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秘密の練習

  季節はじわじわとサンクスギビングに近づ

 いていく。北米の中央部、元大草原の土地は、

 ほぼ秋がない。暑いか、寒いか。

 

 11月の中頃から急に寒くなりだした。

 

 しかし、若さというものはそういった微小な

 変化をほとんど気にしないらしい。

 

 昼間の部活動の時間に体を鍛え、部室で戦略

 を練り、夜にそれぞれの自宅から時間を合わ

 せてゲームをプレイする。

 

 それに加えて、個々の特性にあった特別な

 トレーニングも追加していくことになった。

 

 例えば、コーネリアス・マクマホンには、

 ヤマダ流武術の中でも剣術の鍛錬。それも

 初歩の、手頃な重さの木刀を買ってきて

 素振りを繰り返すというもの。

 

 木刀はヤマト国発祥のものだが、それなりに

 需要があるのかオンラインショップなどで

 買えることができ、それほど高くもない。

 

 例えばケノービ・ミントに対しては、忍術の

 中でも一人で練習できることを教える。

 加えて、手裏剣術と鎖鎌術。

 

 ホンモノの手裏剣も手に入るし、自宅のバッ

 クヤードで投げる練習もできる。鎖鎌は、

 基本的にスポーツ用のもので練習だ。体型的

 にはあまりニンジャ、という感じではないの

 で、無理のない動作から始める。

 

 だが、ワシントン連邦ではニンジャの評価は

 高い。それが本当の忍術か、忍者か、は

 置いておいて、人気はある。

 

 例えばガリレオ・ムーアの場合、槍術だ。

 槍と呼ばれる、長い棒の先に穂と呼ばれる

 とがった細長い刃を付けた武器を使用する。

 

 槍の柄を利き腕で持ち、適当な間隔でもう

 片方の手で棒の部分を握る。軸足を支点に

 置き足を踏み出し、同時に穂側の手をゆるめ

 て一気に突き出す。

 

 その動作を、ひたすら繰り返す。

 

 その際の体のかたちが非常に重要なので、

 部活動の際や家で、鏡を見ながらチェックす

 る。槍は練習用のものを使用する。

 

 ルファ・ブルダリッチについては、身体的

 トレーニングについてすでにほぼ出来上がっ

 ていた。

 

 この国で何かの種目でプロを目指す際によく

 見られる、英才教育というやつだ。ゲーム

 プレイだけでなく、身体トレーニングもかな

 りのレベルのことをすでに実践していた。

 

 しかし、何かアジアンテイストな鍛錬手法

 にも興味があるらしく、ヤマダ流の中では

 杖術を教えることにした。

 

 ミッドレーンでは、いわゆる魔法使いタイプ

 のヒーローが多い。現代では実際に魔法を

 使うことはできないのだが、杖は実在する

 ので、その扱いを極めるのだ。

 

 その鍛錬が、実際のプレイに影響するのか、

 スキルショットが当たりやすくなるのか、に

 ついては今後の研究課題となる。

 

 

  ミッドウェスト市から40分ほどいった

 郊外にある農家に、ダイアナ・デップと

 ノブツナ、ノブヒデ、サラの4人で来ている。

 

 セルジオ・デラロサとベタニア・デラロサ、

 50歳台の夫婦の家が100エーカーの土地

 の中にある。ダイアナの親の会社の従業員だ。

 

 ベタニアは元従業員だが、元々小さな会社

 だったのでダイアナもよく知っていて、

 ふたりでお茶の用意を始める。土曜の午後。

 

 ノブツナとノブヒデとサラは、セルジオに

 連れられて納屋まで歩いていく。晴れて

 いると薄手の上着でも問題ない気温。

 

 すでに納屋の横のスペースのウッドテーブル

 に用意されている。

 

 まずはサラがチェストガード、アームガード、

 矢筒などをセルジオに教えてもらいながら身

 に着ける。

 

 弓のタイプはリカーブボウと呼ばれる、最新

 のタイプではないが比較的一般的なもの。

 セルジオの身振りを見ながら矢をつがえて、

 一射する。

 

 最初の一射を的から外しはしたが、もう

 だいたいの要領を理解したようなサラ。

 続けて射撃の準備をする。

 

 セルジオに促されて、ノブツナとノブヒデも

 装備を付ける。的は2つ用意されている。

 置いてあるのは、コンパウンドと呼ばれる

 ボウ。リカーブボウよりも新しいタイプだ。

 

 まず、ノブツナがそれを取り、スタンス、

 グリップ、アローをセットして、指の位置を

 確認し、ドロー、エイムして、リリーサー

 を開放する、という手順で撃つ。

 

 すると矢は、的の中央付近に突き刺さった。

 

 そのあと数射して、ノブヒデにボウを渡す。

 ノブヒデも同様に、的の中央付近に矢を

 集める。

 

 二人とも海外に出てもボウの練習を継続して

 いるので、久しぶりにやったところでそんな

 に腕は落ちていない。

 

 そもそもヤマダ流武術のうちの弓術は、もう

 むしろ和弓よりも命中率の高い洋弓がメイン

 になってしまっている。ノブヒデに至っては、

 和弓を引いたことがない。

 

 ヤマダ流は新しい技術をどんどん取り入れる

 タイプの流派、とも言える。

 

  少し休憩を挟んで、別のウッドテーブルへ

 移動する。サラもだいぶボウを撃ったので、

 明日筋肉痛ね、と自分の肩を触りながら笑う。

 

 次のテーブルに置いてあるのは、各種の実銃

 だ。ハンドガンとライフルがそれぞれ3丁。

 ノブヒデが触っていいかとセルジオに尋ね、

 セルジオはゴーアヘッドと答える。

 

 ノブヒデが手に取ったのは、最近ワシントン

 連邦軍でも正式採用されたハンドガン、モジ

 ュラー320だ。メーカーはゲルマン国に

 本社がある。

 

 他の2丁のうちの1丁は、同じガンのコンパ

 クトタイプ、もうひとつは以前正式採用され

 ていたローマ共和国製の、通称レベッカだ。

 

 耳栓をしたノブヒデが、マガジンを確認して

 銃のセーフティを解除し、リロードしてから

 両手で構える。そして弾が無くなるまで連続

 で撃つ。

 

 いやに手慣れている。

 

「シャンハイでもやってるでしょ」

 バレた? と答えるノブヒデ。

 

 ハイタッチをノブツナと交わし、交替する。

 ノブツナも同様、手慣れた感じで射撃を

 行う。ゲルマン国の射撃場に何度も通った

 こともあり、手慣れている。

 

 ヤマダ流砲術、ということになるが、彼ら

 二人が未成年のうちは、一般に流通して

 いるエアガンで鍛錬する。だから二人とも

 エアガンにも詳しい。

 

 そのあとセルジオに断ってライフルをいじり

 出す二人。軍正式採用のものと、特殊部隊用

 のものだ。ちなみに、ノブツナは火縄銃も

 扱うことができるが、ノブヒデは触れない。 

 

 サラもセルジオの指導の元、ハンドガンの

 試し撃ちを行う。ここオクラホマ州では、

 未成年の銃購入や登録などはできないが、

 練習で撃つのは問題ない。

 

 サラが扱うのはモジュラー320のコンパク

 トタイプで、グリップがやや小さめのものだ。

 

 正式採用されたのもそのあたりが理由で、

 状況に合わせてグリップを交換したり、

 スコープやレーザーサイトなどのオプション

 を容易に取り付けられる仕様だ。

 

 サラもセンスがあるのか、すぐに実銃による

 射撃に慣れだしたようだ。セルジオから、

 さらに狙いを定める際のコツなどを教えて

 もらっている。

 

 ポイントは、正しい構えでリラックスする

 ことと、撃つ際の呼吸のようだ。

 

 ワシントン連邦でも、銃を携行する率は

 比較的低い。だが、郊外にいくほど人から、

 あるいは自然から身を守るために銃を持つ

 傾向にある。

 

 ヤマト国では一般人は基本的に銃を携行し

 ないが、おそらくそのことを知らないセルジ

 オやサラは、ノブツナとノブヒデが楽に銃を

 扱ってもあまり驚かない。

 

 3人とも一通り満足して、その日の秘密の

 練習を終えた。

 

  そういったかたちで、ゲームそのものの

 基礎的な練習や、試合形式の練習を行う

 傍ら、自分の使用するヒーローのスキルを

 イメージした体の鍛錬も並行して行う。

 

 そのトレーニング手法が功を奏したのか

 どうかあまりはっきりしないが、ハイスクー

 ルの5人のゲーム内のパフォーマンスは急激

 に上昇していった。

 

 十代というのは、短期間でその種目のパフォ

 ーマンスが急激に伸びる可能性のある期間だ。

 

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