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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第二部  第二章 ヒロインたちの誤算 ~入学式・始業式終了のお知らせ~

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92/130

2  ★


 同刻、巨大闘技場。


 全学科の在校生が集まる始業式の場に、どこからともなく軍服姿の憲兵隊がやって来て生徒たちの群れに突っ込んでいく。


「きゃぁぁあ!」

「な……何? 何なの!?」

「いやっ、放して!」

「へっ?」

「ちょっと、どういうコトよ!?」


 編入生としてその場にいたリクたち神学科の列には、何人もの憲兵隊が押し寄せた。それと離れた周囲の列からも悲鳴が聞こえることから、他科にも憲兵隊たちが突入しているようだ。


 彼ら憲兵隊は、明確な目標を持って決められた女生徒たちを拘束していく。


「な……何? 憲兵隊!?」

「ここは学園の中だぞ!?」

「誰か捕まってないか……?」

「ねぇ、あの子って……」

「えっ。あの子も?」

「うわっ、こっちもか!?」


 驚く生徒たちの声は、次第に騒ぐ女生徒たちとその他のひそめきあう声とに分かれていった。






 始業式会場で多くの生徒たちが逮捕されていくさまは、紅華館入学式会場でも共有された。


「お、おい。あれって……!」

「信じられない。この学園で起こっていることなの……?」

「何が起こってるの……?」

「どうして憲兵隊が……?」


 インクイジターが映る映像の隣に、その様子は映し出された。多くの上級生たちが映るその場所は、始業式が行われている大闘技場にほかならない。


 新入生たちが困惑し始めるさなか、錬金科のゼイルストラ教授が教師陣の列で席を立つ。


「あれは一体、どういうことだ!? 学園内に憲兵隊が入り込んでいるなど!」

「……落ち着いて下さい、ミスター・ゼイルストラ」


 顔色一つ変えずに言ったのは、オージェハイド学園長だった。


「先生方には事前に周知していた通りです。この件については、我が国アシュトーリア王家も()()()()の国や実家も了承の上です。座りなさい」


「な、に……? まさか、法規的措置というのは」


 ゼイルストラ教授は唖然として再度振り返り、投影幕の映像を見た。


「その通り。この学園に入り込んでいる、国家級犯罪者の検挙のためです」

(――国家級犯罪者!? 生徒が……!?)


 他の新入生担当教師たちも訝しむゼイルストラ教授と同じ気持ちだったが、黙って見守るしかなかった。


 オージェハイド学園長は入学式の進行役から拡声魔導具を受け取ると、生徒たちの前へ移動して落ち着き払った声で口を開く。


「始業式会場、聞こえていますか? 大闘技場は応答して下さい」

『……は、はい。学園長先生。魔導通信の映像と音声に問題はありません』


 始業式会場の映像と入学式会場にいる学園長の音声、そしてどこかの室内にいるインクイジターの映像は魔導通信で共有されていた。


 始業式サイドで教員の誰かが反応すると、オージェハイド学園長は本題に入った。


「結構です。……では今から名前を呼ぶ生徒は、第二運動場へ移動しなさい。憲兵隊の方に逆らわないように。まず在校生から――」


 学園長は懐から自分の祝辞原稿よりも長い紙を取り出し、そこに書かれている生徒の名前を読み上げ始めた。


 学園長が読み上げた生徒の名前は入学式と始業式の両会場以外にも、魔導通信による校内放送で学園中に響き渡った。




 貴族科 リリア・スイートベリー

     フェリシア・ラティーナ

     エレナ・ソーン

     レティシア・ダリ

     セイラ・アルメリア

     ティアラ・アリーチェ

     ミーナ・トゥーデン

     エルミア・シュガーナイト


 騎士科 デイジー・ヴィラール

     フローラ・エイデル

     マナ・ベルターリ


 錬金科 ライラ・シクスー

     ノノア・バティーユ

     タリア・ブリュネル

     ユナ・シェロン

     ルーナ・ナハトー


 薬学科 サラサ・コルベール

     エシュ・ハ

     オーロラ・リンドベル


 神学科 アイリス・ルカミエ

     タラネー・ロジェ

     マリリア・エルランジェ

     レリーネ・ピオッシュ

     ユピィ・スカイフィリア

     シンディ・アップルビー

     ターニャ・レンリー

     イリア・シフォン

     レイラ・マクガイア

     アスティ・ルブラン

     コレット・エイミス

     ティナ・スノーラチア

     アプリア・ルース

     ユリア・ライヒム

     レイチェル・ノッド

     マユラ・メーヴィス

     モナ・スロース

     アメリア・ルベール

     シャーリー・ナイゼル

     アンジェリカ・ハート




 読み上げられた名前は、何十名にも及んだ。

 貴族科八名、騎士科三名、錬金科五名、薬学科三名、神学科は――。

 在校生の集まる大闘技場では、名前を呼ばれた女子生徒が瞬く間に確保されていった。


「……神学科、多くないか?」

「い、一体何が……っ」


 周囲が次々と逮捕されていくのを目の当たりにしながら、リクとイングリッドは驚愕に包まれていた。告げられた名前は、明らかに神学科が多いように思われる。


 それとは対称的に、全く名前を呼ばれていない学科もあった。

 魔法魔術科だ。

 黒いフード付きマントの魔術師制服たちの列。

 ミラフェイナは周囲をきょろきょろ見回していたが、憲兵隊たちは素通りだった。


「あら? 魔法魔術科は呼ばれないようですわね」

「そ、そうみたいね」


 焦ったような表情でミラフェイナに答えたのは、今朝の騒ぎで教師に通報してアミたちを助けた女子生徒だ。小柄で黒髪の大人しい雰囲気の彼女は、アミたちと同じクラスの生徒だった。


「あ、あの人……!」


 二人の横で、アミが戦慄していた。闘技場の魔導投影装置が映し出す空中のヴィジョンに、あのインクイジター・ラビが映っていた。


 彼の顔を見たアミは、何が起こっているのか直感的に理解して愕然とした。

 そう、また『ヒロイン裁判』が行われようとしている。






 大闘技場での逮捕劇が佳境を迎える頃、紅華館・入学式会場では最後の逮捕者が名前を呼ばれることとなる。


「……最後にもう一名」


 学園長がちらりと催事場の出入口を見ると、大闘技場に現れたのと同じ憲兵隊の一小隊が進入していた。


「新入生、貴族科。アリシア・オーウェン」

「え……っ!?」


 名前を呼ばれた新入生は、吃驚に声をもらす間もなく憲兵隊に取り押さえられた。


「うそ……っ。な、何で……!?」

「……!」


 悲鳴を聞いて驚いたアシュタル総生徒会長が振り向くと、アリシアは貴族科の列にいた生徒だった。


(えっ……!? 新入生まで!?)


 壇上から見ていたエクリュアも、驚いて身を乗り出す。ヒロインとはいえ、まだ新入生だ。


 アリシアの前に読み上げられた名前は、全て別会場にいる在校生たちだった。新入生で呼ばれたのは、アリシアのみ。


 入学してすぐ逮捕とは、どういうことか。誰もが驚くばかりだ。

 その時、投影幕に映る男――インクイジターが次の言葉を発した。



『神聖星教会は、東大陸各国に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を送った。特に婚約者以外に懸想している王族男性がいれば注意するよう通達したのだ。……言っている意味が分かるな?』



 紅華館で逮捕されたアリシアを始め、大闘技場で憲兵に取り押さえられていた女生徒たちも見る見る血の気を失っていく。


 リストを送られた国々はそれぞれ王族の安否確認という名の『魅了チェック』を行い、()()()()()反応があった者は交友関係を調べられているということだ。


 この時点でリクたちとエクリュアたち各会場にいる『フリーダム』メンバーは理解した。おそらく、学園にいる他の転生者たちもだろう。


 逮捕者たちは紛れもなく『ヒロイン』であり、この世界では大罪とされている王族への精神干渉系魔法の使用に手を染めたのだと。


(あのアリシアって子は、シナリオが始まるまで待てなかったのね。何らかの機会を得て攻略対象の王子あたりに『魅了』を使ったんだわ……!)


 壇上からアリシアが連れて行かれる様子を見ながら、エクリュアは思った。


「呼ばれた生徒の移動が済み次第、残った生徒たちは解散するように」


 最後に指示をした学園長とエクリュアの目が、ばちっと合う。


「あー……。新入生代表挨拶は、続けてよろしい」

(できるか――――!!)


 エクリュアはスピーチ原稿の紙を握り締めながら、無言の抗議をした。











大量逮捕、勃発です。

魅了ダメ、絶対。

相手の意志や尊厳を無視してますからね……。


逮捕された四十人は、真面目に名前考えました。


↓前回貼るの忘れた


転生/転移者・攻略対象等まとめ

【不明】

・???:アミ リクと一緒に召喚された地球人。 ※作品名も役柄も不明



キャラ増えてきたので、newがなくても毎回登場した分は貼った方がいいですかね?










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