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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第九章 魔王とこの世界の駒◆
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106ページ

 拘束された己の体。魔王に操られた仲間。この絶望的状況。アルフレッドは自分の意思とは関係なく、動けないフレイヴに刃を仕向けようとしていた。死ぬ、という恐怖心が胸の奥底から湧き出てくる。あふれ出てくる。止めることは、一切知らず。


「フレイヴ!!」


 ああ、死にたくない、という気持ちがあっても、万策が尽きている状態では諦めも早い。自分たちは魔王に立ち向かえるほど強い人間ではなかったということになる。もう目的も、望みも叶いそうにない。このままここで死ぬだけ。それだけだ。そう思っていたときだった。その場で嫌に響く金属の音がフレイヴの耳を通り抜ける。目を閉じていたのだからわからない。何があったのか、と――そっと目を開けてみると、そこにはまた彼を守らんとしてあの動く石が攻撃を防いでいたのだ。先ほど魔王によって破壊されていなかっただろうか。それなのに、である。もちろん、アルフレッドも誰もが戸惑いを隠しきれていない。


「なんで……!?」


 そう言うのはフレイヴでもなければ、アルフレッドでもなかった。魔王だった。誰よりも驚愕しているようである。もしかして、この石像は魔王の味方だったのか?


 なんて考える暇を光る石像は与えてくれなかった。


「あとは私に任せてください」


 それだけ言い残すと、二人を掴み上げて――忘れられた森の外へと出すようにして投げつけるのだった。

「こんなモンか」


 とある遺跡前にて。一人の赤髪の男――オルチェが何やらメモをしているようである。どうも戦友軍の仕事をしている様子。


 さて、遺跡調査も終わったことだし、近くの町で一杯飲もうかなと考えていると――どこからか、情けない声が聞こえてくるではないか。後ろの方からだった。誰だ、こんなところで変な声を出しているのは。ナズーの相手だったら、面倒だなと考えつつも、オルチェが振り返ると――。


「うぎっ!?」「ぐぁっ!?」「ぶぐっ!?」


 上の方から二人の誰かが降ってきた。オルチェの上に。そのおかげで上手いこと下敷きになる。その二人の内、一人が握りしめていた不思議な形の剣が地面へとこぼれた。途端に、その剣は少女の姿になって。


「いったぁ……」


 体を強く打ったらしい。痛そうに背中をさすりながら、オルチェの上に乗った誰かに「大丈夫?」と声をかけた。


「なんか、飛ばされたみたいだけど……フレイヴ」


 オルチェの上の乗っている誰か――フレイヴは「うん」とあまり大丈夫ではなさそうな声音で答えた。


「アルフレッドさんは?」


「おお……。あっ、黒いの取れた!」


 もう一人はアルフレッドだった。そう、三人は光る石像に助けられて、森の外へと投げ飛ばされた。その先がオルチェの上だったということだ。だが、少女――カムラは下敷きになっている彼の心配など一切しない。するはずがない。したら、したでそれは奇跡とは少し言い過ぎたか。


「よかった。二人が無事なら、どこか落ち着ける場所にでも行こうよ」


「おいっ! 人の上に乗っかっておいて、俺を無視する気かよっ!」


 邪魔だ、どけ。と、まだ上に乗っていた二人を強引に押し退けた。三人は忘れられた森に向かったはずなのに、どうしてここにいるのかという不思議よりも、怒りの方が強かった。


 ようやくオルチェの存在に気付いたフレイヴは「オルチェさん!」と会いたがっていた様子。それもそうだ。あんなことがあったのだから。


「オルチェさん、ぼくたち、忘れられた森に行ったんですけど――」


「おい、俺の心配はしてくれないのかよ」


「そっちよりも、報告が優先でしょ」


 余計な茶々を入れるカムラを睨みつけた。ああ、こうして喧騒している場合じゃないのに。だが、今回は宥め役は要らないようだ。すぐに「それで?」と妥協してくれたのだから。


「随分と派手な帰還だな」


「ええ。実は――」


 フレイヴは事細かに報告した。光る石像のこと、アルフレッドが魔王の影響で自制が利かなくなるほど自分たちに攻撃をしてきたこと、魔王のこと。そして、魔王が自分に対して「クラッシャー」と言っていたこと。


 その話を聞いたオルチェは目を丸くすると、突如としてフレイヴの前で跪いた。そして、こう言い出すのだ。


「ご主人様」

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