節約して生活!(串焼きもぐもぐ)
切り立った岩山の狭間から射し込む朝日が眩しい清々しい朝。
俺は今、活気溢れるマインエラの市場の中を歩いている。
辺りには色とりどりの果物や野菜を取り扱う店が立ち並び、香辛料などを扱う店もちらほら見える。
所々に装飾品や雑貨を取り扱う店もあり、品物の種類は数えきれない。
朝食がまだの客狙いなのか、スープやパン、野菜炒めなど良い香りを撒き散らしてる屋台も多々見られる。
どこの店も自分の商品を売ろうとする商人や、商品を品定めする客でごった返していた。
凄いね朝市。朝早くから活気に満ち溢れてらっしゃるよ。あ、ぺルビ肉の串焼きだって。美味そう。朝御飯は食べたけど買っちゃお。
腰のポーチから銅貨を2枚取り出して、恰幅のいいおばちゃんに手渡すと、ぺルビ肉が刺さった串を2本、手渡してくれた。
味付けは塩だ。色的には岩塩かな?美味そうだ。いや、美味い。もぐもぐ。
昨日の夜、シャローネちゃんにいろいろ聞かせてもらって、貨幣についてやこの街の物価、マインエラのことや、マインエラの隣の街の名前とか、なかなかの情報が手に入った。
ぺルビ肉の串焼きを食べながら再確認だ。
まず、貨幣について。
貨幣は国が発行している金貨、小金貨、銀貨、小銀貨、銅貨、小銅貨がある。
金貨の上に白金貨とか大白金貨とかあるらしいけど、国同士の取引とか豪商同士の商いとか、よっぽどデカイ額の時じゃないと使われないから認知度は低いとか。
白金貨1枚は金貨100枚の価値。
金貨1枚は銀貨100枚の価値。
小金貨1枚は銀貨50枚の価値。
銀貨1枚は銅貨100枚の価値。
小銀貨1枚は銅貨50枚の価値。
という感じで、小貨幣は普通の貨幣の半分ということだ。
小銅貨は2枚で銅貨1枚の価値になるらしいのだが、銅貨2枚で黒パン1斤が買えるこのご時世に、小銅貨の存在意義は一体…。子供のお駄賃とかか。知らんけど。
物価の方なんだが、銅貨2枚で黒パン1斤、ぺルビの串焼き2本ということなので、俺がいた現代日本の価値に変換すると、おおよそ銅貨1枚で100円程度に相当すると思われる。
だから、小銀貨1枚は5千円、銀貨1枚は1万円、小金貨1枚は50万円、金貨1枚は100万円、白金貨は1億円くらいと、仮定できる。
あくまで仮定だ。価値的にはこんなに単純じゃないだろうし、実際どうなのかはちゃんと確認してみないとな。
白金貨半端ねぇな。そりゃ国同士の取引で使われるだけあるわな。
道端で見つけたら猫ババする自信が満ち溢れるわ。
普通落ちてないだろうけど。
岩壁の止まり木亭の宿泊費は1泊小銀貨1枚。大体5千円だね。部屋はそこそこだけど、ご飯も美味いし、シャローネちゃんは可愛いし、ちょうど良い値段かな。
ポーチの中の金は残り銀貨3枚と小銀貨1枚と銅貨45枚と小銅貨4枚。3万9200円が全財産だ。おい、大丈夫か俺?
いや、今思えば僕っ娘系神様よ、もう少し準備金とかくれても良かっただろうよ。
今の装備の持ち主がゴブリン(仮)にやられてる所に出くわさなかったら、完全無一文でぶらり異世界一人旅じゃねぇか。
一人旅系勇者さまの初期装備が優遇されてるように見えるわ。
50Gとか欲しい。単位がゴールドだから、金貨50枚か?5千万?え、そんなん持ってたら普通に襲われるわ。
ごめんなさいごめんなさい。やっぱりいりません。ありのままの着の身着のままの俺万歳。
意識がそれたな、うん。これからは節約して、尚且つ何かしらの仕事について金を稼ごう。
せっかくの新しい体と人生だ。しっかり生活していこう。串焼きうめぇ。もぐもぐ。
よし、次はこの街、マインエラについてだ。
マインエラは鉱山の採掘をする鉱山夫達の拠点として発展した街らしい。
街を真上から見ると、岩山の隙間の交差点。正に十字の形に見える場所に外壁を建てて街を作ったのが始まりだそうだ。
鉱山の採掘が盛んになるにつれて人々が集まり、街が大きくなっていったが、ほぼ未開の地だった昔は魔物の襲撃が相次いだ。
そのため、怪物狩人張りの堅牢な外壁を建てて街を守ったらしい。
どんだけデカイ魔物が襲ってきたんだろな。老山龍か。砦蟹か。
ちなみに今一番外にある壁は三代目らしい。
人が集まれば街が大きくなり、街が大きくなるだけ外壁が建てられる。
そうして、かつて外壁と呼ばれていた壁はいつしか内壁となり、東西南北中央を区分けする壁になっていったそうだ。
歴史があるね。凄いね。三層構造の壁とかどこぞのアターックおぶタイターンみたいだね。
とまぁ、そんな歴史を辿りつつ、現在は十字の東西南北と中央を5つの区画に分けて、それぞれの住み分けをしているらしい。
一番活気があるのは、街の存在意義とも呼べる鉱山があるマインエラ西区と呼ばれる方面だ。
西区には鉱山施設、採掘された鉱石を高い技術で加工する施設が集まっていて、質の良い金属、高品質な武器防具、緻密な細工の施された装飾品、高級な日用品の金物を扱う店が立ち並んでおり、日夜別の街からたくさんの商人等が訪れているみたいだ。賑やかさ半端ないね。
ゴブリン(仮)のナイフとかゴブリン(仮)にやられた人の剣とかが、めっちゃ切れそうな理由はこの辺にありそうだ。
ファンタジーの鍛冶と言えばドワーフだけど、いるのかな?いそうだね。見てみたいわ。そのうち覗いてみよう。西区。
その反対側のマインエラ東区には周囲の山々や街の南の森で採れる薬草などを研究し、便利な薬品から怪しい薬品、凄い魔道具から変な魔道具まで、何でもござれな錬金術ギルド関係の施設が集まっているらしい。
こちらは西区と違って静かだが、ここで作られている薬品や魔道具はなかなか評判が良いらしい。
錬金術とか興味あるわ。
黒い帽子とローブのお婆さんが「いぃ~っひっひっひ~」とか言いながら鍋をかき混ぜてたり、片手が鉄腕の青年がいろいろしちゃったりするんだきっと。
後はポーションとか毒薬とか作るんだろ。臭い息を吐く奴の触手とかでハイなポーションを作ったりするんだよな。楽しそう。
そのうち働き口があるか聞きに行ってみよう。
中央区には街の重要な建物が集まっていて、街を東西南北に貫く大通りの交差点があるのもここだ。
クロフさんが言ってた大交差点ってのはこれだ。
西区や東区から運び出される、又は西区や東区に運び込まれる物資は全てここを通ると言っても過言ではないらしい。
マインエラの流通を支える大動脈だ。
そのため大交差点は日々、何十、何百もの荷馬車が行き交っているから、慣れないうちは事故に気を付けろとシャローネちゃんにきつく言われた。うん、気を付けよう。
中央区には他にも街の領主の家や金持ちの家なんかもあるらしい。
山の手ってやつだ。
しかし、谷間の交差点故に風向きによっては、鉱山のほこりとか鍛冶屋の煙で空気が悪いとか、錬金術の薬品の変な臭いとかが漂ってくるとかであまり人気はないみたいだが。
北区と南区は居住区らしく、住居とか宿や住民向けの店舗がほとんどみたいだ。庶民の街やね。下町やね。
そんな下町な北区の門、北門を抜けてしばらく行くと広大な森があるらしい。その森を切り開いて作られた道をひたすら行くと街があるそうだ。馬車で1週間とか言ってたな。どんだけ遠いのかはさっぱりだが、まぁひたすらに行くと、緑豊かな草原とマインエラよりでかい街に着くらしい。
名前は、ターレシュタット。マインエラとは別の領主が治める街だそうだ。
更にその先には王都があるらしいけど、ターレシュタットも王都も今んとこ行く機会もないだろうし、あまり興味はないな。
シャローネちゃんも行ったことないから、よくわからないらしいしね。
南区の門の南門、クロフさんがいたところだね、を抜けると、俺がさ迷い歩いたダンジョンがある。というかダンジョンとダンジョン周りの森しかない行き止まりらしい。
しかし森の広さはなかなかの物で、錬金術に使う薬草とかもその森、もしくは北の森から採ってくるみたいだ。
そのため、南門を通る人は他の区から入り、街中で準備を整えてから南門を通るので、クロフさんが宿を紹介するのは珍しいそうだ。
俺の事情はうまく誤魔化したから大丈夫なはずだ。うん。多分。
ぺルビ肉の串焼きをもぐもぐしながら市場を抜けて、中央区へ向かう通りを歩く。
ちなみに市場は中央区と東西南北の区画の境目に集まっているみたいだ。
中央区を市場が囲んでる感じ?
『外区画・市場・壁・中央区・壁・市場・外区画』こんな感じみたい。
なんでこうなってるかはわかりませんが、しっかりと区分けされてるとわかりやすくて良いよね。
建物は大通りに面した所には石造りが多く、大通りを外れ、奥に向かうにつれて木造が多くなる。
やっぱり石造りより木造の方が安いんだろうね。こんな岩山の真っ只中でもね。
格差社会な感じがプンプンするね。
実際、岩山と街の境目辺りはあんまり治安がよくないらしいしね。
スラムってやつだ。怖い。
家がないから岩壁に穴掘って暮らしてる人もいるみたいだしね。
原始的な暮らしってやつだ。怖い。
いや、あんまり怖くないか。
いや、原始的な人だったら話が通じるかわからない。やはり怖い。
シャローネちゃんにも1人では行かないほうがいいと言われている。シャローネちゃんはいろんな所に気がつくよね。ありがたい。
でも1人でスラムに行ったらどうなるんだろうね。やはり原始的な人に襲われるのだろうか。怖い。
そんなこんなで中央区への門の前に到着した。
さぁ、中央区へ踏み込むぞ。マインエラの中枢に突入だ。
別に大それたことをする訳じゃないけどね。
ただ冒険者ギルドに行ってポッケのジャラジャラをどうにかするだけだ。
高く売れれば良いなぁ。
まぁでも、高望みはしないようにしよう。
クロフさんは驚いていたけど、万が一価値が低かったりしたら傷付くからな。きっと小石1つで小銅貨2枚くらいだよな。
出来たら小銀貨1枚くらいになってくれたら良いけどさ。
期待しない!期待しない!
あ、昨日の夕食やメニューにものってて、さっき食べてた串焼きの肉のぺルビって奴の正体も聞いといたぜ。
この街に来る途中の岩山にいた、羊みたいな奴だってさ。あれの名前がぺルビって言うんだって。
マインエラの周りにはたくさんいて、重要な食糧であり、家畜であるらしい。
肉や骨は食糧、皮は装備品の材料、羊毛は衣服、角は装飾にと捨てるところがない生き物なんだそうだ。
一応魔物らしいけど、家畜化が進められてて、まだ数は少ないけど北門の先の森の一部を開拓した場所に牧場が作られていて、そこで飼育されているんだってさ。
街の周りにいるのは野生のぺルビで、狩りすぎなければ自由に狩って良いから、狩人や冒険者の大事な収入源になってるそうだ。
もちろん魔物だから甘く見てると返り討ちにされる可能性もあるから、狩るときには注意が必要みたいだけどね。
凄いね。魔物も家畜にしちゃうバイタリティー。こんな岩山に街作るんだもんな。たくましいぜよ。
見習いたいけど見習えないな。俺にそんなバイタリティーはないっ。
のんびり生きていきたい。働きたくないでござる。
いや、第2の人生を生きるために働かないとダメだけどね。
うん、頑張ろう。
よおし!じゃあいきますか!いざ中央区の冒険者ギルド!




