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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十章 神様の日記と刺客◆
111/263

111ページ

 列車は途中の駅で停まり、しばらく時間が経って再び走り出した。すでに駅から遠ざかって、町は小さくなっている。そんな風景をぼんやりとフレイヴは窓から眺める。彼はどうも故郷のことを考えているようだった。


 向こうの方から駅内で購入したと思われる酒瓶を手にしたオルチェとアルフレッドが戻ってきた。彼らはこうしてのんびりとお酒が飲めることが楽しみのようである。そうして、二人が隣の座席に腰掛けたときだった。


「あれ、お嬢は?」


 アルフレッドにそう言われて、フレイヴは怪訝そうにする。何を言っているのだろうか。駅に降りないつもりだったから、ずっとここでカムラと待っていたのに。そう、自身の隣に目をやった。


「あれだよ、おじさん。大方、あいつがうるさかったから、鞄の中に突っ込んだんだよ」


「いやいや、お嬢にそんなことはしないだろ。それに、お嬢もお嬢で自分に置かれた状況を理解しているから――」


「いないっ!?」


 フレイヴはアルフレッドの言葉を遮るようにして、声を上げた。少し離れたところで乗車している客が声を気にしてこちらの方へと注目し出す。いない、と言ったのだ。これに二人は「え?」と感嘆を上げる。


「はあ? ちょっと、それはどういう意味だ? えっ? 確か、停まっている間は……」


「ぼくはずっとここにいましたよっ。隣にはもちろん――」


 列車が停車している間、フレイヴはカムラと共に席を移動せずしてここにいたと主張する。まさかとは思いたい。誰かが持ち去ったとか――。


「あんまり考えたくないが、探してみるか。捕まえたら、軍に突き出してやろう」


「もちろんですともっ」


「ほどほどにな?」


 普段は温和なフレイヴがここまで躍起になっているのだ。大人しい人がキレたら怖いという言葉があるように、まさしくそういう人物であるのだろう。そうだった、彼は言っていた。フレイヴとカムラはあまり考えずに、相手に対して特攻してしまうことがあるらしい。だったら、この状況を放置していたら――もしも、やり過ぎだと思う前に止めなければ。


 とにかく、本の状態であるカムラはどこに持ち去られたのか。一緒にいたとなると、単独行動はありえないだろう。本の姿ではページを開くぐらいしか動けないのだから。三人は自分たちがいる車両を捜索してみることに。三人が座席から離れようとしたとき、あの赤い本はすぐに見つかった。フレイヴが座っていた座席の前の方にだ。彼女はここに自力で移動したのか? 色々と疑問が残りながらも、この本がカムラであるかの確認をするために、ページを捲ってみた。ペラペラと音を鳴らしているのだが――。


「しかし、早々に見つかってよかったよなぁ」


「ったく、人騒がせな」


「違うっ!!」


 すでにカムラは見つかったと思っていたオルチェとアルフレッドだったが、フレイヴはまたしても大声を上げた。先ほどよりも大きい。


「は? 違う?」


「これ、偽物です!」


 二人に見せる赤い本の中身は一切何も書かれていなかった。そう、本物はフレイヴが自分が思っていることを記入しているからわかるのである。それならば、なぜに偽物の本があるのだろうか。

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