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藤吉郎

10)藤吉郎サル


 俺の野望が決まった。天下統一!!

 何だろ。この響き、ホントに魔王みたいだ。世界征服を目論む悪の大王的な…。

 やっべー。これ、失敗も同然じゃね?

 ミツに話したら絶対に笑われるよな。

 それでも、俺は親友に隠し事はしたくないし、別に笑われたって良いとさえ思う。


「───と、まあ。そう言うわけで天下取ろうかと思うんだけど」

「別に笑わないよ。ノブは本気なんだろ? だったら、僕はノブの野望に協力するよ。当然ね」

「前々から思ってたけど、ミツの笑いどころがわかんねえよ。何で笑わないんだよ、フツー笑うところだろ!?」

「人の真剣な話を笑うほど、僕は人間落ちてないよ。でも…、町でスポーツをね」


 あ、ミツ落ち込んだ。

 分かってはいたけど、ミツ一人を置いて行ったこと寂しがっていたんだな。


「ミツは城の仕事もあるだろ? 邪魔しちゃ悪いかなぁーって」

「そうなんだけど。そこまで忙しいわけでもないよ。僕だってたまには誘って欲しいんだよ」


 まあ、そうだよな。最近は、また市と遊ぶようになった。

 城でもスポーツが流行り、キャッチボールしてる武士の姿がチラホラと。その中に城主の姿もあったりする…。


「親父もスポーツにハマったみたいだしな。俺と市がスポーツしても怒らないんだよな。だからつい。別にミツを仲間外れにしているんじゃないぞ」

「分かっているよ。ノブは妹のお姫様にぞっこんラブだもんな?」

「人聞きワリーよ!?俺をシスコンみたいに言うな!!」


 俺と市は仲の良い兄妹。それ以上でもなければそれ以下でもない。仲が良くて何が悪い。こんな兄妹がいても良いじゃねーか。


「じゃ、じゃあさ。今度は僕と」

「おお。そうだな。一緒に遊ぼうぜ!!ついでにミツに見せたいヤツ居るんだ。すっげえヤツ、これ絶対ミツ笑うぞ!!」


 あのサル顔のアイツだ。最近になって人里に降りてきた野生児。名前は何て言ったっけか?

 まあ、行けば分かる。毎日いるからな。町ではちょっとしたヒーローだ。


「そんな面白いやつなのか?」

「会えば分かるから。そうだ、明日は暇か?」

「大丈夫だけど、いきなりだね」


 いや、こういう時は善は急げだろ。あのサル顔の奴を見たときのミツの反応が楽しみだ。


「まあ良いじゃん。ミツだって遊びたいって、さっき言っただろ」

「そうなんだけども…。ノブが悪いこと考えている時と同じ顔しているからさ…。不安なんだよ」

「失敬な!!俺はただ良かれと思ってだな!!」

「それが尚更、不安なんだよ。遊ぶなら普通に遊ぼうよ、ノブ」


 まったく、どう言うわけだ。俺の信用落ちてない?

 ミツを思っての厚意が裏目じゃん。イタズラじゃなくて、これはサプライズ。ミツなら許してくれる範囲だ。


「俺、そこまで心配させることしてねって。信用してくれよ~」

「分かったよ。じゃあ、また明日だね。今日は一気に仕事を終わらせるよ」

「そうだな。てか、ミツって何の仕事してるんだ。城でやることなんて何もないだろ」


 いつも城に籠もって何やってるかを俺は知らない。

 この前までは俺と一緒にスポーツ用具の制作作業。それも、もう一段落ついたので特にやることはないはず…。

 一体、城で何をするってゆうのか。いや、やることはあるんだろうけど、やっぱり分かんねーや。

 それで良いのか、俺!?ということで、ちょっとした疑問を聞いてみたのだ。


「魔法の開発と研究、ノブの他にも指南したり…。それとノブの不始末の後始末だよ」


 申し訳ないったらないな。

 …俺の知らないところで苦労を掛けていたのか。しかも、魔法の研究とか…。ミツが魔法に詳しいのはそのためか。

 何も知らなかったよ、ホントに。マジで良い親友に恵めれたんだな。

 感謝を込めて、明日ははっちゃけようか?とミツに言ったら嫌な顔された…。


 俺は何時、ミツを不安にさせるようなことをしたんだろ?




 翌朝、何時ものように市が来た。

 優しく声を掛け、ポンポンと肩を叩く、市。それでも起きない、俺。

 今度はゆさゆさと揺さぶってくる。「ん、もうちょっと」、「もう、早く起きて」なんてやり取りをしながら目を覚ます。

 これがあるから俺は生きて行けるのだ。


「お兄様、おはようございます。今日も良い天気ですよ」

「おはよ。市はいつも朝早いな」

「お兄様から頂いた、目覚まし時計のお陰です」

「ああ。そういや、あれ…上げたんだったな。役に立っているようで何よりだ」


 ミツの知恵を借りて完全した時計だ。

 ミツは何でも知っている物知りさんだ。俺の知恵袋だ。とか言うから信頼が落ちるのか?


「はい。市の宝物にございます。───それより、お兄様。明智殿がお見えになっておりますよ?」


 おっと、そうだった。今日はミツと遊ぶ約束をしていたのだった。今日は俺がホスト、ミツには楽しんで貰おう。

 あれ? そう言えば、ミツと町に出て遊ぶのはこれが初めてか。

 俄然、やる気出てきた。これはもうはっちゃけちゃうしかないな!!


「すぐ行くから、そう伝えてくれ」

「はい、お兄様。今日は明智殿とお楽しみ下さい」

「え?何を言ってんの?市もだ。市も一緒遊ぼうぜ」


 当然じゃね?

 俺としては、ミツと市しか遊び相手いないんだ。なら、一緒に遊ぶしかないだろ?

 だが、市の表情はビミョーといった感じ。市とミツって仲悪かったっけか?

 考えてみたら、市とミツの接点て俺と一緒に居る時だけじゃん。仲良くも何もねーな。


「お兄様が良ければ、私は良いのですが…。お邪魔ではないのでしょうか」

「むしろ、側に居て欲しいくらいだ。邪魔だと思ったことは一度もねぇよ」

「…お、お兄様」

「ゴホン。はは…。邪魔しちゃったのは、僕の方かな」


 いつからそこに居たのか、ミツが居る。

 マジでいつから居たんだよ。ということは、あれもこれも見られていたと言うことか。

 今更だが、ハズいっ!!


「邪魔じゃないけど、タイミングは悪いぞ。俺の心臓はノミの心臓なんだ。恥ずかしくて死ぬかもしれないだろ」

「まだノブは寝ぼけてるの? そんな死因はないから大丈夫だよ。大体さ、ノブの心臓は鉄でしょ。鋼鉄で出来てるんでしょ?」

「人をサイボーグみたいに言うな!?」

「仲が良いですね。お兄様、明智殿と仲良くなってから楽しそうです」


 まあ、いままでが退屈だったのだ。そう言われても仕方ない。

 でも、市のほうはどうなんだろうな。


「市にはいないのか? そういう、友達みたいなのは」

「私には…。私にとってはお兄様です。お兄様が全てです」


 市に言われると鼻の下が伸びちゃうじゃん。

 でも…。その発言、大丈夫なのか?

 それだと、市には友達が居ないみたいじゃないか。


「そう言ってもらえるのは嬉しいがな…。いつか、市にも」

「お兄様が居るなら、それで満足です」


 何で、言葉に力が入っているの?

 それはそれで返事に困るわ。だが、兄としてはこのまま放っておく事も出来ないよな。

 仕方ないな。今度は市の友達作りも考えてやるか。


「ノブ。それと市様もそろそろ行きませんか?」

「おお、そうだな。市も支度して来たらどうだ?」

「はい。それでは───」


 市は支度を手早く終わらせて戻ってきた。

 可憐な美少女のジャージ姿。身体のラインを隠しつつも、その胸の膨らみは強調され隠しきれていない。

 おやおや、市ってこんなに? ほうほう。なるほどなるほど。

 実は市が隠れ巨乳だったとは…。兄も知らない恐るべき秘密兵器を隠していたものだ。


 ………。


 やべぇって、何の批評家だ!? 妹相手に興味津々かっ!?


「どうしましたか、お兄様? この格好…、おかしかったでしょうか?」

「いや全然。むしろサイコーに似合っているぞ。ジャージサイコー!!」


 市の胸のことは一旦保留。DかFか…。一旦保留。

 ジャージ…、そうジャージのことだ。

 ゴムができたことで衣類にも使えるようになった。

 まあ、これは俺の手柄ってわけじゃない。俺が遊んでいる間にミツが作ったものだ。

 スポーツが流行ったことで生まれた新しい着物。運動に最適な着物。つまりジャージだ。

 着心地は現代の服とは比べられるほど良くはないが、着物を着るより手軽で動きやすい。

 受け入れられるのも早く、今では町の呉服屋に格安で卸している。一応、公共事業?になってるとかなんとか…。


「俺の作ったゴムが、ここまで広まるとは思わなかったな。全部、ミツのお陰だけど」

「本当に扱いに困る物を作ってくれたよね」

「いや、でも結構使えるだろ?」

「確かに…。衣服、防具に様々な道具。まだまだ他にも使えるからね。でも、もう止めてくれよ」

「悪かったよ。だから、そんな顔するなって」

「別に怒ってはないよ。信秀様も資金が潤って喜んでいるからね」


 それでも、俺の株は上がってない。一体何故だ?

 ミツが手柄を独り占めしているわけじゃないのは確かなのだが…。


「さあ、お仕事の話はその辺で…。お兄様、今日は何をして遊ぶのですか?」

「仕事の話なんてしてねーよ。俺は働かない。働く気はないぞ」

「威張って言うことか!!」


 ナイスツッコミ。

 この世界に漫才はない。俺がボケたところでみんなスルーだ。

 やはり、漫才のような文化も流行らせるべきだ。それには先ず大阪から天下統一だな。


「ノブ」


 だから!!こえぇっての!!


「はい!!すいません!!何でもないです!!」

「市様…。その、今日はできればバスケをしたいのですが。宜しいですか?」

「おっ!!バスケか!!良いね、俺もバスケしたいぞ!!」

「なら決まりですね。今日は三人でバスケをしましょう」


 うん。意見が割れることなくすんなり決まったな。

 善は急げ。城を飛び出し、町に出る。

 町の一画に造られた運動場。町で暇している奴らを集め、今はコートの管理をさせている。一応、これも公共事業?

 早速、遊ぼうかと思ったがコートは全部埋まっていた。

 なかなかの盛況ぶり。これは、順番待ちだな。


「アイツ。やっぱり、また居るのな」

「あら。本当ですね」


 市も覚えていたか。昨日も居たし、その前も見かけたよな。

 町の連中と違って暇だから…。というわけじゃないッポイ。

 遊びに真剣というより必死という感じがする。


「ミツ、あれあれ。あれが見せたかったか奴だ。あれ、スゲーだろ? 色んな意味で」

「まあ…。確かに人間離れしていて、忍者みたいな動きだよね」

「忍者っつーより、野生だろ。山から降りてきたサルに似てね?」

「そんな感じはするね。町の人間ではないのは確実だと思う」


 思っていたのとは違う答えが返ってきた。

 だが、ミツの言うとおりだ。

 あのサルは町で見たことはない。最近来た、どこからの流れ者だろうけど…。

 だからって、流れ者は珍しくはない時代だ。戦乱に巻き込まれ住む家を失う、村ごと焼き払われるなんてよくある話だ。

 その類だとすると、何かこう心が痛むな。


「では、あの者は戦乱に巻き込まれ逃げて来たのですね」

「の、ようだな。市」

「賭事は感心しないけど。食うに困ってなら仕方ないかな」


 あのサルも、今が楽しいならそれで良いか。

 それにしても、最近ではスポーツの勝敗で賭けが行われてるらしい。別に禁止しているわけじゃないが、悪どい真似をするなら止めさせるべきだな。

 今回の賭けは飯を賭けて。それくらいなら許せる範囲だ。


「だな。っと、終わったみたいだ。次は俺たちの番だ。行こうぜ!!」


 サルの圧倒的運動能力で試合は終わった。まあ、当然の結果だな。

 次は俺達が試合を申し込んで試合が始まる。

 サルを相手に勿体ないが、ここは魔法で肉体強化する。

 風の肉体強化、突風。天の肉体強化、雷身。まあ、こんなものだろ。

 魔法を使うなんて反則? いやいや、これは俺の力だ。ズルじゃない。戦場に反則なんて言葉はないのだ!!


「今の俺に勝てる奴はいねーぞ!!」

「ノブ…。そこまでして勝ちたいのかよ…」

「負けっぱなしは悔しいだろ。これも一つの戦略だ」

「俺は何だって構わねーから、早くかかってこいよ。若様!!」

「カッチーン。じゃ、さっさと勝たせてもらうぞ」


 放られたボールを奪い、試合が始まる。当然、俺の速度を上回れる奴はいない。

 さっと、1ポイント先取。サルが人間様にかなうものかよ。


「次は、本気だ。織田の若様!!」

「手加減なんていらねーから」


 もはや、ワンONワン。俺とサルがコートを駆け回る。

 つーか。マジスゲーな。魔法で強化した俺について来るって…。やっぱ、人間離れしたサルだ。

 ミツの言った忍者っていうのも、あながち間違いないな。


「チッ…。油断しているつもはないんだが、クソッ!!」

「ノブ!!」


 流石、親友。ナイスタイミングだ。俺一人で互角…じゃねー。若干、俺が上だ。

 ミツが加われば、俺有利!!勝てる。勝てるぞ!!


「おう!!ミツ、行くぞ!!」


 連携プレーによる連続攻撃。アリウープ、ダンク、スリーポイント。怒涛の攻めは続く。

 サルはサルで防御の手薄さを突いてくる。点の取り合いだ。

 そんな激しい攻撃が続くわけもなく、全員一様に息が切れる。

 回復が必要だ。途中、タイムをとる。


「サルには負けねーぞ。気合い入れろ、市。ミツ!!」

「ああ、当然!!」

「勿論です。私も武家の女。二度も負けるわけには参りません!!」


 だが、そろそろ時間がなくなってきた。魔法強化も制限時間が迫る。

 て言うか、集中力が続かなくて、魔法が維持出来ないのだ。ここは、一気に片を付けるしかねぇか。

 試合を再開し、サルの攻撃でスタートする。

 たった数分の休憩でどんな回復力もってんだよ。馬鹿げた体力だ。さすがに呆れる。


「ミツ!!ディフェンス!!」

「わかってる───」


 サルが放ったシュートをカットしたミツ。切り返すサルだが、ミツはパスを繋ぐ。


「頼む。ノブ!!」

「おう。と、市!!決めろ!!」

「はい!任せて下さい、お兄様!!」


 前も思ったけど、やっぱり市も運動神経が良いな。見様見真似だが、軽々とダンクシュートを決めた。


「よし!!良くやったぞ、市!!」

「はい!!お兄様、やりました。───きゃぁっ!?」

「市!?」


 ヤベ、危ね!!

 倒れるゴール。手が引っかかって抜けないんだ。

 考えると同時に体が動く。


「間に合えっ!!───グッ!?」

「フキャッ!?」


 ドサッと落っこちる市のことを庇い下敷きになる。だが、思った以上に衝撃が少ない。

 柔らかな草木がクッションになってくれたようだ。

 市を助けようと庇った俺をサルが助けてくれたのだ。魔法を使って。

 サルにはお似合いの魔法だが。アイツ…、魔法を使えたのか。


「市、大丈夫か?」


 まあ、それはともかく。見た感じ、市に怪我はないようだ。


「はい…。大丈夫です」

「それとサルも助かった。ありがとうな」

「れ、礼はいらねーよ!!にしても、もう少し後先考えろ!!織田の若様はうつけだって聞いてたけどよ。本当に馬鹿なんだな!!」

「サルに馬鹿なんて言われたくねーよ!!」


 助けられたが、助けてくれとは言ってない。それに俺なら何とかなったし、怪我しても市が治してくれる。

 何より、サルに馬鹿にされるのは腹が立つ。


「その、サルって言うのを止めろ!!俺は藤吉郎!!木ノ下藤吉郎だ!!」

「う…。おう、それはマジでゴメン」


 そうだよ。名前で人をバカにするのは俺が一番キライな行為だ。

 何、俺は人を見下してるんだよ。


「じゃあ、木ノ下くん。俺は別に助けてくれとは頼んでねーよ。俺には市がいるんだ。だから、お前の行動は無駄なことだったんだぞ」

「へぇー。そうか、そうか。余計なお世話だったか。そいつは済まなかったな」


 全然、済まなそうな顔してない。

 ああ、そうか。コイツ負けて悔しいんだな。


「だけど、助けてもらったのは事実だし、今回の勝負は引き分けだな?」


 借りは借りだ。助けて貰って勝ち誇るのも情けないしな。


「ふ、ふん!!若様がそう言うなら仕方ねーよな!!ひ、引き分けにしといてやるぜ」


 プフッ。顔赤くして面白っ。ホント、サルそっくりだ。


「木ノ下…藤吉郎…?」

「なんだ? このサ、木ノ下くんはミツの知り合いだったのか?」

「ノブ…。木ノ下藤吉郎は後の豊臣秀吉だ。そんなことも知らなかったのか」

「そ、そうか。豊臣秀吉か」


 何ともまあ。そうだったのか。

 これが、歴史の必然。運命なのか?


「ノブ。思うことはあるだろうけど、今は置いておこう。それに、今重要なのはこの男が僕の嫌いな人物だということだ」

「重要なの、そこ!? 気持ち分かるけどさ。なら、俺もミツの嫌いな奴のくくりに入っちゃうじゃん!!」

「え、ノブはノブだろ?」

「何それ!?ノブはバカだろ的なニュアンスに聞こえるんですけど!!」


 気のせいですかねぇ!?ねぇ!!


「気のせいじゃない? 僕はノブを裏切らないし、ノブだって僕のこと信頼してくれているんだろ?」

「んなの、当たり前だろ。それ、今更だっての!!」


 わざわざ聴くようなことじゃないだろ。恥ずかしいだろうが…。


「だったら、僕を信じてこいつを殺そう。僕だって死にたくないし」

「さらっと言ったなぁ…。でも、ミツが裏切らないなら秀吉もミツを殺したりしないんじゃねーのか?」


 てか、ホント俺の時と同じ状況じゃん。俺の場合は、ミツが同じ転生者だって分かったから事態が変わったけど。

 うーん。まあ、まさか豊臣秀吉も転生者ってことはないだろうし。俺としても豊臣秀吉を助ける理由はないよな。

 かと言って、殺すかと言われても俺だって対応に困る。


「そうかも知れないけど…。いま見逃したとして、…歴史が…。…ノブがこいつを家臣にしなかった場合は? いや、普通に襲って来そうだし…。…運命が…」


 ミツの悪いクセが出てきたな。考え過ぎなんだよな。

 考えなしもダメだけどな。だから、考えなしの俺と考え過ぎのミツ。俺達2人が揃って丁度いいんだ。


「おい、木ノ下くん」

「なんだ。若様?」

「お前、流れ者だろ? 何しにここに来たんだ?」


 一応、事情聴取。この時代この世界に身分を証明できるものが無い以上、信用しろってのは無理だ。


「そうだが、それがどうした」

「住む場所ないんだろ? なら、俺の家に来いよ。空き部屋ならあるし、お前の働き次第で飯も出すぞ」

「行く!!行くぞ!!」


 返事早っ?!

 なに、そんなに生活困ってたのかよ!?

 マジでサル並の知性か!!普通に働けよ、おいっ!!


 まぁ、そんなワケで城に木ノ下くんを連れて行くことになった。

 ミツは若干どころじゃなく、嫌な顔してるな。それでも、反対しないところを見る限りは、俺の思惑に気づいているんだろうな。

 暫くは、サル…、ん? 豊臣秀吉…、ん? 木ノ下藤吉郎を手元において監視していくことにする。



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