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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第80話 合流

タツマとズックは来客用の通路を進むと、エンキが血を流して倒れていた。


「エンキ!」


タツマはエンキを慌てて抱き起こすが、彼の意識は戻らなかった。でも、かろうじて息はある。

一体、誰が…!

いや、今はそれよりエンキを医務室に運ばないと!


「おい!タツマ、何をしている!」

「ズック様…!出血がかなり激しく、このままではエンキの命が危険です。医務室に彼を…!」

「馬鹿者!そんな死にかけ、どうでもいいわ!」

「え…」

「早く脱獄者を追うぞ!」

「し、しかし…!」

「この私に逆らうのか!」

「い、いえ、そういうつもりでは…」

「お前達をここまで育てたのは誰だと思っている!このまま囚人共を脱獄させれば、私は身の破滅なんだぞ!分かっているのか!」


どうしたら…。

ズック様の指示に従わないと。

でも、このままエンキを放っておくわけには…。


「タツマ!早くしろ!」

「は、はい…!」


タツマはエンキを静かに横にする。

エンキ、待ってて。

すぐ終わらせて、戻ってくるから。

後ろ髪を引かれる思いで、タツマはその場をあとにした。



「ゼインニャ!」


振り返ると、ゼインがこちらに走って来ていた。

ゼイン、良かった…!

ログは安心してホッと息をついた。

ゼインはシリルの姿を見て驚く。


「シリル!どうして!」

「リクに連れて来てもらったニャ!」

「リク?」


黒髪の男が挨拶するように手を挙げる。


「俺のことね」

「あんた、何者?」

「シリルから君達の脱獄を手伝って欲しいって言われてね」

「シリルが頼んだニャ!」

「…そうか」


シリルは警戒している様子もないし、ひとまず大丈夫か。

ゼインはリクを一瞥した後、シリルの傍にある俺の鞄と雷魔剣を見つける。


「俺の鞄!」

「ちゃんとシリルが見つけておいたニャ!」


ゼインはシリルを撫で回す。


「偉いぞ、シリル!」


ゼインは鞄の中から小瓶を取り出す。

ベオロクから作り出した薬はもう残り少ない。

使い切ったら、これを作り出すのはもう難しい。

それがどうした。

ここで使わなかったら一生後悔する。

小瓶の中から数滴垂らすと、傷口がみるみる塞がっていく。


「よし、おっさんの呼吸も整ってきた。あとは安静にしてれば大丈夫だ」

「よかった…」


ゼインの医療処置を遠目に見ながら、エフィは静かにリクに声を掛ける。


「リク、と言ったか。お前、本気で戦ってなかったな?」

「それはお互い様なんじゃないの?あんたも本気じゃなかったでしょ?」

「フッ、失言だったか。だが、もう少し手の内を晒しても損はないんじゃないか」

「敵を騙すならまず味方からってね」


話す気はないか。

食えない男だな。


「少なくとも()()味方同士だから、それで手を打ってくれないか」

「ふん。とりあえず、()()そういうことにしておこう」


スタングの容態が落ち着いたので、ゼインは周囲を見渡す。


「エフィが幹部を倒したのか?」

「いや、リクにも手伝ってもらってな」

「二人とも死んでるのか?」


エフィはこくりと頷いた。


「でも、殺さなくてもよかったんじゃない?」


ログは独り言のように呟いた。


「殺せるときに殺しておかないと、いつか痛い目を見るよ」


リクが諭すように答えた。


「それはそうかもしれないけど…」


この人の言っていることは分かる。

でもアイミー達だって、上から言われて仕事をしていただけなのに。

本心でこの仕事をしてたわけじゃないはずだ。

そのとき、通路の奥から迫る足音が聞こえてくる。

小太りの男が耳障りなダミ声で叫ぶ。


「お前達が脱獄犯か!よくもこんな騒ぎを起こしてくれたな!」

「アイミー!フェイ!」


傍にいるのは闘技場にいた幹部。

…カノーゴはやられたのか。


「エンキをあんな目に遭わせたのも君達か。殺される覚悟はできてるよね」


殺気の籠もった目でゼイン達を睨みつけるタツマ。


「エフィ、あんたはログとスタングを頼む」

「分かった」

「リク、あんたはまだ戦えるのか?」

「まあ、一応ね」

「じゃあ、援護を頼む」

「りょーかい」


やっぱりこいつは手に馴染むな。

久しぶりに手にした雷魔剣を持ち、嬉しそうに笑みを浮かべるゼイン。


「本気でいくよ」


タツマは竜巻を複数出現させる。

さすがにこれをどうにかできそうにないな。

ゼインとリクは竜巻を避けながら、タツマのもとに向かう。

しかし、避けたはずの竜巻が追いかけてくるように迫ってきた。

竜巻の動きも操れるのか。

リクは迷いなく走り込む。


「竜巻自体は凄いけど、あんたは強いの?」

「さあ、戦いが終わったら分かるんじゃない?」

「それもそうだな」


タツマは突風を放つ。

リクは難なく避けるが、追撃の竜巻が迫る。


「ちっ」


リクはタツマから距離を取る。

竜巻に隠れ、傍まで迫っていたゼインが斬り込む。

しまった!黒髪に気を取らすぎた…!

タツマの肩に剣先が僅かに触れる。

浅いか。


「タツマ!何をやっている!」

「も、申し訳ありません…!」


頭に血がのぼっている。冷静にならないと。

タツマはゆっくり息を吐く。

よし!

タツマは二人を視界に入れながら竜巻を操る。

しかし、どちらも足が速い。

それにどちらもお互いの動きを見ながら、こちらに攻め入ってくる。なかなか捉えきれない。

…!目の前に黒髪の男!

ナイフを振りかざしたリクの動きに合わせ、タツマは上半身を仰け反らせる。

だが、リクは即座に右足で蹴り上げる。


「グハッ」


なんだ、この威力は…!

ただの足が速くなるスキルじゃないのか。

地面に倒れるタツマを見て、ズックは胸ポケットから小箱を取り出す。

タツマ一人では、この二人には勝てそうにないな。

こうなったら…。

取り出した注射器をタツマの首に刺し、液体を注入する。


「まだ試作品だが仕方ない」

「ガハッ…アァッ…グッ…」


タツマはうめき声をあげる。

様子がおかしい。

あの男、一体タツマに何をしたんだ。


「グッガアァッ!!」

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