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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十章 神様の日記と刺客◆
110/263

110ページ

 理由は軍人になりたくなくて。そんな理由でオルチェは育ててもらった家を出た。いや、逃げた。フレイヴと同じ十五歳のときに。軍入隊の一年前だった。最低な生活を強いられることになるが、それでも構わなかった。あの息苦しい家に帰らなくていい分、自由というのは気楽だった。別に泥水啜って生きていても問題はなかった。それほどまでに自分はそうしていたいと思っていたから。


 逃げに逃げた先には新王国と独立の国の国境に位置する忘れられた森へと足を踏み入れた。そこで出会った――光って動き、しゃべる石像。それはオルチェにすべてを教えてくれた。彼がクラッシャーの囮役として存在していたこと。この世界に生きている者たちが知らない過去。魔王の正体。神様の日記。すべてだ。


 当時は石像の言っていることがわからなくて、理解できていなかった。それでも、それが嘘だろが何だろうが信じたいと思っていた。だから、必死になって理解しようと色々調べまくった。胡散臭いと思っていたとしても。半信半疑になりながらも、今まで生きてきた。


「おじさんは……魔王にとって、どんな駒なんだろうな?」


 建前は自分たちの味方にしても、本来は魔王の味方なのかもしれない。どこまでが本当で偽物なのかもわからない。ただの、この世界における不具合ということだってあるのだから。それはアルフレッドも同様で「知らん」と一言で終わる。


「俺の場合は、自分の意思とは関係なくだからな。魔王が作り上げたと言うならば、そいつはこの世界に殺人鬼が必要だと思っているってことだろう? 俺はそのためだけに生まれた。ひどい話だよ」


「もっともで片付けたくない話ではあるよな。魔王は何を目指したいのか。どういう世界が所望なのか。ナズーを作って何をしたいのか」


 誰もが魔王の思う理想郷を想像できないのだ。そんな彼の望みを理解できる者を挙げるとするならば――。再びオルチェはカムラの方を見た。すでにフレイヴは彼女への書き込みは終わっているようで、本を閉じようとしている。そうだ、カムラならば。魔王の本来の存在と同等である彼女ならば、理解はできるのかもしれない。しかし、それを訊いてどうするのだろうか。本人が知らない、わからないと言えばそこまでである。仮に訊いたとしても、自分たちがどうこうできる話ではないのも十分にわかりきった話だ。ならば、どうするべきなのか。これは事の成り行きに任せるしかなかった。きっとあの二人もどうしようもないはず。もう運命に身を委ねるしかないのか。


 そのようにして、考えるしかない四人を乗せた列車は途中の駅で停車するのだった。

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