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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十章 神様の日記と刺客◆
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112ページ

 いつの間にかいなくなってしまったカムラ。彼女は人間の姿に戻っていないはずだ。それこそ、人の目があるから。そう考えるならば、答えは一つしかない。誰かが本の姿をしたカムラを持ち去ってしまった、という事実。その誰かとは誰なのか。列車は動き出している。三人はこの車両内にいるということを信じて探し回るのだが――。


「なんで似た物が大量にあるんだ?」


 自分たちがいる車両には乗客よりも、すべて白紙のページであるカムラの偽物本がそこかしこにあったのである。まるで自分たちに本物を見つけられないように仕組んでいるように思う。


「どうやって探す? 他の車両も見てくるか?」


「ええ、もちろんですよ」


 頷くフレイヴに同調するようにして、三人は別の車両へとカムラを探しに行くのだった。

 どうやら眠っていたようであり、目を覚ますと周りは真っ暗だった。夜になるほど寝ていたらしい。フレイヴは自分を起こさずにしてくれていたのだろう。ここまで暗いのだ。これなら、人の姿になって列車内を散歩しても問題はないだろう。そう思って、少し本の体勢を変えようとするのだが――動けなかった。ページを開こうとする動作もできやしない。体が固まってしまったようだった。


――なんで?


 声を上げたくても、もしもを考えて発することができなかった。こんな状況で考えられることは、ここは夜の列車内ではないということになる。一つだけ気掛かりなことがあるから。自分は一度、列車移動で夜の車内を見た記憶がある。そのときは常夜灯がついていたはずだ。というか、流石に小さな明かりぐらいはつけるだろうに。車掌さんが見回っている最中にこけてしまうぞ。なんだったら、他の乗客も同様。だから、考えられることは一つ。フレイヴが自分を鞄の中か何かに入れたということ。そうなってしまえば、人の姿になるのはキツイ。今は動けない状態ではあるにしても、人の姿になると絶対にキツイ。そう断言できる。


 しかしながら、フレイヴはどうして鞄に入れるという行為をしたのだろうか。何があったのだろうか。気になって仕方がないのか、光って現状を確認しようと試みた。本の姿とは言え、視界はある。本に目はついていないのだが。自身の体を光らせ、周りを確認する。自分の周りにはタオルや服やらがあった。よく見るような旅行セットか。


――あれ、待って?


 ここで矛盾点を見つけた。


――フレイヴって……旅行鞄なんて持っていなかったよね?


 記憶で思い出すは――フレイヴは手ぶらだった。いや、そもそも彼自身はほぼ身一つで自分と共に旅をしている。たとえ、オルチェに新しい服を買ってもらったにしても、一着のみ。以前の服はあまりにもボロボロだったため、処分したはずだ。


 だとするならば、オルチェの仕業かとも思った。いや、それはないはずだ。あの男がいくら自分の敵だと言っても――やるならもっとひどいことをするはずだ。それこそ、すべてのページを破り、ごみ箱に捨てるとか。あの野郎ならやりかねないよね、なんて思ったり。アルフレッドに至ってはおそらくこのような閉じ込めはしないだろう。


 可能性として考えられるならば、オルチェ。だが、そういうのはフレイヴが咎めるはずだろう。あいつは彼の忠実なる下僕と成り果てた。可能性があっても、ありえないという結論に達する。それならば、と一つの仮説を立てる。


――誰かが間違えて自分を持って行ってしまった?


――えっ、それって、ヤバくね!?


 列車が動いている音が聞こえてはいるにしても、フレイヴたちと同じ車両にいるとは限らない。頭の中が不安でいっぱいになる――カムラは「助けて」と口にすることができない。この歯痒さに、彼女が移した行動は――。


――フレイヴたちが気付いてくれたら!


 あまり好ましい作戦とは思いがたいが、カムラは本の姿の状態で自分の体を光らせることにするのだった。


――お願い、フレイヴ! あたしに気付いてよ!?

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