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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第86話 収束 (3)

…ここはどこだろう?

一面に色鮮やかな花が咲いている。

綺麗だなあ。

ふと見ると、花びらが舞う中にエンキ、フェイ、アイミーの三人が立っていた。


「皆!」


三人のもとに向かって走っているのに、何故か全く距離が縮まらなかった。

だが、それでも三人はずっと笑顔を浮かべていた。


「タツマ、お前はまだこっちに来るな」

「何で!僕も皆と一緒に…」

「今のお前では美しくない。もっと身なりを整えてから来い」

「タツマはもっと色んな人と恋しなよー!」


タツマの目から涙が溢れる。

何でそんなこと言うの。

まるでもうお別れするみたいじゃないか。


「僕は皆がいたから頑張れたんだよ。一人ぼっちになったら、僕は…」

「甘えんな!」


エンキは強い口調で言い放つ。


「まあ、俺達が言えた言葉じゃないけどな。でも、これだけは言っとく。お前はもっと自分の人生を生きろ!誰かのためじゃなくて、自分のやりたいこと、見たいこと、全部やってこい!」

「土産話、待っているぞ」

「タツマ、またねー!」



ゆっくりと目を開けたとき、何故か一筋の涙が頬を伝った。

あれ、なんで泣いてるんだろう。

何か夢を見ていたような…どんな夢だっけ。

起き上がろうとすると、全身に痛みが走った。腹部には包帯が丁寧に巻かれていた。

ここは牢屋の一室か。

何があったんだっけ。

まだ頭がぼーっとする。


「まだ安静にしておけよ。あんた、相当身体に無茶させてたからな」

「君は…ゼイン…だったか」


そうだ。

少しずつ思い出してきた。

僕は彼らと戦って…負けたのか。

脳裏に三人の姿が浮かぶ。


「エンキは!?フェイとアイミーも!」


ゼインはタツマから視線を逸らす。

何も答えなくても、その意味は分かった。


「…どうして僕を殺してくれなかったんだ?」

「さあな。運が良かったんじゃないか」

「僕を殺してくれないか」

「はあ?何言ってんだ、お前」

「僕はもう生きている意味がない。早く皆の所に行きたいんだ」

「それが、お前がしたいことなのか?」


その言葉に三人の笑顔が、ふと頭に浮かぶ。

…そうだった。思い出した。

皆にやりたいことやってこいって言われたんだった。

タツマは涙を拭い、顔を上げる。


「いや、ごめん。忘れてくれ。三人にたくさん土産話をしなくちゃいけないんだった」


タツマは吹っ切れたような顔をする。

一度に仲間を三人も失ったんだ。

もっと落ち込むかと思ったが、もう乗り越えたのか。

精神的に弱そうに見えたが、そうでもないようだ。


「…そうか。ところで、俺がここに来たのはお前に頼みがあって来たんだ」

「頼み?僕に?」


ゼインは顔の前で両手を合わせる。


「お前の細胞を少しくれないか!」

「え?」

「あんな風に力を出せるなんて普通じゃない!あんたの身体がどうなってるか調べてみたいんだ!」

「べ、別にいいけど」

「本当か!」


タツマの皮膚組織と血液を採取するために、ゼインは黙々と準備を進める。

ついこの前まで殺し合いをしていたんだ。うらごとでも言われるかと思ったのに、彼はもう気にしてないのか。


「君、変わってるね」

「そうか?」

「うん。もし君との出会い方が違ったら、友達になれたのかな」

「さあな。それは、これからの俺達次第だろ」


タツマはフッと笑う。


「そうだね。君はこれからどうするの?」

「俺はこのあとディンゴに行くんだ」

「もしかしてノール家に行くの?」

「え、なんで知ってるんだ?」

「シーケム・ノール氏は珍しい物を集める貴族として有名だからね。毛皮とか獣の剥製はくせいとか。ディンゴに行くなら、そこかなと思って」

「獣か…」


魔物の中でも獣を集めているのか。

まだ見たことのない奴とかもあるかもしれない。

気前が良い人なら素材を分けてくれたりして…。

目をキラキラと輝かせるゼイン。

採取を終えると、ゼインは大切に小瓶に保管した。


「起き抜けに悪かったな」

「ううん、いいよ。じゃあ、またどこかで」

「ああ、またどこかでな」


タツマはゼインを見送った後、ベッドに横になり、目を瞑る。

エンキ、フェイ、アイミー。

僕、頑張るよ。

楽しみに待ってて。

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