第二話 ヤバいヤツがやってきた! ⑥
そして、もうひとつ。内なる声の名前とおぼしきもの。
(ミョウコウイン。あなたはミョウコウインっていう名前なの?)
声は沈黙を保っている。肝心なことに答えてくれない。
美月は頬を膨らませる。もう少し教えてくれれば、コミュニケーションもはかどると思うのだが、やり方がよくわからない。でも、これでひとつはっきりした。
この声は、美月の精神状態が異常をきたしているからではなく、魔法がからんでいそうだ、ということ。
美月のような魔法少女がいるのだから、あの金髪のイケメン変態男のような魔法使い──とでもいうのか、そんな存在がいたとしてもおかしくない。鍵を全部閉めていたはずなのに、あっさりとこの部屋に忍びこめたのは、おそらく美月が知らない魔法を使ったのだろう。そうでないと説明がつかなかった。
魔法がからむとなると、このことを冴子に打ち明けるわけにはいかない。もちろん、警察に通報するのもナシだ。悔しいけど。ひょっとしたら、冴子がいないことを見計らって、あの男はここへやってきたのかもしれなかった。
美月はひとり肩をすくめると、湯船から出た。鏡の前に立つ。湯気でくもった鏡に、自分の鏡像が映っている。冴子も、冴子の仕事の関係者も、「美人だね」と美月のことをほめそやす。冴子は「あたしに似て」とわざわざ前置きしたが。腰も女性らしくキュッとくびれていて、スタイルのよさも母親譲り。さらにいえば、バストのサイズは母親よりもひと回り大きい。
その胸の谷間──ちょうど胸骨の上の、豊かなバストに隠れた部分に、そっと指で触れる。
そこに星のかたちをした、青いアザがあった。
子供のときはこんなアザはなかったはずだ。小学生まで冴子といっしょにお風呂に入っていたが、冴子からアザがある、と言われたことはない。アザができたのは中学生になって、バストが見る見る盛り上がってきてから。魔法を使い始めたころと一致していた。
たぶん、このアザは魔法と関係がある──というのが、美月の推測。
美月は、魔法にどっぷりとつかっている。いや、魔法が美月を捕まえて離さないのか。
どちらにしても──
(あの変態、今度会ったら問答無用で攻撃魔法をたたきこんでやる……)




