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世界は心を孤独にするほど俺たちを嫌う  作者: 池田 ヒロ
◆第九章 魔王とこの世界の駒◆
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103ページ

「あたしがクラッシャーを倒した?」


 我が耳を疑った。そのような記憶が一切ないのに。何万何千何百という戦いの記憶しかないのに。最後の記憶がクラッシャーに殺されたのに。これはどういう意味なのか。石像は訊かれる前にして、淡々と語っていく。


「しかし、悲しいですね。世界を救った英雄のはずが、今やこの世界の脅威ともなる人物に成り下がっているのですから」


「それって、魔王のこと?」


 オルチェは言っていた。彼自身の主でもあるクラッシャーは魔王に倒された、と。魔王の存在はカムラと同等だ、と。そう考えると魔王の正体は――カムラ? だが、目の前にいる石像も自身のことをカムラと言っていた。


 訊きたいことが山ほどあり過ぎる。理解していくにも時間がかかり過ぎている。この世界は一体どうなっている!?


「……オルチェって言うクラッシャーの囮役らしいけど知ってる?」


「はい。三度目の戦いであなたの駒へと寝返りました」


 三度目の戦いというのは何か。その戦いとやらに参戦した記憶は――あったとしても、それは殺されたときの話だ。最初は普通に返り討ちに遭い、二度目も同様。三度目は――不意打ちだった。それ以降も、必ず殺されている。これはどういうことなのか。石像が発言する情報が少な過ぎるに尽きる。


「三度目の戦いって、何?」


 一番に訊きたいことだった。記憶にないものをどう思い出せと? それだからこそ、石像に訊ねると、それは「三度目は三度目です」とこれまた混乱を招くようなことを言い放つ。


「三度目にあなたは二度目と同様に味方を増やしていった。二度目と同じような目に合うかと思えば、きちんとクラッシャーは『この世』からは消えました」


 二度目と同様に仲間を? そう言った記憶があるのは――最後の記憶。黒の王国の国崩しをせんとして、仲間たちを集めていき、クーデターを起こした。その先で待っていたのはクラッシャーに殺されただけの記憶。そこから気がついたとき、フレイヴの村はずれにある訳のわからない建物で目を覚ました。ここは自分が知っているようで、知らない世界だと認識していた。だが、自分のことと、クラッシャーのこと、戦いのことを知っている存在があるということは――考えられることは一つだった。


「あたし……未来に飛んだ?」


 そう、この世界はカムラが知らない遠い未来の世界。三度目の戦いとやらの後の世界。それならば、納得がいった。この世界の情勢を知らなくとも。理解できる。自分が知っている国がないということぐらい。そこまでにおいて、遠い未来――いや、少し語弊があった。どんなに時代が未来へと行こうが、そうそう簡単に国は変わらないはず。歴史は変わらないし、多少なりともその話は誰かが知っていたはずだ。


 だからこそ、この矛盾点が生じているのは魔王が原因だ。魔王が世界を変えたとも言っても過言ではない。世界の事実を書き変えてしまったからこそ、カムラが知っている国や世界はなかった。フレイヴは黒の王国なんて国を知らなかった。


「世界を変えるということはすべて完璧とは言えません。多少の不具合や矛盾が生じるはずです。彼のようにして」


 光る石像はアルフレッドを見た。すべて魔王のせい。その結論に辿り着いたカムラだったが、彼女が言いたいことを遮るようにして石像は語る。


「魔王は――」


 何かを語ろうとしたかったのか。だが、そこまでだった。これ以上は何も言わせない、と言わんばかりに三人の目の前に黒い物体が降り立ってきたのだから。それは石像を破壊するようにして。


「なっ……に!?」


 真っ黒な存在と言えば、ナズー。周りには黒いもや――負の感情を撒き散らす傍迷惑なやつ。ただ、降り立ってきたそれはナズーであると断言するにはいささか首を傾げる存在のようだった。

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