19 脱衣場、鳴り響くサイレン
何時までこうしてればいいのか。
世良は今、風水蓮華や芳坂優佳達と外へ出ている。バベルの情報を集めているのだろう。しかし、これ以上はもう……
シャワー室の中は湯気が充満している。俺はシャワーで汗を流しながら、焦りを覚えていた。
どうにかしなくちゃいけないと思う。だが、どうにも身動きできない。できることと言えば、レベル上げくらいしかなかった。
「おい、真瀬。石鹸取ってくれ」
「あ、うん。あれ……?」
「ごめん、マっちゃん。石鹸今俺が使ってるー」
「露草、テメェいい加減にしろよ。勝手に人の盗ってんじゃねぇっつうの」
「あはは、ごめんごめん。ほら、マっちゃん。返すよー」
薄いわずかな敷居を隔てて、三人の声が聞こえてくる。
それを聞いて、俺の中にまた焦りが募っていく。苛立ちと置き換えてもいい。
ここで、こんなことをしている場合じゃない。俺は動かなくちゃならないんだ。でも、どうすればいい? 世良がバベルの本拠地を吐くとは思えないし、俺の身の回りに手がかりがあるわけでもない。
俺は、こんな状況で足踏みしていて……
俺はシャワーを止めて、身体をタオルで拭く。水気を取って脱衣所へ向かった。
香凜に逢いたい。
香凜に、俺を という存在を肯定してほしい。
この欲求は、何だろう。ナロやナエに言われたことを、気にしてるんだろうか。だから俺は、香凜に俺の存在を認めて欲しいのか?
着替えが終わって、タオルをビニール製の袋の中に入れた。気が付くと、他の三人も脱衣所に来ている。殆ど服を着替え終わっていた。
「なー、兄ちゃん。風呂上がりだしコーヒー牛乳飲みに行こうぜ」
「ああ、わかった」
露草はいつも、俺を風呂上がりの一杯に誘ってくる。こいつはコーヒー牛乳が好きらしい。俺も別に、嫌いじゃない。
秘密のアジトだというのに、ここには食品が豊富にある。定期的に食料を仕入れているようだ。
その時、不意に。
脱衣所の中に、サイレンがけたましく鳴り響いた。
「なんだ、この音」
荒上が顔をしかめて天井を見上げる。不快な音だ。しかもどうやら、ここだけじゃなくてこの施設全体で響いているらしい。
「け、警報装置の音だよ。世良さんが前に、説明してた……」
自信なさげに、真瀬が言う。こいつはいつもそうだ。常に自信がなさそうに喋る。
「初めて聞いた。てーかさー、絶対誤作動でしょ。後でおっちゃんに文句言わなきゃね」
露草がそう言った、直後。
どん、と低い音が響き、そして地面が数度、強く揺れた。
今のは何だ。地震じゃない。そう、まるで誰かが何かを破壊した時のような……
俺はその場から走り出した。音のした方へと向かう。
「待って! 俺も行くよ!」
露草の声が後ろから聞こえてきたが、俺は足を緩めずそのまま走った。




