って起きたところだった。
「……おはよう。よく眠っていたみたいだね」
「……おはようございます。アスト様」
「リーン。後でメイドを呼ぶから。まだ寝ていなさい」
私が声をかけるとシェイリーンは完全に目が覚めたらしい。ちょっと顔を赤らめている。
「……わかりました。すみません」
「いや。謝る必要はないよ。昨夜は遅くまで起きていただろう。今はまだ六の刻を過ぎたくらいだし。もうちょっと寝ていて良いよ」
「はい」
シェイリーンが頷くと私は寝室を出る。応接間にいた侍従のコルムに朝食の用意は出来ているかを訊いた。
「……用意はできていますよ。シェイリーン様の分はいかがしましょうか?」
「そうだな。軽食を用意してやってくれ。まだ、休んでいるから」
「わかりました。ではそのように伝えますね」
頷いて私はコルムが朝食を持ってくるのを待った。
食事を済ませる頃にシェイリーン付きのメイドが四人程やってくる。私が「寝室にいる」と言ったら皆、一様に驚きを隠せないでいるようだ。一番年かさのメイドがすぐに表情を真面目なものに戻す。
「……殿下。シェイリーン様の身支度は私どもにお任せくださいまし。お着替えなどは持ってきておりますので」
「ああ。頼む」
「でしたら。失礼致します」
メイド達は寝室のドアを開けてシェイリーンを起こしに行く。私は執務室に向かった。
大量の書類を決済していく。これでも第三王子ではあるから公務や執務はそれなりにこなしている。今日も溜まっているな。そんな事を思いながらペンを走らせる。執務室には私の他に補佐官が三人いた。一番年上なのがイアン、二番目がウェルセン、三番目がエルクだ。イアンは二十五歳、ウェルセンは二十三歳、エルクが同い年の二十ニ歳で。三人はとても優秀で頭も切れる。イアンは真面目で寡黙だが。ウェルセンは明るく社交的、エルクが穏やかで冷静と三者三様の性格をしていた。
「……殿下。考え事をしている暇があったら。仕事をしてください」
「……わかったよ。相変わらずイアンは堅いな」
「堅いとおっしゃるなら。もっと執務を増やしましょうか?」
「悪かったって。今のは冗談だ」
「……では。その書類を早く仕上げてくださいね」
私は頷くと決済を再開した。イアンは本当に見かけは穏やかで柔和な外見をしているが。中身はなかなかに手厳しいし言う事も辛辣だ。他の二人――ウェルセンやエルクは人当たりがいいし言う事も常識的なんだがな。ため息をつきながらも書類を捌いていった。
午後になり昼食をとった。一旦、自室に戻る旨をイアンに伝える。ちなみにイアンは婚約者のシェイリーンの兄でもあった。まあ、年は離れているが。シェイリーンは十八歳なので七歳くらいは離れているかな。そんな事を考えながら執務室を出る。自室まで歩いていく。一人ではあるが。影が目立たない所で守ってくれている。テクテクと廊下を進んだ。
自室に戻るとシェイリーンが応接間で紅茶を飲みながら寛いでいた。テーブルにはカットフルーツやスコーン、クッキーなど菓子類が並んでいた。それらを摘みながらシェイリーンは食後のお茶を楽しんでいたらしい。
「……あ。アスト様」
「リーン。朝食や昼食はもう済ませたのかい?」
「……ええ。朝食はコルムさんが気を利かせてサンドイッチやスコーンなどを用意してくれました。昼食も軽くいただきましたよ」
その言葉を聞いてホッとした。シェイリーンは見かけによらず、好き嫌いはあまりない。食が細い方ではあるが。けど女性で言うなら普通かな。
「リーン。もう公爵邸に帰ってもいいよ。父君や母君も心配しているだろうから」
「そうさせていただきます。何から何までありがとうございます」
「……ああ。じゃあ、私はそろそろ戻るよ」
「はい。お仕事、お疲れ様です」
シェイリーンはにっこりと笑う。私は近づくと彼女の髪を軽く撫でた。そうしてから執務室に戻る。シェイリーンが真っ赤になっていたのには気づかなかった。
廊下に出るとコルムが苦笑いしている。それには気づかないふりをした。執務室に改めて向かったのだった。




