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パパへ
元気にしていますか。私は元気です。
毎日のお仕事ご苦労さまです。
先日、町の人が誰も相手にしてくれなかった私にとあるお兄ちゃんたちが助けてくれました。リーちゃんを神殿の中に入ってまで捜してくれました。
だから、この前に依頼のお手紙がパパのところへ届いたと思いますが、もう平気です。
なんでって、そのお兄ちゃんたちがナズーをやっつけてくれたからです。そのお兄ちゃんたちはとっても強いみたいです。みたいです、っていうのは、実際に私は見ていなかったからし、わからないからそう思いました。
それでは、次に会えるのを楽しみにしています。
クルレラより
そうそう、このお手紙を渡してくれた人こそが、
そのお兄ちゃんたちです。
お姉ちゃんの方は性格が悪いけどね。
クルレラからのもう一つの依頼――それは彼女の父親にお手紙を届けることだった。その届け先はフレイヴとカムラの目的地でもある『英傑の町』だ。その町がどのような町であるかを二人はよく知らない。ただ、非国家間的組織として名高い『戦友軍』というナズー退治専門の軍団の総本山であるということぐらいしか知らないのである。その情報すらも先日、情報屋に教えてもらったに過ぎない。
フレイヴはその英傑の町というところがある国の東側は来たことがなかった。初めてこの町の大地を踏みしめる。どこか新鮮な気がしていた。一方でカムラはそのような気分にはならないようである。確認する際に見せてもらった地図、この町と自分が知っている地図と照らし合わせてみると、一応は知らない場所。初めて来た場所になる。それなのにである。
英傑の町の中はこれまで見てきた町と比べると、いささか武骨とも呼べた。いや、それは正しい表現なのかもしれない。町行く人々のほとんどが武装をしているから。彼らは戦友軍の一員なのだろう。フレイヴたちみたいな旅人というような人は見当たらない。だが、今の二人にとってどうでもよかった。クルレラから受け取った一通の手紙を取り出す。
「あの子の親父さんを探せばいいんだっけ?」
手紙を一瞥するカムラは確認するようにして、フレイヴにそう訊ねた。それに彼は頷くと「そう」と周りを見渡す。
「名前はグスカさんだって。この町にいるらしいけど、誰かに訊く方が早いかも」
「だろうね。この町広過ぎる」
ということで、偶然にも通りかった一人の男性に声をかけてみることに。フレイヴは「あの、すみません」と呼びかけた。その声に応えるようにして、その男性は「なんだ?」といかにも強者と言うような声音で反応を見せる。
「俺に何か用か」
わおっ、額からあごにかけて歴戦の戦士とも呼べるような傷を持っていらっしゃる。きっと、独りであっても、余裕でナズーに立ち向かおうとする力を持っているんだろうな。威厳ある戦士にフレイヴは少しだけ仰け反りながらも、クルレラの父親であるグスカについて訊ねてみた。すると――。
「誰だ、それは。戦友軍か? そうであっても、俺はそんなやつは知らないぞ」
知らないらしい。こんな強面でワイルドなおじさんは戦友軍ではないのだろうか。それについてカムラが若干失礼感のある質問をすると「戦友軍だよ」とどこかキレ気味ながらも答えてくれた。
「俺は独立の国の人間だからな。新王国の連中の顔は覚えていないんだよ」
「えっ、国が違うだけで覚えていないんですか?」
「そもそも、仕事でもほとんど顔を合わせないからな。お前たちが探しているやつの居場所を知りたきゃ本部の方に行くか、新王国人の誰かにでも訊いてみな」
顔に傷のある男がそれだけ言い残すと、その場を後にした。意外にもヒントをくれた優しいおじさんに感謝しながらも、二人はこの英傑の町にある戦友軍本部の方へと向かうのだった。




