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生まれ育った場所。故郷である悲しみの村を失ったフレイヴ。彼は第二の故郷となるはずだった父親の生まれ育った町――『涙の町』すらも失ってしまった。地図上から町や村が消される。滅多なことではないにしろ、この短期間で消失するのは珍しいことだった。それだからこそ、事情を聴取している軍人は眉をひそめるのである。
フレイヴ・アイザニラ。年は十五。所持物は赤い本一冊のみ。彼が涙の町を訪れたのは自身の故郷を失ったがため。祖母の家にお世話になろうとしていた。そんな最中、悲しみの村が地図上から消えてしまって三日も経たないというのにだ。二回も続けて彼だけが生き残った。それ以外の人物はナズーになってしまっている。軍がフレイヴのことを把握しているのはこれらの情報だけ。
「他に生き残りはいなかったんだね?」
軍人は伏し目がちになっているフレイヴにそう訊ねる。これに彼は小さく頷いた。正直言って、あまり受け答えをしたくない様子。それはナズーのショックによるものなのか。それとも、何かしらを知っているからなのか。
「きみ、これからどうするの?」
「母の実家を訪ねてみようかと」
フレイヴにはその選択肢しか残っていなかった。自身の言葉に心がしめつけられるようにして、赤い本――カムラを強く握りしめる。あまりにもつらいことが起こり過ぎた。それでも軍人から解放されて彼女は言うのだった。
「今の自分の気持ちをあたしに書いてみればいいよ」
そうすれば、今の複雑と化した気持ちは少しばかり落ち着くだろう。その言葉にあやかるようにして、とあるページを開いた。そのページは以前『寂しい』と書いたところだった。そこに記述された文字の下に眉根を寄せながら一言書いた。
『つらい』
「うん、フレイヴの気持ちは痛いほどわかるよ」
「ありがとう、カムラ」
それがたとえ、本心でなくとも嬉しかった。共感してくれようとする友人がそこにいるのだから。
「フレイヴのおじいさんちの家に行って、きみもあたしも落ち着いたら、あたしは行くよ」
「え? 行く? どこに、ああ……」
フレイヴは思い出す。カムラが本来何かをしようとしていたことを。彼女がしなくてはならないことを。赤の他人なのに、ここまで自分に付き合ってくれた。そこは感謝しないと。
「大丈夫。今度こそ。傷は大きいかもしれないけど」
「ぼくは大丈夫だよ」
さあ、行こう。今度は母方の実家の村だ。そこも比較的安全な場所だとは聞いている。安心できるはず。フレイヴは大きく息を吐いて西の方角にある町を目指すのだった。




