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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第九章 魔王とこの世界の駒◆
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107ページ

 どちらかと言うならば、敵として存在するはずだったオルチェはフレイヴに対して――。


「今から、私はフレイヴ様の忠実なる下僕でございます。私めに何なりとお申しつけくださいませ、ご主人様」


 ただでさえ、頭の容量越えに参っているのに。これ以上、困惑させないで欲しいという気持ちがフレイヴにとって一番強かった。


「オルチェさん?」


 言葉が見つからない。それはカムラもアルフレッドもである。今までこのような素振りなんて見せなかったはずなのに。


「あんた、頭でもイカれたの?」


 逆に心配になっているのだろう。カムラがそう問い質すと、オルチェは「正常だ」と跪いた状態で返した。


「俺はこの世に生を受けたときからクラッシャーの囮役として存在している。それはクラッシャーを倒すという使命があるお前も同じだろ? 神様の操り人形さん」


 カムラを若干ばかにしたような物言いでそう言うと、立ち上がってアルフレッドの方を指差す。


「それにフレイヴ様の話を聞く限りだと、おじさんは魔王の影響だって言ったか? それ、魔王が作り出した存在だって可能性もあるかもしれないだろ。この世界のシステムの不具合っていう可能性が高いけどよ」


「はあ?」


「まっ、こんがらがるのも無理はねぇだろ。今のこの世界は魔王が理想を目指した世の中なんだから。俺たちはその駒として動いているに過ぎない」


 オルチェは言う。この世界は魔王が作り上げたゲーム世界のような物だと。


「魔王が何を目的としてこの世界を創ろうとしているのかは知らん。が、俺が知っていることを一つだけ挙げるとするならば……」


 小さく息を吐くと、カムラの方を見た。その視線に彼女は小さく肩を強張らせる。


「お前、あの石像と魔王に会ってどう思った?」


「どうって……」


「なんで、魔王が『神様の日記』を持っているんだ、って思っただろ?」


 その問いにカムラは答えない。ただ黙って俯いているだけ。


「事情を聞いているはずだろ? あの石像から。この世界になった理由とやらを」


 そう、これらの話を照らし合わせて一つだけわかることがあった。それは、カムラはもちろんとして、あの場にいたフレイヴもアルフレッドも。内情を知るものならば、予想はつくのだ。


「魔王は本来お前と同様の使命を持っていた」


 その場に沈黙が訪れる。空気がとてつもなく重たかった。誰も一言も発さない。そんな中、どれほどの時間が経っただろうか。実際には一分にも満たなかったが、彼らにとって体感時間は三十分経ったように思えた。


 カムラは小さな声で「どうしたらいいの?」と嘆いた。


「あたしはクラッシャーを倒すためだけに存在している。魔王は……ナズーを生み出した。でも、あたしと同じ使命を持っていた。魔王は……フレイヴのことを……。それって――!」


「世間論を信じれば?」


 一見突き放すような一言であったが、なぜかそれで納得したいと思っているようだった。


「本来、クラッシャーとは世界を書き変えたやつのことだ。フレイヴ様は神様の日記になんて触っていないし、書き込んだりもしていない。それに、魔王はナズーを操っている。そのナズーは世界の人々にとって脅威だ。あとはわかるだろ?」


 それでもなお、カムラはどこかためらいを見せているようであった。そんな彼女にフレイヴは優しく手を握ってあげる。


「カムラがここまでの未来に飛ばされたのは、魔王がクラッシャーに成り下がったからだと思う。それを止めるために、ね」


「…………」


「きみは……ぼくのやりたいことをいつも尊重してくれた。それならば、ぼくはカムラのやりたいことを尊重して、手伝ってあげるから。約束しただろ?」


 元より、自分たちの目的は一致しているようなものだ、とフレイヴは言う。それに続くようにして、アルフレッドも頷いた。


「俺の場合は……ちょっと、変な発作みたいなのが出てくるかもしれん。だが、二人の言葉が偽物じゃない限り、手伝いをするつもりだ」


 いくら説明を言っても、事実は事実であり、信じてもらえなかった。だが、この二人は見ず知らずの人間を信じてくれた。それが嬉しかったのだ。それだからこそ、これから先何が起ころうとも、責任もって見届けたいとアルフレッドは思う。


「みんな……」


「元に戻そう。ナズーのいない世界に」


「うんっ」

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