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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十章 神様の日記と刺客◆
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114ページ

 今がしたとんでもない発言がカムラの耳に入ってきた。女性の声が聞こえてきたから。その声は「殺人鬼」だと言ったのだ。殺人鬼と聞いて、思いつくのがアルフレッドの存在。ということは、彼はこの鞄の持ち主と接触した。しかし、その接触によって思わぬ展開になってきた。


 鞄の中にいるから外の声が聞こえにくい。列車が走る音も聞こえているから、なおさらだ。明らかに何かがおかしいことはわかった。おかしな話だ。先ほどまでフレイヴの隣にいたはずなのに。なぜに自分は人の鞄の中にいるのか。ただの古びた本なのに。考えられることは一つだった。


 ケレント関連。ケレントのもとを離れる際、幾人かの男たちの慌てたような声は聞こえていた。本はどこへ行った、とか。どこへ移動させた、とか。実際は自分が人の姿に戻って、逃げただけだ。


――あの男の関連って言ったら……。


【我々はついに世界を変える本を手に入れた】


――そうだ、あいつはあんなことを言っていたのを思い出した!


 これまで、フレイヴを島から脱出させることが優先的だと判断して、頭の隅に置いておいただけだった。あとで、なんとか探ればいいと判断していたんだった。魔王をどうにかした後にどうにかすればいいと――なんて浅はかな! 世界を変える本だなんて、自分たちしか知らないような物のはず。


 もっとも、情報の町では取り扱っていない情報のはずだった。その世界を変える本――『神様の日記』という代物は。いや、ただの情報屋と裏社会のトップが持つ情報では格が違い過ぎるだろう。それに、国も違えば知っている情報なんて変わってくる。ならば、今にできることは逃げることだった。こうなれば、強引に人の姿に戻って逃走を謀るか?


――というか、あたしは神様の日記じゃないんだけどな。


 そう考えていたときだった。急に体の向きが変わった。動けないからどうすることもできない。何があったのか、そう思考回路を変えていると――。


「返してください!」


 外からフレイヴの声が聞こえてきた。そうか、自分を手に入れるために逃げているのか。そう、逃げているから身動きできない体は勝手に動かされる。鞄の中にある物が体に当たって痛い。というか、この鞄の持ち主は整理整頓が下手くそだな。


――しかぁし! 裏社会における首領がなんだ。それがどうした。こちらとら、巨大王国の相手をするためにクーデターを企てたこともあるんだぞ! つーか、ほとんどが独り対世界をしているようなもんだ。今更そんなものに怖けつくわけ――。


「ねぇだろっ!」


 もういい、と言わんばかりに、カムラは鞄の中で人の姿になり出した。周りにバレてしまっても構わない。だからなんだというのだ。どうでもいいわ。


「おらぁっ!」


 カムラは強引に人の鞄を突き破って出てきた。最初に、視界に入ったのは流れる外の景色。それも自らの足で地に着けたとき、すぐに理解できた。ここは列車の外――わかりやすく言えば、列車の上にいるのだと。


「カムラっ!?」


 自分を呼ぶ声がしたかと思えば、少し離れた場所からフレイヴが列車内からこちらへと出てくるのが見えた。


 自分を盗ったとされる人物は中年女性。見た感じ、ケレントと関連があるのかと言われると――難しい。誰だ、このおばさん。わからないが、ここで真実を一丁言ってやろうじゃないか。


「ここに神様の日記はねぇんだよ」

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