黒の契約
「一体どこに……」
竜族の食欲を刺激する血の臭いーー
通路の中央に倒れているき銀髪の子供を見つけ
「リノスか?」
アートルムは近づく。
包帯が巻かれた腹部から、微かに血がにじんでいる。
(この傷口、小屋で刺された時のか……息は、ある)
微かに漂う、血の臭いがアートルムの食欲を刺激。
「何とか、村まで……俺は、こいつを絶対に喰わない」
自分に言い聞かせ、アートルムがリノスを背負う。
「……誰?」
意識を取り戻したリノスに
「そこで、大人しくしてろ」
聞き覚えのある声。
「アートルム?」
「人間の姿を見せるのは始めてだったな。とにかく、話は後だ」
具合の悪そうなアートルムの横顔を見て
「……オレは、置いていっていいよ」
リノスは告げる。
「は? 誰のために、ここまで……」
「もう、何の意味もない。父さんは、居ない」
「お前、一体なにがあった?」
「……」
退路を塞ぐ、禍々しい青い炎。
「ちっ、のんびり喋りすぎたな」
「渡さない、ノアは私が新しく作り直すの」
禍々しいオーラを纏う少女は、剥き出しの憎悪をぶつける。
「醜い男の体から、新たに製造したホムンクルス体とチェンジリングをした。これで私は、ようやく貴方と釣り会えたのに……どうして、否定するの?」
(まさか、リノスの親父をチェンジリングに……)
父さんは、居ないーーそれ以上、リノスは語らなかった。
アートルムは安全な場所にリノスを下ろすと
「随分と若作りだが、お前がディアボロスだな」
「忌々しい……アウルムの子孫ね」
「あのチビは、リノス。名付けたのは、親父さんだ」
アートルムは項垂れているリノスに視線を向け
「しっかりしろ! お前の親父は精神をディアボロスに取られたが、居なかった訳じゃないだろ」
「アートルム……ごめん、オレは」
「違うわ! 記憶が戻ってないだけよ」
ディアが声を荒げる。
「オレは、リノスだ。お前の言葉を、信じるつもりはない」
完全に否定されたーー
「そんな……」
ディアは頭を抱えると
「許さない、許さない、許さない」
青い炎が、ディアの体を包む。
「くっ……暴走か」
右手の甲の火傷に、アートルムは顔を歪める。
ディアの青い炎は、対象を燃えつつくすまで消えない。
「アートルム、お前……腕が」
「こっちに、来るな。お前まで燃える」
ディアが最初に作った青い炎の壁が、消えかけている。
「少しでも動けるようになったら、這ってでも離れろ……ぐあっ」
「……契約」
「何を言い出すかと思えば……」
「竜装すれば、この状態からだって」
リノスの言葉に、アートルムは首を横に振る。
「そんなことをすれば、全てを捨てることになる……お前は、一応? まだ、若いんだ。今は逃げて、命を繋げ。俺は、大丈夫だ」
「この、バカ竜!」
床を這い、リノスはアートルムに近づく。
「ここで、友達を失ったらもっと意味がない」
「お前……」
どうして、このガキはこうも掻き回すのだろう。
「後悔、するなよ」




