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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第83話 暴走 (3)

…バチッ。

ゼインはゆっくり顔を上げる。

ほとばしる高電圧の影響でゼインの髪は逆立っていた。

凄い感覚だ。力がみなぎる。それに、身体が軽い。

トンっと軽くタツマの背中を押す。

四方から雷撃がタツマの身体を刺すように突き抜ける。

ようやく間に合ったか。

リクは安堵した表情を浮かべる。

突き抜けた場所は焦げたように皮膚が黒く染まっている。

あれはもはや雷とは一線を画している。

高火力の爆発を食らったに近いだろうな。

雷撃を食らい、うなりながらよろめくタツマが視界に入る。

エンキは血を吐いた後、力尽きたように倒れた。

…タツ…マ…。

ゼインはリクの近くに並び立つ。


「悪い、待たせた」

「ホントだよ。俺、だいぶ頑張ったから休んでいい?」

「ああ、後は俺が引き受ける」


地面を蹴ると、瞬時にタツマの眼前に迫る。

しかし、タツマは自らの周囲を覆うように竜巻を発生させる。

自衛のための竜巻か。

雷撃を放つが乱気流に呑まれてしまう。

やっぱりダメか。

高密度の風に飛び込めば、今の俺でもタダでは済まない。()()ならな。

ゼインは壁を地面のように走り抜け、跳び上がる。


「周囲を覆ってるってことは、真上は無風ってのがお決まりなんだよ!」


ゼインの動きを読んでいたタツマは、待ち構えたように両手から竜巻を起こす。

ちっ、急に頭使ってくるじゃねえか。

力を奪われたことで暴走が多少収まって、知性が働き始めたのか。

ゼインは雷魔剣の刀身で竜巻をどうにか受け流すが、その勢いで吹っ飛ばされる。

でもな…。


「付け焼き刃の知性に負けるわけねえんだよ!」


ゼインは雷魔剣に雷を蓄え、天井の壁に突き刺す。

すると、竜巻を受けて壁に入っていたヒビが、雷撃を食らい亀裂へと変わる。

崩落した瓦礫がタツマのもとに落下するが、タツマは瓦礫を吹き飛ばすために竜巻を起こす。

風が止むと、ゼインは再びタツマに向かって突っ込む。

そんな威力の竜巻は連発では出せないだろ。

速さじゃ俺のが上だ。

稲妻を纏わせた手刀でタツマの腹を突く。


「これで終わりだ」

「カハッ…!」


タツマが倒れたと同時に風が止む。

嵐のような轟音から一変し、静寂が辺りを包み込む。それは確かに戦いの終結を表していた。

ゼインはふーっと長く息を吐いた。

リクがゼインのもとに歩み寄る。


「お疲れ様」

「ああ」

「ゼインー!」


ログとシリルに抱きつかれた勢いで地面に倒れる。


「うわっ!重い重い!」

「ゼイン!良かったよー!」

「怖かったニャー!」


そのとき、シリルの腹の虫が大きく声を上げる。


「安心したらお腹空いたニャ」

「…こんなときに」


呑気なシリルの言動に場が和やかになったのも束の間、通路の奥から足音がゆっくりと近づいてくる。

再びその場に緊張感が走る。

ズックが手下を呼んだのか?


「あーあ。何これ、どういう状況?面倒事は勘弁して欲しいんだけど」


男が気怠そうにくせっ毛の頭を掻きながら歩いてきた。

見たことのない制服のような服を着ている。青を基調としていて、飾りが随所に付けられていた。

やはりズックの手先か?

ゼインが構える姿を見て、男は手で制する。


「あー、ちょっと待て。こちらに戦意はないよ。あんたらが素直にしていたらね」

「お前、何者だ!」


ゼインの問いかけに、リクが代わりに答える。


「その制服、天聖騎士団だよね」

「へえ、俺らのこと知ってんのか」

「そりゃああんたらは有名だからね」


リクはどうやらこの男のこと、いや組織について知っているようだ。

そして、その様子からして敵ではなさそうだ。


「敵じゃないのか?」

「ああ。天聖騎士団ってのは世界平和を謳った機関だ。国内のいさかいはそれぞれ国の騎士団が対処する。だが、国を跨ぐような事案の捜査や解決は彼らがあたっている。第三者機関が対処しないと、解決まで時間がかかるからね」


ゲルダ収容所の件はそれだけ大事おおごとってことか。

貴族やら囚人やらを集めて悪巧わるだくみをしていたんだ。当然といえば当然か。むしろ今までバレていなかったことの方が不思議なくらいだ。


「説明ありがとな。そういうことで俺はヴォルドだ。よろしくな。君達からは聴取のために少し話を聞きたい。こいつだけだと、話が偏りそうだからさ」

「放せっ!私を誰だと思っている!」


ヴォルドが親指で示した背後からわめき声が聞こえてくる。

ヴォルドの部下が暴れないように抑えている男。その顔には見覚えがあった。

ついさっきまでここにいたズックだ。さらに、手錠まで掛けられていた。

逃げようとしたところを捕まったのか。

頬が赤く腫れている。余程抵抗したらしい。


「おっさん!静かにしないと、分かってるよな?」


笑顔で告げるヴォルド。だが、その瞳は笑っていなかった。

視線を逸らし、素直に口を閉じたズック。

さっきまで場を支配していたズックが、一転して弱者の立場になっているのは滑稽としか言えなかった。


「じゃあ、早速で悪いけど話を聞かせてもらおうか」

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