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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第九章 魔王とこの世界の駒◆
105/263

105ページ

 黒い鎧はフレイヴのことを「クラッシャー」と言った。それはこの場にいる三人の耳にはっきりと聞こえたのだ。空耳でもない、きっちり、はっきりと。それの言葉の意図を考えている暇なんてなかった。なぜならば、こちらの体勢が整う前にして攻撃を仕掛けてきたのだから。また、あの重たい一撃が来るのか。そう考えただけでも、身構えないと。


「だ、はっ……!?」


 受け止める攻撃は息をするのでさえも苦しい。ナズーの攻撃よりも強いと感じた。なんだ、こいつは!?


「フレイヴ!」


 アルフレッドが助けに入ってきた。そこら辺に転がる石を手にして、相手に向けて投げつける。投げては拾い、投げては拾い。その繰り返し。彼の投石はコントロールが悪いというわけではないにしろ、なかなか当たらなかった。そうしていると――。


 向けられたのは薄くて青色の目。こちらをただ見ただけなのに、アルフレッドは投げようとする手を止めてしまった。睨みを利かせているだけなのに。なんたる凄味か。まるで、こいつには逆らってはいけないような気がしてたまらない。いや、逆らわなければならない。このナズーのような人間の正体が何であるかを彼は察しがついているのだから。


「お前が二人の言っていた魔王か」


 黒い鎧は何も言わず、じっとこちらを見ているだけ。その答えをアルフレッドは気にしていなかった。正解である可能性が高いはずだ。見た目はナズーに近い。そして、そのバケモノというのは元人間だ。バケモノの親玉が元人間であってもおかしくはないだろう。何より、ここはナズーの楽園とも呼べるような不気味な森だ。黒い鎧の答えを待たずして、投石を再開する。魔王を倒すのはフレイヴたちの役目だ。自分はそのお手伝い。こうして、注意を向けさせて――その隙に、である。なんとも浅はかな作戦ではあるにしても、行動を起こさなくては意味がない。それ故の行動だった。


 フレイヴもアルフレッドの意図を汲んだのだろう。カムラの剣を強く握りしめて行動を移そうとする。


――それでやれるとでも?


 目だけをフレイヴに向けてきた。その視線はあまりにも気迫があり過ぎて、行動を移そうとしていた体を止めさせる。いいや、止めさせていたのは威圧感のある目ではない。黒い鎧――魔王が手にしていた真っ黒のカムラの剣先が形を変えて、フレイヴとアルフレッドの体が動かないように固定していたのだから。


――これで逃げられまい。こんな場所まで、のこのこやって来た間抜け者どもよ。


 バキバキと音を鳴らしながら、黒い剣はアルフレッドの左手に巻きついていく。何が起きているのかわからず、小さな悲鳴を上げるだけ。


「アルフレッドさんに何をするっ!?」


 わからないから、訊いてみた。だが、そのようなことで答えてくれるほど、魔王は優しくないだろう。そうして出来上がったのが――アルフレッドの左手には真っ黒の刃があった。これは一体? 魔王はアルフレッドを見る。ただそれだけ。視線で何かの指示を出しているようだが――。


「フレイヴっ!! 逃げろぉ!!」


 何かを察知したアルフレッド。彼の体が動き出す。それらの意味は動く石像の言葉を思い出す。


【魔王の影響】


 クラッシャーの忠実な下僕であるオルチェと同様に、アルフレッドは魔王の手下として存在していた!?

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