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悪役がエリクサーで覚醒する話  作者: 小林
皇都学園 二年生編
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成果を確認しよう

文化祭が終わった。

全3日間すべての日程が終わるまで俺は作業室に幽閉されていて、出られたのは後夜祭の式典が始まる直前だった。俺は自分の作った薬瓶の数を把握していない。


式典が終わった後、まだ浮ついた雰囲気の学生たちの中を歩く。

あくびを噛み殺すと、ペネロペが駆け寄って来て、


「予約枠と定期購入枠、完売しました!」


その場でぴょんと跳ねた。

着地と同時に両手でピースサインを作ってみせる。


「大成功です!」


大成功らしい。

俺はぱち、ぱち、と拍手を送る。いまいちどれだけ成功したのか分からなかった。


「客は何て?」

「独占契約の申し出が続々届いてます!」

「資金は足りるか?」

「大黒字です、皇都にあと5店出せますよ!」


商業的な話はよく分からないが、まぁ結構な成功らしかった。

あれだけ作ったのが全部捌けたというのだからペネロペの商才はかなりのものだ。

俺もシープシャンクを売るにあたって一時期商売を勉強しようと思ったがサッパリだった。

自分一人でやろうとしていたら頓挫していただろう。

何かやるときはその道の人間を頼るのが一番いい。

俺は頷いて、拍手を止める。


「よくやってくれた。報酬は好きに設定してくれ」

「ありがたいことです!」


ペネロペが勢い良く頭を下げた。

淑女らしくはない行為だったが、ドライなビジネスの関係を意識させる。俺は友人として好感を覚えた。

彼女ならわざわざ言わなくても支障が出ない程度に持っていくだろう。

働いた分だけ報酬が増えなければ割に合わない。だが報酬が多すぎれば集団を維持できない。

その調整をするのが商売人だ。俺は彼女の仕事に満足してニコリと笑いかける。


「教会への献金の件はどうだ、受理されたか?」


ペネロペはピタリと動きを止めた。

視線を逸らし、俺の爪先からキョロリと視線を上に這わせる。


「あー……手続きに? ハイ、少々時間がかかっているようでして、こちらからも再三催促の連絡は入れているのですがあ……」


彼女にしては珍しく歯切れの悪い誤魔化しの仕草だった。

これはつまるところ『失敗』を意味している。

俺はクッと眉を上げた。


「何故?」

「ハイ、ハイ、実はこの商会の名義について受付から問い合わせがございまして」

「俺だと答えたのか」

「ええまぁ、ハイ」


ペネロペは気忙しそうに視線をあちこち彷徨わせながら答える。


「ただ必ずしも、トマス様からの寄付であることが理由とは……限りませんよ!」

「フォローしなくていい」


俺がため息を吐くと「それに」と慌てた声が入った。


「大々的な寄付をすれば無視できないはずです!」

「パフォーマンスか」


実際、派手な方法で寄付する団体は少なくない。

ただ問題があった。

俺は首を傾ける。


「俺の身分を考えれば最低でもちょっとした国家予算レベルの金額が必要になるぞ」

「ハイ、それはもう」


地位のある人間が大きく宣伝して寄付をするとなると、世間からの目が集まる。

ハードルが高くなるということだ。


「足りないな」

「えー、ハイ、3年はかかるかと……」


ペネロペはすっかり意気消沈した様子で項垂れた。

俺はパチンと手を叩いて、やや声を張る。


「いい、構わない。よくやった。また金を稼ぐぞ、ペネロペ」

「トマス様……ということは」


黄色い瞳がキラリと輝く。彼女も嗅ぎつけたようだ。

一本指を立てて、俺は微笑む。


「いいアイデアがあるんだ」


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