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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第十章 神様の日記と刺客◆
108/263

108ページ

 揺れに揺られて半日が経とうとしていた。四人――オルチェを交えたフレイヴたちはまた列車の中にいた。今回も当たり前のようにして、カムラは本の姿になっている。この列車代はオルチェが出しているのだった。


「悪いな、俺までも」


 まさかアルフレッドの分も出るとは思っていなかったようで、彼はどこか申し訳なさそうにそう言うが――。


「まま、気にするなよ。一本どう?」


 オルチェは気にしていない様子でタバコを勧めた。アルフレッドは勧められたならば、断れまいとして、どこか嬉しそうにそれを受け取った。ちなみに彼は二度も新王国の軍人たちに捕まらないようにして、ある程度の変装をしている。無精ひげを剃り、服も小綺麗な代物を着用していた。服を新調したのはアルフレッドだけではない。フレイヴとカムラもだ。


「オルチェさん、服代……」


 現在一文なしのフレイヴにとって、恐れ多いようだ。不安そうな表情でお金のことを気にしている様子。


「構いませんよ、気にしないでください。フレイヴ様がお召しになっていた物はボロボロだったので」


『そうだよ。こいつはフレイヴの下僕だよ。搾れるもん、搾り取らないと損するよ。』


 独りでに開いたカムラの本。何もなかった白紙のページにその文章が浮かび上がってきた。それを見たオルチェはこめかみに青筋を立てる。咥えていたタバコを歯で齧るように噛んだ。


「フレイヴ様――」


 何かを言おうとするが、フレイヴは「あの」と眉根を寄せる。


「いくらなんでも、ぼくを様付けするのはちょっと止めて欲しいんですが。それに、前のような言い方でお願いできますか」


「むっ、フレイヴ様がそう言うなら」


「…………」


 オルチェはフレイヴに対して畏まらなくてもいいとわかると、これまでのような態度で「あのさぁ」とページを開いた状態のカムラを指差した。


「それ、風でページが捲れてるぜ。適当に風が当たらない、邪魔にならないどこかに置いとこうぜ」


『冗談じゃない! お前がそうなればいいのに!』


「こいつ、これでもこの調子か」


 本になっても態度が相変わらずのカムラに鼻白むオルチェ。そんな彼に紫煙を燻らせるアルフレッドは同情していたが、自分と同じような状況ならば、平行線を辿るだけだろう。何かしら話題を変えてみようか。


「ところで、俺たちはどこに行くんだ?」


「ああ、新王国の首都『秘匿の都市』だよ。そこで軍からナズーの情報を片っ端から集めるんだ」


 次なる行動を聞いて、フレイヴとアルフレッドは眉をしかめた。理由は、二人は指名手配書が回っているような人物であるから。そのことを聞いたオルチェは笑い出す。


「なんだ、流石は俺のご主人様じゃねぇか。だてにクラッシャーなんて言われていないな」


 それが誉め言葉だとしても、嬉しさは微塵もない。フレイヴが唇を尖らせていると「それもそうだよな」と短くなったタバコの火をオルチェは消す。


「俺としてはそうしたいが……まあ、秘匿の都市に着くまで二日もある。きちんと考えるさ」


「え」


 三人にとって、予想外の時間らしい。それもそのはずだった。現在、列車に乗って半日も経っているのである。その驚きの表情を見てオルチェは「当然だろ」とたじろいだ。


「南の方から首都までどれぐらい時間がかかると思っているんだ。だから、俺は徒歩じゃなくて列車を選んだんだよ」


「それじゃ、独立の国の首都よりも――」


「遠い。正直に言わずとも」


 四人の列車旅はまだまだ始まったばかりであった。

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