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期待への裏切りは…あながち悪いものではない…なぜなら

私は人生の大半を他人の期待に応えるということに費やしてきた。

だから…最後ぐらいは、期待を裏切るという事をしても、罰は当たらないだろう。


教授の日記にはこう書かれてあった。


人は周囲の期待に応えようとし、そして心が折れる。

教授もきっとそうであったに違いない。


エリート家系という呪縛

基礎学問の大切さという呪縛

そして

教育者とはこうあるべきという呪縛


がんじがらめの呪縛に囚われ

教授は最後まで愚かにみじめに苦悩した。


―――――――――――――――


教授の最後はネット中継されていた。

予定通り―犯人は警察に逮捕された。


教授は綿密に罠を張っていたのだった。


知能に自信があった男は

教授にまんまとはめられたのだ。


優秀な研究者の最後の偉大な仕事が…


この自分を囮にした舞台だったのだ。



警察が踏み込んできた時の犯人の狼狽っぷりは

切り抜きされ

ネットミームとなった。


残忍は連続犯はいまやさらし者となったのだ。


その動画を見て

崩れ落ちたものがいた。

教授の元妻だ。


まさか不倫相手の学長が…


学長は徹底的に調べられた。

すると

学長のネットワークを使い

いくつかの大学で横断的に裏口入学の斡旋をしている事がわかった。

また同じくネットワークを活用して、研究費の不正受給を行っていることがわかった。


裏口入学には、有名政治家の子息、大企業の子息も含まれた。


その人数は1038人 

あまりにも多数であり、影響も大きいとのことから公表は差し控えられた。

しかし1か月後

全員のデータがネットで拡散される。

そして空売りの嵐が株式市場を飲みこんだ。


裏口入学に手を染めた子息の父親達が役員を務める上場企業の株価が一気に下落したのだ


通常会社のスキャンダルでない限り株価は下がらない可能性が髙い

しかし今回は規模が大きく―市場の緊張がピークにあった。


それで一気に空売りを仕掛けられたものだから

その反応に株式市場が飲みこまれた。


市場の持つ

ある種の恒常性機能を上回るショックが

起きたのだ。


その日株式市場はここ10年で最大の下げ幅を記録した。


裏口入学に関わったものは

すべて社会から消えた。


そして

教授の兄、元義理の弟も不正に関与していたことがわかった。


捜査員は苦悩していた。

調べれば調べるほど、社会がおかしくなっていく。

正義感と社会の崩壊への恐怖に板挟みにされ

狂気にかられた。


あらゆる組織の上層部はもみ消しに躍起だった。

しかし躍起になればなるほど

ネットで拡散される。


まるで教授のゴーストが憑りついているかの

ようだった。


――――――――――――

同じころ


その男は自室でパソコンをしていた。

コマンドらしきものを打ち込み

なにかを処理していく。

ファイルから取り出したデータを見ては

なにものかにメッセージを送っている。

ひっきりなしに

パソコンにはアラートが届く

100万円

300万ドル

5000万


男はニヤニヤしながら

作業を続ける。


部屋にはエナジードリンクの空が転がっている。

カーテンは閉め切られ

1か月は開けた様子がない。


1時間程たち

男はUSBとノートパソコンを持って外に出た。


数時間後ゴミ処理業者が部屋に来て

全ての荷物を回収していく。


そしてその日

男は空港から飛び立った。


「あとは遊んで暮らすだけだな…」



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