表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/69

20 襲撃者

 さっきの音は、メインルーム──俺が最初に皆から自己紹介をされた部屋の方から聞こえてきた。いや、さっきの音だけじゃない。何度も何度も、何かを破壊する音が鳴り響いている。

「エンゲージメント」

 俺は走りながら、自らの肉体をアバター化させる。


 普通だったら逃げるべきだろう。でもこれは俺にとってチャンスだった。

 敵が、バベルがわざわざ向こうからきてくれたのだ。欲しいのは手がかり。香凜への足掛かりだ。


 だから、俺は走った。音のする方へ、攻め込んできたバベルの奴らを目指して。


 廊下が終わる。俺は、音の鳴り響くメインルームの前で足を止めた。


 今、向こう側のドアが強くひしゃげた。黒い波動がドアを吹き飛ばし、余波がメインルームの床を、壁を、テーブルを椅子を、吹き飛ばした。

 そしてその向こう側から一人の男がやってくる。

 そう、そいつは〈大剣(ブレード)〉を担いだあの男。

 黒い鎧に身を包んだあの男。

 俺と同じ、もう一人の八雲周。


「お前ッ!」


 俺は瞬時に〈(ガン)〉をジェネレート。その銃口を目の前の男、ヴィティスに向けて構えた。

 ヴィティスが俺に気付く。

 笑っていた。俺に会えたのが面白い、とでも言うかのように。


「よう。久しぶりだな、ニセモノ。テメェのアバターを見るには初めてだよなぁ、確か。そいやぁ、〈オメガ〉の中でそんなアバターを見かけた気がしなくもないぜ」

「お前は、誰だ!」

「前も同じ質問したよなぁ、テメェ。あー……でも、今はあの時と逆の立場か。俺がテメェの家に乗り込んだのか。んじゃぁ、何か。質問に答える義務があるっていうのか、こういう時は」


 ぶつぶつと呟き、そしてヴィティスは俺に向け、はっきりと言った。


「俺は俺だよ。俺こそが八雲周だ。造られたニセモノのテメェとは違う、オリジナル様だよ」

「俺が、ニセモノ?」

「ああ、そうさ。テメェは俺のニセモノだ。邪魔でうざったくて鬱陶しい、今すぐにでも消え去ってほしい存在だ。なあ、そうだろ。誰しも自分のニセモノなんて、いらないと思うのが当たり前じゃないか?」


 言ってくれる。

 俺が、ニセモノ。八雲周の、ニセモノ。俺は作られた存在? 何のために? 誰が? どうして?

 でも俺には、記憶がある。あやふやだけど、確かにある。そう、香凜が笑っている顔。幼い日々の記憶。確かにそれは、俺の中にあるんだ。

 それなのに俺が、作り物?


「話が飛んだな。本題はそこじゃねぇんだ。で? 観測者(オブザーバー)は何処だ?」

「オブザーバーだと?」

「ああ、何だ。あいつはテメェらにこのこと言ってねぇのか。なんてったっけな、あいつだよ、あいつ。はっきりとした名前は覚えてねぇんだよな。そう、あいつ。俺がテメェのこと殺そうとしたら、邪魔してきた奴だ」


 世良のことを言っているのか。だが、オブザーバーとは何だ? 観測する者、という意味は分かる。だが、一体何を観測するというんだ?


「何してんだ、テメェ!」


 声が響いた。荒上の声だ。気が付くと他の二人もいる。皆、アバター化した姿だった。


「なんだよ、これ」

「こ、こんなのって……」


 露草と真瀬が、メインルームの惨状を見て呟いた。そしてヴィティスがそれに対して舌打ちをする。


「クソ共が。わらわら湧いてきやがって。ゴキブリかよ、テメェら。こんな辛気臭ぇところに住んでいやがるし。一匹殺しても何匹でも湧いてきそうだな、ええ? どいつもこいつも鬱陶しい」


 ヴィティスが前へと歩いた。その背後から何かがやってくる。円筒の身体に八足の足を生やした、150センチ程度の機械。

 そう、それは、小型の自動防衛機械(オートマター)だった。人間の脳を使った、あの……


「まあいいか。一匹残っていりゃ、あいつの居場所聞き出すには十分だな。他は死んでもいい。なあ、そうだろ?」


 そして、ヴィティスが地面を蹴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いいな、と思ったら「小説家になろう 勝手にランキング 」のクリックお願いします
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ