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つい先ほど、信頼すると言いきった相手から刃を仕向けられた。銀色に、乾いた血がこびりついたナイフの先端はこちらに向いているではないか。どうして? その言葉がフレイヴとカムラの頭の中でいっぱいだった。それ以外の疑問の言葉は思いつかない。
「アルフレッドさん……?」
「ち、違うっ!」
何が違うのだろうか。殺意は一切感じなかった。予想がつかなかった。アルフレッドの表情を見るからして、こちらに武器を仕向けてくるとは思わなかったのだから。いや、違うというその言葉はすぐにわかった。
「逃げろっ!」
アルフレッドは叫ぶ。それなのに、体はこちらを殺そうと試みてきているではないか。彼に一体何が? フレイヴは避ける。ただ、避け続けるしかない。彼に対して反撃をするということが頭にない。する気がないから。まだ信じたいと考えてしまう自分がここにいる。
攻撃を見切られて避けられる。それがどうした、と言わんばかりにナイフを振り回す。銀色のナイフのはずが赤く見えてしまう錯覚に陥ってしまった。ぐるぐると眩暈がするかのように気分はどこか悪い。正直言って、見え見えの攻撃ではあるにしても、体が避けることを拒もうとしているようだ。なぜに?
「おっさん!? 何してんだっ!?」
フレイヴに何かあっては、とカムラは思ったのだろう。アルフレッドがナイフを手にしている右手を両手で掴んだ。
「俺が知るか!」
声音は焦りが見えている。アルフレッド自身も止めさせようとしているのか、左手で自身の右手を抑えつけていた。あまりにも強く抑えつけているからか、爪が腕に食い込んで血が出てきているではないか。どうしてこうなるのかも、本人はわからないと断言した。
「知るかって、止めなよ!? いきなりの裏切りは骨が折れるんだから!」
「俺がお前たちを裏切るもんかっ!」
それでもアルフレッドの力は強いようで、フレイヴに向かって再び突き立てようとした。しかしながら、彼はもう逃げようとしない。じっと刃とアルフレッドの目を見つめていた。濃い青色の目には血が付着したナイフが映し出されている。
「フレイヴ!」
逃げて、という単語に至るまで間に合わない。もはや、カムラの頭の中は「どうして」という疑問であふれていた。何も考えられない。どうすることもできない。ただ、フレイヴが死ぬのを大人しく待つだけか。
そのときだった。突然というのは本当に突然であり、予測不可能とされる。まさに彼らの状況がその通りであり、この切羽詰まった現状を打破する状況がやって来たのだった。突き立てられるナイフの刃はフレイヴに当たることなく、鋭い金属音が聞こえるのだった。そう、彼を地中から現れた石のようなものが守ったのだ。その石は動くのが当然であるかのように、動くだけ。なんだ、これは。




