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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第九章 魔王とこの世界の駒◆
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104ページ

 ナズー? とアルフレッドは怯えている様子だった。だが、フレイヴにとってその黒い何かがナズーであるとは思えなかった。あの真っ黒なバケモノとは違う存在。それが放つオーラは心が苦しくなるような感情に思える。通常のナズーは成人男性の二倍から三倍の体格である。また、顔付きは人に似ているようであまり似ていない。元は人であるのに。


 しかしながら、このナズー(?)はいつものナズーには見えなかった。大きさは成人男性よりも少し大きめ。体を覆う黒色はただの皮膚には見えない。鎧に見えた。この黒い鎧、上から降りてきてずっとカムラのことばかり見ているようである。左目は普通に人間と同じような目――薄い青色の目であるが、そこから覗かせる闇は深そうであった。いきなり襲いかかってくるような殺気はないようだが、油断はできない。だとしても、真っ黒なバケモノはナズーだという認識が強い。それは誰もがそう思っているだろう。この世界の常識として。そのため、フレイヴは「カムラ」とカムラを剣へと変えようとするのだが、なぜか手を握った瞬間に本の状態へとなってしまった。どうして、と考える暇はなかった。これが黒い鎧の逆鱗に触れたように、アルフレッドは感付く。急に殺気を覚えたのだ。先ほどまで苦しかった胸がより一層苦しく思えたのである。この症状、人がナズーになってしまうというのに酷似している。まさかとは思いたかった。この黒い鎧は――。


 フレイヴたちの思考回路を回させないというように、黒の鎧はカムラの本よりも何十倍にも分厚くなった本を取り出したのだ。色は褪せたピンク。これを見て、彼女は震えた。その振動がこちらにも伝わる。とにもかくにも、戦わなくては嫌な予感しかしない。その思いに反応するかのようにして、カムラは剣の姿に変えた。だが、いつもの綺麗な光は見せてくれない。それでも、そのことを一々気にしていられない。勝てないとわかっているような相手でも、戦わなくてはならないのだ。魔王を倒さなくてはならないから。


 一方で黒い鎧は、カムラの剣を見て驚いているようだった。左の目が丸くなっていたから。そして、その目は徐々に憎悪を見せ始めてくる。まるで、この現状を許しがたいとでも言うように。ややあって、分厚いピンク色の本から――禍々しいほどまでに真っ黒な、フレイヴが手にしているカムラの剣と似た剣を取り出した。今度はこちらが驚愕する番である。


「なっ!?」


 初めてカムラが口にした気がする。それに何か反応してあげられることはできなかった。なぜならば、黒い鎧が攻撃を仕掛けてきたのだから。とっさの思いで剣撃を刃で受け止めるも――あまりにも強大な力だった。どんな攻撃よりも強く、どんな人の念よりも強いと思うほど。フレイヴはかなりの距離まで飛ばされてしまう。一方でアルフレッドはどうすることもできず、その場で硬直するしかないのだが――黒い鎧は興味がないのか、横を通り抜けて、フレイヴの方へと近付いていく。


「クラッシャー」


 そして、そうフレイヴに対して言うのだった。

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